28話 森にまつわるエトセトラ
「ヴィオは以前から冒険者登録してますよ。全く依頼をこなさないので、Dランクのままですけど」
エフィルいわく、登録しておきながら全く冒険者として活動していないらしい。
これがFランクならとっくに登録抹消だが、高位召喚魔持ちなのでDランクのままなのだ。
実際のところ、冒険者登録している魔道士は相当数いるらしいが、そのほとんどは魔道士ギルドにも所属しているため、ヴィオのように幽霊冒険者も多いそうだ。
「おいヴィオ、本当に一緒に行く気か?」
ザンバが、やや及び腰で聞いてくる。
お前は爆乳恐怖症か何かなのか? それとも、その逆か。
「なんだよ、文句あんのか? 少なくともお前よりは役に立つと思うぜ」
「うっ…ぐぬぬ……」
ぐうの音も出ないとはこの事だな。
ザンバたちの実力は分からないが、ヴィオより上、という事はないだろう。
少なくともヴィオは、俺が使えないような魔法も使えるはずだ。
「クロムとルーナが問題なければ、私たちが何か言う事はないわ」
何も言えなくなったザンバの代わりに、グラシアがそう言うと、こちらをうかがった。
「俺は大歓迎だ」
「ふぇ? わふぁしふぇ#$%&……」
ルーナよ、何を言っているか分からんから、食いながら話すのは止めろと言っているだろう。
そもそも話も聞いていないはずだから、こいつの意見はどうでもいい。
「だろ! じゃあ、オレも同行ってことで決まりだな!」
ザンバは何か言いたそうだったが、もはや観念したようだ。
「それにしても、今まで何もしなかったのに、よく行く気になりましたね。なぜですか?」
たしかにエフィルの言うとおりだ。
柘榴猿の魔石が欲しいわけでもあるまいし、何で参加しようとするんだ?
「ルーナとクロムが面白そうだからに決まってるだろ」
ああ……俺たちが原因ですか、そうですか。
「オレは、面白いか面白くないかでしか判断しないぞ!」
責任感の欠片もない発言を堂々と言うのは止めて欲しい。
素晴らしい論理だが、見習う気はないな。
「では、明日の朝一番でギルド長に報告しておきますので、なるべく早く着て下さいね」
「わかった。 ところでエフィル、センテラの森について少し説明してくれないか?」
ザンバたちもあまり詳しくないようだし、ここは少しでも予備知識を仕入れておきたい。
「はい。 センテラの森は別名“猿の森”と呼ばれるほどで、柘榴猿の他にも、森林緑猿、悪魔猿といった小型のものから、灰色大猿、大猩猩といった大型のものまで多数存在しています。もちろん、他の魔物も多数存在しますが、猿の魔物の種類では群を抜いて多いですね」
なるほど、猿の楽園的な森という事か。
「場所も、ズッカから馬で半日以上かかりますので、辺境の森と言っていいでしょう。森の大きさもかなり広いです。正直なところ、五日で原因を掴めるかどうかも怪しいところですね」
俺ならそれほどでもなく着くだろうが、今回はザンバたちもいるし、どうしたものかな。
もしかしてヴィオが空間魔法でも使えるなら楽なのだが……
あとで聞いてみるか。
「実際に森のかなり浅い場所でも、本来見られない魔物が多数目撃されているようです。森の奥で何かあったのは間違いないと思うのですが……センテラの森を専門にしている冒険者はいませんし、ギルド職員の私が分かるのはこの程度です」
これならザンバたちでも知っている情報だったかな。
まあ、結局は森の中の事は、行ってみなくては分からないということだ。
「了解だ。あとは食事をしながら相談しよう」
ルーナは食い終わってるがな……
「おい、ヴィオ!」
「ん、何だ?」
フライドポテトをつまみに黒炎酒を飲んでいるヴィオに声を掛ける。
フライドポテトといったら麦酒だろう、邪道な奴だ。
「お前、空間魔法は使えるか?」
「まあな。……ってクロムお前、さては空間魔法でセンテラの森に行こうって魂胆か?」
図星だ。
「そりゃあ、無理ってもんだ。一度行って魔法陣で魔標門を作らなきゃねぇぜ」
ヴィオだけなら行ったことのある場所へは魔標門なしも可能だが、行ったこともないセンテラの森に、しかも大人数を転移させるにはどうしても魔標門が必要らしい。
しかし裏を返せば……
「では逆に、魔標門さえ作れば自由に行き来できるのか?」
「ん? まあそうだな」
なるほどな、それはそれで便利だ。
「では、一度俺がヴィオを乗せて行って魔標門を作れば、あとは簡単にズッカと森の中を行き来できるって事だよな」
「クロム、お前の考えてる事は分かるが、さすがに誰もいなくなるのは無理だぜ! 魔標門の結界だって限界があるしな」
俺の考えはこうだ。
最初にルーナとヴィオを乗せて森へ行き、魔標門を作ってザンバたち三人を転移させる。
そして夜になったら街へ転移して、朝になったらまた森へ転移する。
とっても楽な森の調査をしようと思っていたのだが、夜間に完全に無人にするのは無理なようだ。
「だがそれなりに魔法力が高い奴が残るっていうなら可能だぜ。このパーティーでいえば……ドーリだな」
なるほどドーリね……って…えっ、ドーリ?
「ドーリが魔法?」
「何言ってんだ、ドーリはドワーフだぞ。しかもドワーフの魔道士だ」
「なにっ、ドーリって戦士じゃないのか?」
確かにドワーフは魔法を使えるが、戦闘能力の高い種族だ。
バトルアックスまで持ってるから、てっきり戦士かと思っていた。
「結構優秀な魔道士だぞ。ドーリがいなけりゃあいつら何回か死んでるんじゃないか」
そ、そうなんだ。
「ドーリなら魔標門の結界保持は問題ないだろ。おまけでザンバも付けとけばいい」
ザンバは散々な言われようだな。
「まあ、あれはあれで結構使える奴だぜ。もう一皮むければ化けるんだろうけどな」
よく考えたら、ザンバたちの事を何も知らないな。
ザンバとグラシアの召喚魔がどんなものかも分からん。
ちょっと聞いてみるか。
タイトルはPUFFYの「渚にまつわるエトセトラ」より拝借




