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第三十一章:友の決意

機動隊バス内。無線機の前に座っていた弓山が、突然何かを思い出したように目を見開いた。


「あっ……!」


弓山が叫んだ。真秀が振り返る。


「弓山、どうした?」


「係長、甲本さんのお母さん……」


弓山が、慌てて携帯を取り出した。


「お母さん?」


花山が眉をひそめた。


「実は……」


弓山が、少し恥ずかしそうに言った。


「甲本さんの実家を訪れた時、お母さんと意気投合しちゃって……」


「意気投合?」


真秀が尋ねた。


「はい。お母さん、すごく優しい人で。私のこと、娘みたいに可愛がってくれて……」


弓山が続けた。


「それで、連絡先を交換したんです」


夢見が、苦笑した。


「弓山らしいな」


「それで?」


真秀が先を促した。


「実は、お母さんから連絡があったんです」


弓山が、携帯の着信履歴を見せた。


「甲本さんから電話があったって」


真秀の目が、鋭くなった。


「甲本から?何と言っていた?」


「自分は無事だけど、芹沢さんの間違いを正さなければならないって……」


弓山が答えた。


「お母さん、すごく心配してました。息子が何か危険なことをしようとしているんじゃないかって」


真秀は、モニターのPASを見た。


甲本隆。


彼は、芹沢を止めようとしている。


「弓山、なぜ今まで言わなかった?」


真秀が尋ねた。


「すみません……」


弓山が頭を下げた。


「電話があったのが、この事件の直前だったんです。それで、言いそびれちゃって……」


真秀は、無線機を掴んだ。


「桃源!」


真秀が叫んだ。


「何だ、真田?」


桃源の声が返ってきた。


「PASを攻撃しないで!」


「え?」


桃源が驚いた。


「甲本は、敵じゃない!芹沢を止めようとしているの!」


真秀が続けた。


「信じて、待って!」


桃源は、一瞬迷った。


だが――


「……分かった」


桃源が答えた。


「真田を信じる」


1号機が、攻撃態勢を解いた。


その時。


PASが、動き出した。エイリアンに向かって、一目散に走る。


「行くのか……」


桃源が呟いた。


PASの動きは、速い。p2hmよりも軽量で、機動力に優れている。あっという間に、エイリアンの間合いに入った。


「うおおおおっ!」


甲本の叫び声が、外部スピーカーから響いた。PASの腕が、エイリアンに向かって伸びた。


エイリアンも、PASに向かって腕を振るう。


二つの機体が――


激突した。


ドゴォン!


凄まじい衝撃音。PASとエイリアンが、組み合った。互いの腕を掴み合い、力と力のぶつかり合い。


「くそっ……強い……!」


甲本の声が、苦しそうに響いた。エイリアンのパワーが、凄まじい。PASが、じりじりと押されていく。


「甲本さん、危ない……!」


弓山が叫んだ。


だが――


甲本は、諦めなかった。


「芹沢……お前を……止める……!」


甲本の声が、決意に満ちていた。PASの推進装置が、フル稼働する。腕と脚のブースターが、火を噴いた。その推進力で、エイリアンを押し返そうとする。


だが――


エイリアンも、負けていない。


生物の筋力と、PASの機械力が融合した、圧倒的なパワー。


甲本のPASを、徐々に圧倒していく。


「くそっ……このままじゃ……」


甲本の声が、悲鳴に近づいていく。桃源は、それを見ていた。1号機のコックピット内で、コントロールスティックを握りしめている。


「真田……」


桃源が呟いた。


「あの男、本当に味方なのか?」


真秀の声が、無線から返ってきた。


「信じて。甲本さんは、友達を救おうとしているの」


桃源は、PASを見た。


甲本隆。


芹沢幸次郎の友人。


自分の命を危険に晒してまで、友を止めようとしている男。


「……分かった」


桃源が決断した。


「行くぞ!」


1号機が、前進した。エイリアンとPASが組み合っている場所へ。


「甲本さん、援護する!」


桃源の声が、響いた。


甲本が、驚いた声を上げた。


「え……?」


「お前、芹沢を止めようとしてるんだろ!」


桃源が叫んだ。


「なら、俺も手伝う!」


1号機が、エイリアンの背後に回り込んだ。


そして――


エイリアンの胴体を、後ろから掴んだ。


「今だ、甲本さん!」


桃源の叫び。


甲本のPASが、エイリアンの腕を掴み返した。二機で、エイリアンを拘束する。


「やった……!」


弓山が歓声を上げた。


だが――


エイリアンは、まだ諦めていなかった。


「ギャアアアアアアアアッ!」


凄まじい咆哮。


エイリアンが、全身の力を振り絞った。その力は、二機でも抑えきれないほどだった。


「くそっ、暴れるな……!」


桃源が歯を食いしばった。


「芹沢……」


甲本が呟いた。


「お前は、間違っている……」


甲本の声が、悲しみに満ちていた。


「ゆり子さんも、優太くんも……こんなこと、望んでいない……」


甲本が叫んだ。


「お前の復讐は、間違っているんだ!」


だが――


エイリアンは、答えなかった。


ただ、暴れ続けるだけ。


もはや、芹沢の意思など残っていないのかもしれない。


エイリアンは、ただの殺戮兵器と化していた。


「なら……」


甲本の声が、決意に変わった。


「俺が、止める……」


PASの腕部――


そこから、銃身が現れた。


内蔵されていた、重機関銃。


「甲本さん、それは……!」


桃源が驚いた。だが、甲本は躊躇しなかった。


「これで……終わりにする……」


重機関銃の銃口が、エイリアンの頭部に向けられた。


至近距離。


外れることはない。


「芹沢……すまない……」


甲本が、トリガーに指をかけた。


その時――


エイリアンの動きが、一瞬止まった。


まるで――


何かを理解したかのように。


そして――


エイリアンの口から、声が漏れた。


「……かもと……」


か細い声。


人間の声。


芹沢幸次郎の、声だった。


甲本の指が、震えた。


「芹沢……お前……」


「……すまな……かった……」


エイリアンの声が、途切れ途切れに響いた。


「もう……止められ……ない……」


甲本の目から、涙が溢れた。


「芹沢……」


「頼む……止めて……くれ……」


芹沢の最後の願い。


友への、最後の言葉。


甲本は――


トリガーを、引いた。バリバリバリバリバリッ!


重機関銃の轟音が、工場中に響き渡った。

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