第二十八章:迫る決戦
警視庁本部、捜査会議室。真秀は、花山たちの報告を聞いていた。
甲本の母親から聞いた話。
芹沢と甲本、そしてゆり子の友情。
「芹沢を救えるのは、俺しかいない」
甲本の言葉。
真秀は、腕を組んで考え込んでいた。
「係長、どう思われますか?」
花山が尋ねた。
「分からない……」
真秀が首を振った。
「甲本が行方不明になった理由も、何をしようとしているのかも」
真秀が続けた。
「芹沢を救おうとしているのか、それとも復讐を手伝っているのか……」
夢見が資料を見た。
「でも、PASのデータを持ち出しているのは事実です」
「ええ」
真秀が頷いた。
「それに、もう一機のPASも消えている。大道寺博士は隠していたけど、弓山が榎本重工のシステムをハッキングして確認したわ」
弓山が、ノートパソコンの画面を見せた。
「2号機PAS、在庫記録から消えてます」
真秀は、立ち上がった。
「いずれにしても、華田と榎本が融合したエイリアンと対峙しなければならない」
真秀が全員を見渡した。
「そして、その時が近づいている」
会議室のドアが開いた。機動捜査隊の隊長、権藤希典が入ってきた。
「真田係長」
権藤が真剣な顔で言った。
「はい」
真秀が姿勢を正した。
「エイリアンとの決戦が近い。お前たちには、最大限の警戒を怠らないよう指示する」
権藤の声が、重く響いた。
「この事件は、警視庁の威信をかけた戦いだ。必ず、勝て」
「了解しました」
真秀が敬礼した。権藤は、部屋の隅に立っていた桃源と巽を見た。
「桃源、巽」
「はい」
二人が姿勢を正した。
「お前たちには、頼みがある」
権藤が二人に近づいた。
「いざという時は、真田たちを守ってやってくれ」
権藤が、二人の肩を叩いた。
「p2hmは、警察官を守るための盾でもある」
「了解しました」
桃源が力強く答えた。
「必ず、守ります」
巽も頷いた。
その時――
会議室の電話が鳴った。花山が受話器を取る。
「はい、強行犯捜査第三係……え?」
花山の顔が、緊張に染まった。
「分かりました、すぐに向かいます」
花山が電話を切った。
「係長、栃木県にエイリアンが現れました!」
真秀の目が、見開かれた。
「栃木?」
「はい。衛藤大臣が遊説に訪れているそうです」
花山が続けた。
「エイリアンは、大臣の滞在先ホテル周辺で目撃されました」
真秀は、舌打ちした。
「ちっ……」
「係長?」
「警護の薄い地方に行かないよう、警察から要請していたはずよ」
真秀が苛立った声で言った。
「それなのに、自分勝手に遊説なんて……」
夢見も、不満そうな顔をした。
「あの大臣、本当に自分のことしか考えてないですね」
「行くわよ」
真秀が立ち上がった。
「花山、夢見、すぐに出発準備を」
「了解です!」
二人が駆け出した。
真秀も、会議室を出ようとした。
その時――
「真田、少し待て」
桃源が声をかけた。
「待つ?今すぐ行かないと――」
「分かってる」
桃源がスマホを見た。
「でも、俺たちも一緒に行く。ちょうど今、連絡が来た」
「連絡?」
真秀が眉をひそめた。
「ああ。下に降りてみろ。いいものが到着してる」
桃源が笑った。
真秀は、桃源と巽とともにエレベーターに乗った。一階に降り、玄関に向かう。
そして――
外に出た瞬間、真秀は、目を見開いた。
警視庁本部の玄関前に、巨大な車両が停まっていた。
大型バス。
いや、バスというより、移動要塞と呼ぶべき巨体。通常の大型バスより大きく見える。装甲が施され、屋根部分が特殊な構造になっている。
「これは……」
真秀が呟いた。
「p2hm搭載用機動隊バスだ」
桃源が胸を張って言った。
「p2hmを二機、同時に運べる」
バスの後部ハッチが開いた。中には、二機のp2hmが格納されている。爆発反応装甲を装着した、重厚な姿。
「これで、どこにでもすぐに出動できる」
巽が説明した。
「栃木まで、約二時間。高速道路をフルスピードで行けます」
真秀は、バスを見上げた。
これが、最後の切り札。
エイリアンとの決戦のための、移動要塞。
「すごい……」
真秀が呟いた。
「だろ?」
桃源が笑った。
「これなら、お前たちを守れる」
真秀は、桃源を見た。その目には、強い決意があった。
「ありがとう」
真秀が小さく笑った。
「じゃあ、行きましょう」
花山と夢見も、バスの前に到着した。
「うわぁ、デカい……」
夢見が驚いた。
「これに乗って行くんですか?」
「ああ」
桃源が頷いた。
「p2hmと一緒にな」
全員が、バスに乗り込んだ。運転席には、機動隊の専門ドライバーが座っている。
「出発します」
ドライバーの声。バスのエンジンが唸りを上げた。巨大な車体が、ゆっくりと動き出す。警視庁本部を出て、高速道路に向かう。
バスの中。
前方には、真秀たち刑事のための座席がある。後方には、p2hm二機が格納されている。
桃源と巽は、それぞれのp2hmのコックピットに入る準備をしていた。
真秀は、窓の外を見た。
東京の街が、流れていく。
そして――
これから向かう、栃木。そこで、最後の戦いが始まる。
華田凛と榎本大輝、そしてPASが融合した最強のエイリアン。それと、対峙する。
真秀は、拳を握った。
「必ず、勝つ」
真秀が呟いた。花山と夢見も、真剣な顔をしている。バスは、高速道路に入った。
そして――
フルスピードで、栃木に向かって走り出した。後方では、二機のp2hmが静かに佇んでいる。
鋼鉄の戦士たち。人類を守るための、最後の盾。
バスの中に、緊張が満ちていた。
誰もが、分かっていた。これが、最後の戦いになるかもしれないと。
そして――
生きて帰れるかどうかも、分からないと。
だが、それでも――
彼らは戦う。
正義のために。
人々を守るために。
バスは、北へと向かって疾走していた。
決戦の地へと――




