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吾輩は召喚魔(ねこ)である  作者: 画猫点睛
第一章 ズッカ編
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13話 君に麦酒(エール)を買ってあげる

「おいエフィル! こいつがスライム600匹を瞬殺とか冗談だよな」


 バンダナ男はエフィルに向かってそう言った。


 この状況でもシチューを食い続ける残念美少女で申し訳ないが、本当だ。

 正確には653匹で、倒したのは俺だがな。


「残念ながら冗談ではないわ、ザンバ」


 バンダナ男はザンバと言う名前らしく、エフィルやグラシアと同じくらいの年齢で割とイケメンだ。


「冗談じゃなけりゃ、ふざけてんのか? こんな小娘とチビ猫で何ができるってんだ!」


 ここでもチビ猫呼ばわりか。

 挙句にルーナを小娘とはな。……その通りじゃないか!


 いやしかし、そうは言っても反論するべきか。


「おい、貴様―「いいかげんにしなさい!」」



 あー、被ったわ、完全に被ったわ。

 せっかく念話じゃなく声に出して言ったのに、完全にグラシアと被ってしまった。


「あなたはいつもそうです。冒険者とは実力が全てでしょう。どうして見た目でばかり判断するのです?」


 うむ、正論だな。こいつは普段からそうなのだろう。


「リーダーなんですから、もっとしっかりして下さい!」


 ザンバがリーダーだったのか。

 どちらかといえばグラシアの方がリーダーに向いているようだがな。


 先ほどの不穏な空気はグラシアによって、あっという間に払拭され、ザンバは何も言い返せずにすごすごと自分の席に戻っていった。

 その姿を見ると、なんだかかわいそうに思えてきた。



「ところで、召喚魔ねこさんは話せるようですね」 


 なんだ聞こえてたのか。

 判断力や冷静さを考えると、グラシアの方がリーダーに向いてるんじゃないのか?



「ああ、とりあえずな」


「いろいろと凄いんですね」


「他と比較した事はないから、凄いかどうかは分からんな」


「とりあえず、今日は仲間と一緒なので、あとでゆっくりお話ししましょう。その時は……ちょっとモフモフしてもいいですか?」



 おっと、クーデレ系モフモフ好きキャラなのか?

 グラシアはモフりたい宣言をして自分のテーブルに戻っていった。



「しかし何だな。話せるというのはそんなに凄いのか?」


 俺がどちらともなく尋ねると、ラエルが嬉々として答え始めた。


「そうですね。念話ではなく普通に話せる召喚魔の多くは人型です。戦闘魔法に長けていて、さらに話せるとなれば竜型以外ではほとんどいないでしょう」


 どうやら魔道士ギルドでは、召喚魔についても学ぶようだ。


 獣型の召喚魔は戦闘能力に特化しているものが多いため、念話以外で会話ができるものは多くはないそうだ。

 つまり俺のように戦闘能力も高く、会話もできる獣型の召喚魔は珍しいということになる。



「あと、グラシアさんやレネットさんだけでなく、私にもモフモフさせてくださいね♪」


「ちょっとラエル、抜け駆けはダメよ! 私もお願いね」



 ラエルとエフィルにもモフモフ宣言されてしまった。



「クロム、人気者だね。鼻の下伸びてるよ!」


 いやいや、猫に鼻の下なんて無い……よな? いや一応あるのか。


 ルーナにここぞとばかり反撃されてしまったので、誤魔化すようにグラシア達の方を覗いてみた。

 テーブルに戻ったグラシアは、ザンバにリーダーのなんたるかを長々と語り始めたようだ。

 もはやザンバは、先ほどの威勢のよかった様子は微塵も感じられず小さくなっている。

 悲壮感の漂う姿は見るに堪えない。


 俺はレネットを念話で呼ぶと、金貨を一枚出した。


「これでグラシア達に麦酒エールでも出してくれ! あと、ここにも何か飲み物を」


「わかったわ、エフィルは麦酒エール、ラエルは蜂蜜酒ミードのオレンジ割り、ルーナもそれでいい?」


「ええ」「はい」

「よくわかんないですけど、それでいいです」


 この世界は15歳で成人なので、アルコールも15歳から大丈夫のようだ。

 しかし、ルーナは本当に大丈夫なのか?



 レネットが俺たちの席に酒を置き、グラシア達の席にも酒を持っていく。

 俺はそれを見計らい、グラシア達の元へ行った。


「これは俺、いやルーナからだ。飲んでくれ」


 グラシアは何か言いたそうだったが、俺が首を横に振ると、それを口に出すことはしなかった。


「すまねえ、喧嘩腰に絡んだ挙句に酒までおごってもらうとは…。俺はザンバ、よろしくな」

「俺はドーリ、ドワーフ族だ。よろしく」

 

 ドーリと名乗った男は、身長はルーナより若干背の高い程度だが屈強な体躯をしていて、ドワーフの特徴そのままの姿をしている。


「いつもこの三人でパーティーを組んでいるんです」



 グラシアがそう教えてくれたが、シュガルに行く道で見たときは五人のパーティーだったような気がしたので聞いてみた。


「ジュガルに行くときはもっと多くなかったか?」


「ああ、今日はたまたまギルドにいたカラコーゾフ兄弟と組んだんだ。いけ好かねぇ奴らだから、本当は組みたくなかったんだがな」


 スライムの数を心配して、ギルドにいた奴に声をかけて臨時のパーティーを組んだのだろう。


「あいつら無駄足踏んだからって俺にぐだぐだ文句言いやがって――」



 ザンバのやけ酒の理由は俺たちというより、そのなんちゃら兄弟の方が大きいようだ。

 確かに、気に入らない奴らと仕方なしに組んだ結果が無駄足に終わり、その挙句に文句まで言われればやけ酒になるのもしょうがないだろう。

 

 しかし愚痴が長くなりそうだ。この辺で御暇させてもらおうか。


 俺はまだブツブツ言っているザンバは放って、グラシアに念話であいさつをして自分たちの席に戻った。




 席に戻ると、頬を赤く染めたルーナが絡んできやがった。


「クロムはどこに行ってたのにゃ〜!」


 どこって隣のテーブルにいただろ。

 なんだ「にゃ〜」って、お前は猫か! 「にゃ〜」は俺の台詞だ、奪うなよ。


「ちょっといい気持ちなのれす」


「歩けるんだろうな。そろそろ部屋に戻ろうか」


 いくら蜂蜜酒ミードのオレンジ割りと言っても、これ以上飲んだら不味い事になりそうだ。


 

 残念美少女が、残念酔っ払い美少女になる前に部屋に戻ることにした。






「一緒に寝るですよ〜」


 部屋に戻ると、プチ酔っぱらいのルーナは俺を抱いてベッドに潜り込もうとする。


 召喚魔って普通は光球ルームに帰るんじゃないの?

 大量のスライムから魔素も吸ったし、魔素入りキャットフードも食ったから、別に光球ルームに戻らなくても困らないけど、普通は光球ルームに帰すんじゃないの?


「いや、帰還させろよ」


「一人で寝るのは嫌なのです〜」


 どうやらルーナはずっと妹と寝ていたらしい。昨日初めて一人で寝たらかなり寂しかったそうだ。

 もしかして俺はずっとルーナと寝るのか?




 しかし何だろうね。

 俺が望んだのはドジっ娘であって、ダメっ娘じゃなかったはずなんだがな……

タイトルは、グループ魂「君にジュースを買ってあげる」から拝借

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