30話 ザイコ
翌朝、冒険者ギルドへ行くと、エフィルが早速Cランクの証であるブロンズ登録証を渡してきた。
「これがルーナさんのブロンズ登録証です」
これでルーナは正真正銘Cランクに昇格だ。
「では、センテラの森の調査内容と報酬がこちらです」
エフィルは掲示板に貼る予定だった依頼書を渡した。
【センテラの森の異変調査依頼】
場所:センテラの森深層部近辺
報酬:移動行程を含む七日間で一人7000レオネ
七日以内で異変を発見した場合も同額
異変を発見できなかった場合は半額
異変排除に成功した場合の報酬は別途支給
(報酬額は異変の内容により変動)
条件:Cランク以上を含む5人以上のパーティー
「Cランクのルーナと、Dランクのザンバ、グラシア、ドーリ、そしてヴィオレッタの5人で間違いないですね」
「ああ、そうだ」
呼ばれていない俺が、代表で返事をするのも変だったな。
所詮、立場上はルーナの召喚魔だからな。
「ですがヴィオさんが見えないようですが?」
……ですね。
「まだ寝てるのです」
ルーナと一緒にヴィオの店の寄ったのだが、爆睡中だった。
当然起こしたのだが、ギルドに行くのが面倒だと二度寝しやがった。
爆乳が爆睡……いや、言ってみただけだ。
「大丈夫なのだろうな。 来てないのは、あのヴィオなのだろう?」
奥からギルド長のジェイクのお出ましだ。
なんだその、“話はすべて聞いていたぞ”的な登場のしかたは。
「問題ない。無理やりでも連れて行くさ」
連れて行かなければ、楽ちん調査計画が水の泡だからな。
まあ、さすがのヴィオでも昨日の今日でドタキャンはないだろう。
「本来なら俺も行くべきなのだが、最近ズッカ周辺の魔物が活発化気味で、いろいろ忙しくてな。」
こちらもついて来られたら困るんだよ。
「お前たちの実力は買っている。よろしく頼むぞ!」
「ああ、俺たちに任せとけ! クロムもいるし大丈夫だ」
なぜ、ザンバが張り切って答えるているのだ。
お前が一番“いらない子”なんだがな……
こうして依頼を正式に受けた俺たちは、ギルドを後にしてヴィオの店に向かうことにした。
そのヴィオの店に向かう道すがら、俺はふと思い立った。
「俺はちょっと寄るところがある。ザンバたちは先にヴィオの所に行ってくれ」
「ん? なんだか知らないが了解だ」
相変わらずザンバは適当だな。
俺が寄りたいのはワルフラン武装店だ。
単に“あれ”があればルーナとヴィオが楽だろうと思ったからだが、はたしてあるだろうか。
ザンバたちと別れ、ルーナとワルフラン武装店を訪れる。
「おい、ワルフラン。いないのか?」
俺の呼び声に、ようやくワルフランが奥から出てきた。
どうやら食事中だったようで、口をモグモグさせている。
「すまんすまん! おっ、クロムとルーナか。今日は早いな」
「ああ、野暮用でな。センテラの森まで行く」
「なに! もしかして野営もするのか? 昨日の野営セットが早速役立つ時が来たな」
残念だが昨日買ったテントは必要ないな。
いや、せっかくの最新式だ、ザンバたちに貸してやるか。
「そうだな。 ……ところで、ゴーグルはないか?」
「ゴーグルだと? 何だ、今度はドラゴンにでも乗る気か!」
やはりそう言うよな。
ゴーグルを使うのはドラゴン乗りか、せいぜい鳥馬を乗るときくらいだ。
しかしルーナを乗せるときにゴーグルがあれば、今よりスピードが出せるだろう。
だがズッカじゃ鳥馬すら見たことないから、さすがに無理か。
「まあ……在庫はあるがな」
そう言うとワルフランは、奥から小さな箱を出してきた。
……あるのかよ。
こいつは自分の趣味で仕入れてるだけなんじゃないのか?
「仕入れたのはいいが、考えたらズッカには鳥馬なんて持ってる奴はいねえんだよ」
完全に無計画だな。
こちらとしてはありがたいが、商売として大丈夫なのか?
「五つあるが、一つでいいのか?」
何で五つもあるんだよ。
まさかセットだと安かったとか言うなよ。
「いや、二つ貰おう」
「そうか、さすがに全部は無理だよな。まとめ買いだと安かったんで、5つ買ったんだがなぁ」
「……いくらだ」
もう何も言うまい、ワルフランとはこういう奴だ。
こういうやつだからこそ何でもある店なのだ。
「このゴーグルは風よけの魔法が付加されててな、二つで200レオネだ。」
相変わらず高いのか安いのか分からんが、言い値の金貨二枚を支払う。
考えてみたら、毎日ここに金を落としてるな。
もしかしたら俺は、いいカモなのか? ……猫だけど。
しかしこれで、鳥馬並みのスピードを出せるぞ。
いやまて、風よけの魔法って事は、ヴィオの魔法でも可能だったのか?
まあ見た目は大事だしな!
「では、しばらく来れんかもしれないが、また来る」
一抹の散財感を拭い去り、ワルフランの店を後にする。
あとはみんなの待つヴィオの店に向かうだけだ。
「ねぇクロム。パーティー組んだりして、だんだん冒険者っぽくなってきたですね」
いや、今までも充分に冒険者してますけど……
タイトルは、ヒッチコック監督の「サイコ」より拝借




