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WORLD BREAKER  作者: 香月 悠生
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いざクエストへ

完全に寝不足だ。

歯を磨きながら目の下にできたクマを見て確信した。

床に就いてからも、あの場面がフラッシュバックしてなかなか寝付けなかったんだよー。ふふふー。

とは死んでもエリスには言えない。

もしクマをつっこまれたら、モンスターとのシミュレーションバトルをしていたら明け方になっていた、とでも言っておこう。

まだまともに戦闘したことがないとも、死んでも言えないが。


1階に降りると、エプロン姿のエリスがスクランブルエッグを皿に盛り付けているところだった。


「「あ」」


妙な間があいてしまった。


「「おはよう」ございます」


どちらともなく笑みがこぼれた。


「ちょっと待っててくださいね。もう出来ますから」


テーブルにつくと、2枚のお皿にベーコン、スクランブル、サラダ、ロールパンがバランスよく盛り付けられている。

2人分しか用意されてないということは、ブロンコさんはもう仕事に出掛けたのだろうか?

時計を見ると7時10分だった。


「ブロンコさんはもう出掛けたの?」


「はい、父は6時には家を出てしまうんです」


エリスはエプロンを外しながら、寂しそうにブロンコさんの席を見つめた。


「大丈夫、きっとエリスの気持ちは伝わるよ。根拠はないけど俺が保証する」


「ふふ、トータさんが保証してくれるなら間違いないですね」


「うん間違いない」


こんなに心優しい親子が不幸になる理由なんてどこにもないし、神様ですらそんな権利はないだろう。


食事が終わると、エリスに支度をするので少し待っていてほしいと言われたので、部屋に戻ることにした。


「マスター準備は万端?」


「準備っていってもなぁ……スキルセットとか装備変えることすら出来ないからなぁ」


ん?そういえばなんで俺は服を着ているんだろう?

完全に発言が変態のそれだが、確かこの世界に来た時、俺は皮のズボンしか履いてなかったはずだ。

試しに装備画面を開く。



メインウェポン:素手

サブウェポン:

レンジカバーウェポン:

頭:

胴:旅人の服

腕:

手:

腰:

脚:皮のズボン

足:皮の靴

装飾品:



おー!増えてる!こんなので喜んでいるのが悲しくなるが、あるのとないのとじゃ大違いだろう。

多分可哀想に思ったブロンコさんが着させてくれたんだと思う。


お、なんかウィンドウの右下にNewが点滅している。

早速表示させてみる。



新しい称号を手に入れました!



おお!!!



Newシャイボーイ



「やかましゃぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」


「朝から元気ねマスター。クエストの確認はしたの?」


クエスト?クエストってなんだ?

そんなの受注した覚えがない。


「ナツさん俺クエストなんか受けてないよ?」


「あら、じゃぁ知らずに受けていたのね。これを見てみて」



〈シークレットクエスト〉受注中

【エリスの願い】推奨Lv10〜


達成条件:フェリシュ×1の取得


失敗条件:プレイヤー、またはエリスの死亡


達成報酬:No research



ん?普通クエストってギルドとか酒場で依頼を受けてこなすもんなんじゃないのか?


「そうね、クエストについて簡単に説明しておくわ。

クエストは大きく分けて3種類あるの。『レギュラークエスト』『シークレットクエスト』『アージェントクエスト』っていうんだけど、マスターの受注したのは『シークレットクエスト』ね。これはある特定の条件下のみ発生するクエストで、別名『レアクエ』とも呼ばれているわ。レギュラークエストと違って一度失敗したり破棄したりしてしまうと、そのクエストに関しては、もう2度と発生しないから注意してね」


なんとなく理解は出来たが、まだ現状をのみこむには時間がかかりそうだ。


「推奨Lv10からって書いてあるけど……」


「そうね、私昨日マスターがそれを知ってて受注したのかと思って少し見直してたのよ。完全に勘違いだったみたいだけど」


記憶が確かならば俺の今のLvは2だ。黒スキルがあるとはいえ、全く使いこなせていないし、正直不安しかない。

ただ、どうでもいいクエストなら破棄も考えるかもしれないが、このクエストに関しては後退はない。

ただ……

失敗条件に書いてあるエリスの死亡という言葉が心に重くのしかかる。

絶対にエリスを死なせやしない!と言い切るにはあまりにも不安な糞ステだが、やると決めた以上成功あるのみだ。


「マスター、それと隔世についてなんだけど……」


トントン


どうやらエリスの準備が出来たようだ。


「まぁ知らないほうが楽しめることもあるわね」


これから待ち受けるであろう苦難を想像するだけで心と身体が震える。

怖くないと言ったら嘘になる。

ただ愉しみのほうが今は強い。


俺は頬を叩いて気合を入れると、エリスに返事をした。


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