決意
その声の主は上空にいた。
漆黒の翼をはためかせ、薄笑いを浮かべるその姿は、統べる者の風格を纏っている。
間違いない…………こいつは……
「初めまして諸君。私の名はバロン。この森の主にして、君達の最期を看取る者だ」
今まで戦ったやつとはなにもかもが違う。
勝てない、俺はこいつには勝てない。
本能が囁き、異常な寒気が全身を絶え間無く伝っている。
「ミニトロールを倒す人間がいるとはね。少々実力を見誤っていたようだ。
お詫びと言ってはなんだが、全力で諸君らを蹂躙させて頂こう。
弱者が強者に跪くは、世の理。
恨むのならば、脆弱な自身を恨め」
バロンは剣らしきものを発現させる。
くっ……やるしかないのか?
「かといってだ。
今の消耗しきった君達を潰したところでなんの妙味もない。
ただ不快。そう不快なのだ諸君の弱さが」
バロンは手にした剣を俺に向かって放る。
剣は目の前に深々と突き刺さった。
「情けではない、せめてそれをもって正装としたまえ。
鈍刀だが、その玩具よりはましだろう」
「君達の求めるフェリシュはこの先に群生している。
欲せんとするならば、私を討つより他はない。
弱き者が退くも道理だ。
敗北を無理に強いるつもりはない、よく考えたまえ」
そう言い終えるのと同時に、バロンは姿をくらました。
さっきまでの喧騒が嘘のように、辺りは静まりかえっている。
「どうする?マスター」
勝てる見込みなんてほとんどないだろう。
正直一刻も早くここから逃げ出して、全てを忘れて眠りにつきたい。
でもそうしたら、どんな顔してブロンコさんに俺達の気持ちを伝えればいい?
逃げたやつの言葉になんの重みがあるんだ?
それに…………
ただ純粋に、俺はあいつ《バロン》を倒したい。
強くなってやる。誰よりも。
「やろう。絶対にあいつに勝つんだ」
「トータさんならそう言うと思いました」
「エリスは怖くないの?もし嫌なら俺1人で……
「そんなの絶対ダメです!
もちろん怖いですよ。でもなんとなく、トータさんと一緒なら大丈夫そうな気がするんです」
「根拠はないけど?」
ふふっ、とエリスは笑う。
「2人とも良い顔してるわね。マスター、確かにバロンは強いわ。現状の私達の戦力では話にならない。でも、マスターはきっとあんなキザ野郎に勝つ。そう信じているわ」
「ありがとう。ナツさんも頼りにしてるからね」
「任せておいて。あ、そういえばさっきのミニトロール戦で2レベルアップしてるわ、振り分けはどうする?」
「もう決まってるよ」
俺はニヤリと笑った。




