第三十章:罠の中の戦場
エイリアンは、素早く方向転換した。
そして――
近くの廃工場に向かって走り出した。
「逃がすか!」
桃源が叫んだ。1号機が、エイリアンを追う。2号機も、後に続いた。
エイリアンが、廃工場の壁を破壊して中に入っていく。
「追うぞ!」
桃源の1号機も、壁を破壊して突入した。2号機も続く。
廃工場の内部。
広い空間が広がっている。
古い機械や鉄骨が、あちこちに放置されている。
薄暗い照明。
エイリアンが、工場の奥へと走っていく。
「巽、左右から挟むぞ!」
「了解!」
1号機が右から、2号機が左から、エイリアンを追い詰める。エイリアンが、立ち止まった。周囲を、p2hm二機に囲まれている。
「今だ!」
桃源が叫んだ。
1号機が、エイリアンに向かって拳を振るった。エイリアンが、素早く回避する。
だが――
2号機が、反対側から攻撃していた。
「捕まえた!」
巽の声。2号機の腕が、エイリアンの胴体を掴んだ。
「よし!」
桃源が、1号機を前進させた。
そして――
全力で、拳を振るった。
ドゴォン!
エイリアンの頭部に、直撃。エイリアンが、苦しそうに唸る。
「もう一発!」
1号機が、再び拳を振るう。
連続した打撃。
エイリアンの装甲が、歪む。
「ショットガン!」
桃源が叫んだ。
1号機の肩部ショットガンが、展開される。銃口が、エイリアンの頭部に向けられる。
「撃て!」
ドォン!
大口径散弾が、エイリアンに命中した。装甲が割れ、内部が露出する。
「やった!」
だが――
エイリアンは、まだ動いた。その腕が、2号機の腕を掴み返した。
そして――
力任せに引っ張った。
「うわっ!」
巽の悲鳴。
2号機のバランスが崩れる。
エイリアンが、2号機を投げ飛ばそうとする。
その時――
エイリアンの腕が、1号機に向かってきた。
桃源が、防御姿勢を取る。エイリアンの拳が、1号機の胸部装甲に叩きつけられた。
ドォン!
だが――
爆発反応装甲が作動した。
バン!
装甲内部の爆薬が爆発する。
その衝撃で、エイリアンの攻撃が相殺される。
「効いてる!」
桃源が叫んだ。
エイリアンの腕が、爆発の衝撃で弾かれた。装甲の一部が、損傷している。
「爆発反応装甲、有効です!」
巽も叫んだ。
エイリアンが、再び攻撃を仕掛けてくる。
だが――
攻撃するたびに、爆発反応装甲が作動する。
バン!バン!バン!
連続した爆発。エイリアンの腕が、徐々に損傷していく。
「このまま押し切るぞ!」
桃源が叫んだ。
1号機と2号機が、同時にエイリアンに向かった。挟み撃ちにする。
エイリアンが、暴れる。だが、二機の連携に押されている。
「今度こそ、捕まえる!」
桃源の声。
1号機の腕が、エイリアンの頭部に伸びた。
あと少し――
あと少しで、捕らえられる。
その時。
ガコン!
2号機の足元が、崩れた。
「え?」
巽の驚きの声。
2号機の脚部が、穴に落ちた。床に開いていた、大きな穴。
「巽!」
桃源が叫んだ。
2号機が、穴の中に落下していく。
ガシャン!ガシャン!
衝撃音が響く。
穴の底には――
大量の鉄パイプや廃部品が敷き詰められていた。
2号機が、その中に埋もれる。鉄パイプが、2号機の関節部に絡みつく。
「くそっ、動けない!」
巽が叫んだ。
2号機が動こうとするが、鉄パイプや部品が絡まって動けない。
「巽、脱出しろ!」
桃源が叫んだ。
だが――
その瞬間。
エイリアンが、1号機に飛びかかってきた。桃源の注意が、巽に向いていた隙を突いた。
「くそっ!」
桃源が、防御姿勢を取る。だが、遅かった。エイリアンの両腕が、1号機の両腕を掴んだ。
そして――
力任せに押し込んできた。
1号機が、後退する。
「くそっ、一機だと押される……!」
桃源が歯を食いしばった。エイリアンのパワーが、凄まじい。1号機だけでは、抗えない。
爆発反応装甲も、エイリアンが学習したのか、直接攻撃を避けるようになっている。関節部など、装甲の薄い部分を狙ってくる。
「このままじゃ……」
桃源が焦り始めた。
機動隊バスの中。
真秀は、モニターで戦闘を見ていた。
「桃源、危ない……」
真秀が呟いた。花山と夢見も、固唾を呑んで見守っている。
「係長、何か手は……」
花山が尋ねた。
「分からない……」
真秀が唇を噛んだ。
その時。
廃工場の入口から、何かが入ってきた。人型のシルエット。だが、p2hmほど大きくはない。三メートルほどの機体。
PASだ。
「何っ!」
桃源が驚いた。
「もう一機のPAS……!」
真秀も、モニターを凝視した。PASが、工場の中に入ってくる。その動きは、流れるように滑らかだった。
「お前、誰だ!」
桃源が、外部マイクで叫んだ。PASが、立ち止まった。
そして――
背部のハッチが開いた。
中から、顔が見えた。
小太りの体格。
額に汗を浮かべた、頼りなさそうな顔。
「甲本……!」
真秀が叫んだ。
甲本隆。芹沢の友人。行方不明になっていた男。彼が、PASに乗っていた。
「甲本さん……」
桃源が呟いた。
「あなたは、敵なのか……?」
甲本は、何も答えなかった。
ただ――
PASのハッチを閉じた。
そして――
PASが、動き出した。
その向かう先は――
エイリアンか。
それとも、p2hmか。
真秀たちは、固唾を呑んで見守った。
甲本隆の選択が――
この戦いの行方を決める。




