27話 ヴィオハザード
「おっ! ヴィオじゃねえか。何でクロムたちと一緒なんだ?」
大鍋亭に着くと、ザンバたちがすでに一杯やっていた。
「うちの店に来ないお前には関係ないが、今日からオレの店の上客だ」
ザンバはヴィオの店には行かないらしい。
「ヴィオの魔道具は、無駄に癖があるくせにやたらと高いんだよ!」
「高いのはお前が貧乏人だからだろ。金がないくせに飲みすぎなんだよ。グラシアとドーリはちゃんと買いに来るぞ」
「えっ? そうなのか?」
ザンバは慌て顔でグラシアとドーリを見た。
この分だと知らなかったのだろう。
「当たり前です。ヴィオの魔素水は純度も高いし、普段使っている魔法薬もヴィオの物ですよ」
「……そうだな」
「うっ、えっ、あの……」
こいつ本当にリーダーなのか? これではただのお飾りじゃないか。
「ザンバお前、オレが苦手なだけだろ! ああ、これか。オレの胸がそんなに気になるのか?」
そう言いながら、ヴィオはフードをはだけて自分の爆乳を持ち上げてみせた。
うーむ……
どうもヴィオには恥じらいというものは存在しないようだ。
「なっ、何を言ってるんだ! そんなことあるわけないだろ!」
ザンバはしどろもどろだ。
どうやら図星だな。
「ヴィオ! いい加減にしてください」
グラシアが注意してきた。グラシアは生真面目そうだからな。
「おっと、ふざけ過ぎたな! だがザンバ、グラシアの胸も意外と大きいぞ」
「!”#$%&――」
「ヴィオ!!」
ザンバとグラシアは顔が真っ赤だ。
「オレやレネットほどじゃないけどな!」
おいヴィオ……、後ろを見た方がいいぞ。
「あたいが何だってぇ!」
ヴィオの後ろには、黒炎酒を片手に鬼の形相のレネットが立っている。
「おお、レネット。悪いな」
レネットの表情などまったく意に介さず、ヴィオは黒炎酒を受け取る。
「ヴィオ、お前は何でいつもそうなんだ? まったく……」
どうやら俺が気にすることでもないようだ。いつもの事らしい。
「ルーナとクロム、お前ら何飲む? レネット、こいつらは俺の奢りだからな」
「わたしは蜂蜜酒のオレンジ割りなのです!」
「俺は林檎酒を貰おうか」
「はいよ!」
レネットは注文を聞いて厨房に戻って行った。
よく考えたら何も注文していないのに、レネットは黒炎酒を持ってきた。
いつもヴィオは黒炎酒なんだろうな。
「あっ、ヴィオさんだ!」
「今日は皆さんと一緒なんですね」
エフィルとラエルもやって来た。
結局、昨夜のメンバーにヴィオを加えた格好で、今夜も飲み会が始まった。
「そうだ、忘れてたな。ザンバ、グラシア、ドーリ、昨日の手間賃だ」
ザンバ達に昨日のバイト代を払うのをすっかり忘れていた。
三人分、1500レオネをテーブルに出した。
「おいおい、あれで一人500レオネとか出し過ぎじゃねえか? いいのかよ」
「かまわん。貧乏人へサービスだ」
「ちっ! 言い方が何だが、ありがたくもらっておくぜ」
「すいません。貧乏なのは本当ですしね」
「……すまん」
あいかわらずドーリは口数が少ないな。
「ところでお前たち、センテラの森は詳しいか?」
「センテラの森か… 詳しいって程でもないが、何度か行ったことはあるな」
「あそこは色々魔物がいるんですが、遠いうえに森が深くて大変なんですよ」
「……そうだな」
早い話が、さほど詳しくはないという事だな。
それにしてもドーリはもう少し喋ったほうがいいんじゃないか?
「ふむ、どうしたものかな」
念のための保険でザンバたちを連れて行こうと思ったが、かえって足手まといになり兼ねんな。
「おいクロム! 何だよ、もしかして柘榴猿狩りか?」
「最近、森の奥にいるはずの柘榴猿がよく目撃されているらしいですよ」
「……そうだな」
やはり話題になっているのか。
これは早い方がいいかもしれないな。
しかし、ドーリは――(以下略)
「もしかして、センテラの森のお話ですか?」
ザンバ達との話に、エフィルが割って入ってきた。
「ここだけの話ですが、明日にでもセンテラの森の調査依頼が出ますよ」
森の調査だと?
柘榴猿と何か関係がある話しだろうか。
「先ほども話していたようですが、センテラの森では最近、柘榴猿をはじめとした森の奥深くに住む魔物たちが、なぜか中域で目撃されています」
目撃例は柘榴猿だけではないようだ。
と、なると……
「ギルドでは、森の最深域で何か異変があったのではないかと憶測しています」
そう思うのが普通だな。
「そこで今日の会議で、森の最深域への調査を依頼することに決定しました」
エフィルの話しでは、依頼内容は“センテラの森最深域での異変内容の調査及び可能ならその原因の排除”らしい。
森の中での調査は最長五日間、行程を含め実質七日、異変を発見しだい終了という条件だそうだ。
「つまり異変を排除できれば、仮に一日で終わろうが満額貰えるのだな?」
「そういうことです。もちろん原因の排除が行われた場合は、別料金で支払います」
「当然だな」
原因排除に別料金が支払われないなら、発見次第帰るだろうからな。
それに原因のよって料金も違うだろう。
「危険性も考慮して今回は、Cクラス以上を含む五人以上のパーティーという事になっています」
ん……Cクラス?
五人以上はともかく、ルーナもザンバたちもDクラスだ。
柘榴猿を狩りに行くだけよりいいと思ったが、Cクラスがいないと無理だな。
「あと、今日の会議でルーナのCクラス格上げが決定しましたよ」
はい条件クリア!
というより、この件に合わせてルーナを格上げしたよう気がするな。
でなければ逆に不自然だ。
「ギルド長は、半分はルーナたちにこの件を任せたいようですよ」
ほらな。
「そうか。なら行くことにしよう。あとはメンバーだが、ザンバたちはどうする? 行くか?」
「当たり前だ!」
「もちろんご一緒させてください」
「おう……」
しかしそれでも四人しかいないからな。
「あと一人……か」
「オレが行こうか?」
「えっ……?」
「一人足りないんだろ? ならオレが行ってやるよ」
そう言ったのは、黒炎酒を片手にボルシチを喰っているヴィオだった。
確かにヴィオは魔道士だし、製作した魔法具からみても相当の実力なはずだ。
ザンバたちには悪いが、彼らより頼りになりそうだ。
しかし……
「ヴィオ、お前は冒険者じゃないだろ」
ザンバの言うことはもっともだ。
「いや、オレは冒険者登録してるぞ!」
「「「「「えぇっ?」」」」」
俺とザンバたち、そして横で話を聞いていたラエルは、思わず驚きの声を上げた。
えっ、ルーナ?
ルーナなら話も聞かず、俺の隣でボルシチ食ってるよ。
タイトルは、映画「バイオハザード」より拝借




