19話 冒険者たち ザンバと二人の仲間
「アチョッ!」
「アチョッ!」
「“風の刃”!」
「アチョッ!」
「アチョッ!」
「“風の刃”!」
俺とルーナは今、蟻の腹部を切り取ってる。
ちなみに変な掛け声は、ルーナがククリナイフで蟻を切っている声だ。
「しかし面倒だな」
「アチョッ!」
「アチョッ!」
「……うるさいし」
謎の掛け声の必要性がイマイチ分からん。
しかし魔物を捌くのも躊躇しないとは、なかなかどうしてルーナさんの凶暴説もあながち間違いではないようだ。
その時、遠くから声が聞こえた。
「ルーナさーん! 猫さーん!」「おーい! ルーナ、クロム、どこだー!」
聞き覚えのある声だ。
ひとつはグラシア、もうひとつはバンダナ男だな。
「あれ? グラシアさんの声だよね。おーい! こっちなのです!」
茂みの中から馬を引き連れたグラシアとザンバ、あとドワーフの……名前なんだっけ? ああ、ドーリだ、が顔を出した。
「ああ、もう終わっちまったか」
「だから言ったのに馬を借りてまで来て、支払いどうするのよ」
「……」
「いや、手伝えることがあったらと思ってな。ってグラシアだって心配しててだろ」
「心配しててのはザンバじゃない! 私はルーナさんと猫さんの戦いぶりが見たかっただけです!」
「……」
いやドーリも何か言えよ。
どうやらザンバ達は、俺たちの助っ人をしようと馬を借りてまでここに来たようだ。
別に戦いの助っ人など必要もなかったが、丁度いいところに来た。馬の借り賃もあるだろうから手伝い(バイト)をさせよう!
「いいところに来たぞ。金は払うから蟻の腹部を切ってくれ」
「本当か! これでグラシアにぼやかれなくて済むな」
「いいわよ。手伝うわ」
「……」
だからドーリも何か言えよ。
グラシアは剣を、ザンバは大型のナイフを、ドーリは戦斧を抜き蟻を切断し始めた。
ルーナも負けじとククリナイフで蟻を切断しているが、俺は休ませて貰おう。
しばらくすると洞窟の前には、蟻の腹部の山が出来上がった。
100は大きく超えている。
これなら助っ人代を出しても問題ないな。
「すげえ量だな。で、これどうするんだ? マジックバッグにも入らんだろ」
ザンバよ、君のバッグとは違うのだよ、君のとは。
どこかで聞いたような台詞が脳内を過ったが、言葉にはしなかった。
言っても分からんだろうしな。
俺は結局ザンバには何も答えず、蟻の残骸を異空間に放り込んだ。
「「消えた?!」」「……?!」
だからドーリよ、驚いたら声ぐらい上げてくれ。
「俺が異空間に入れただけだ」
3人の羨望の眼差しが痛いな。
「さて、帰るとするか」
「おいクロム、待てよ! 巣を破壊しなきゃその分の金が貰えないぜ」
おっと、忘れてたな。
せっかくだから、さっき見たアレをやってみるか。
「お前ら、耳を塞いどけ。“獅子の咆哮”」
ヴォォォォォォォ――
吠える必要もなかったが、一応吠えてみた。
様式美は重要だからな。
洞窟のみを目標に局所的に絞った衝撃波は、一直線に進み洞窟を一気に破壊した。
「さあ、終わったぞ。ルーナ、帰るか」
「うん、そうだね」
「「「…………」」」
固まるなよ、置いていくぞ。
あとグラシアは口閉じた方がいいぞ、美人が台無しだ。
「なんだ、これ。高位召喚魔とかの話じゃねえぞ!」
じゃあ今度から、“超”高位召喚魔とでも呼んでもらおうか。
「こんなの見たことないわよ」
見たことないと言われても、俺はさっき見たばかりで、それをパクっただけだが。
「……凄い」
お、やっと喋ったか。
「もういいか、先に行くぞ」
呆けている奴らを待ってられん。
俺はルーナを乗せて、先に出発することにした。
「おいおい、置いていくなよ!」
ザンバたちはようやく我に返って馬に跨り、俺のあとを追いかけてくるが、残念だが待ってやるほど俺は優しくない。
「ルーナ、飛ばすぞ!」
……また寝てやがる。
俺は高速移動型ベビーカーじゃねえぞ!
タイトルは、冒険者たち ガンバと15ひきの仲間/斎藤惇夫 より拝借




