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フェルデンツ伯爵家の檻~エレナとシャルロットの解放~  作者: 春告草


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深夜の魔法の訓練

夜の闇が完全に納屋を包み込み本邸の喧騒が遠ざかった深夜。

外灯の光も届かないその場所で、二人の密かな特訓が始まった。


容赦ない労働の昼間とは打って変わって、夜の時間は生き残るための技を磨く過酷な時間だ。


夜の納屋にて。


一番最初に教え込まれたのは、光を表に出さないための技術だった。


「お前のふざけた光は遠くから目立つ。消すんじゃない圧縮しろ」


銀髪の女性は転がっていた古い木製の小箱を指さした。

エレナは、手のひらに小さな青白い光を灯そうとすると、女性は容赦なくその手首を押さえつける。


「外に漏らすな。肌のすぐ下で血の代わりにその魔力を流し込め。自分の肉体の内側に閉じ込めろ」


熱く刺すような痛みを伴う作業だ。だが妖精たちの羽音に導かれながら、必死に魔力を体内に押し込めていく。

気の遠くなる回数を繰り返した。

ようやく、肌の下に納められるようになった。


次に教えられたのが、気配を断つ音のしない身のこなし方だ。


納屋の床に敷き詰められた乾いたわらは少しでも足を滑らせればカサカサと音を立てる。


「ここに衛兵が踏み込んできた。お前が一瞬で消えるための方法を教える」


女性はただ言葉でだけでなく、自ら見本を見せた。

まったく重みを感じさせない足取りで、女性は音もなく暗闇の中に溶け込んで見えなくなった。

エレナも真似をした。

固い床に足を擦りむき、冷たい隙間風に震える。

呼吸の音さえも殺すように身をかがめた。


特訓の最中は言葉を交わすことはない。

失敗して足を擦りむいたエレナに何も言わずにボロ布投げ渡した。


「痛むか」

「平気。お母様。あ、ごめんなさい」


思わず口走りかけたが飲み込む。

女性はかすかに目を伏せうつ向いて何も聞かなかった。

背中が冷えないように自分のすすけた上着を羽織らせる。


「がんばって、エレナ。すっごく静かだよ」


妖精たちが耳元でそっとささやき、バランスを崩しかけたエレナの背中をふんわりと支えてくれた。

女性の厳格な指導、目に見えない妖精たちの支えによって、私の体には敵から身を隠すための野生の勘が叩き込まれていった。


次に、実戦的な魔術の使い方だ。


仕事が終わってから読んだ蔵書の古い魔法理論。

それを、女性は現実の命に直結するサバイバルへと噛み砕いて教えた。


「本に書いてある美しい詠唱や複雑な陣は実戦じゃあ何の役にも立たない。敵が隙を見せた瞬間に最小限の魔力で相手の動きを縛るか。こちらの存在を幻惑させるか。二つの中から選べ」


女性が指し示すのは、優雅な貴族の魔法ではない。

泥臭くしかし洗練された実戦のだった。

エレナの幼い頭脳は、冷徹な理屈をスポンジのように吸収した。

四歳という年齢でありながら、眼差しはもはやただの子どものものではない。

冷酷な世界を生き抜く魔術師のへと変わり始めていた。


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