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第二十一章:海辺の墓標

静岡県。海沿いの小さな町。


真秀たちの車は、細い山道を登っていた。


助手席に真秀。運転席に花山。後部座席には夢見と桃源が座っている。


「この先に、墓地があるはずです」


花山がカーナビを確認しながら言った。


窓の外には、青い海が広がっている。穏やかな波。白い砂浜。のどかな風景だった。


だが、真秀の心は穏やかではなかった。


もうすぐ、芹沢幸次郎に会える。三年間、復讐のために生きてきた男に。


車は、小高い丘の上にある墓地に到着した。


真秀たちは、車を降りた。


海風が、真秀の髪を揺らす。潮の香りが、鼻をくすぐった。


墓地は、小さかった。


数十基の墓石が、静かに並んでいる。


「あそこです」


夢見が、奥の方を指差した。真秀たちは、慎重に近づいた。


墓石の前に――


一人の男が、座っていた。


痩せた体躯。


眼鏡をかけた、疲れた表情。


芹沢幸次郎だった。


真秀は、拳銃を構えた。花山と夢見も、同様に構える。


「芹沢幸次郎」


真秀が、静かに呼びかけた。


芹沢が、ゆっくりと振り返った。


その目は、虚ろだった。感情が、抜け落ちたような目。


「警察、ですか」


芹沢が、淡々と言った。


「あなたを殺人容疑で逮捕します。抵抗しないでください」


真秀が、一歩前に出た。


芹沢は、笑った。


「抵抗?もう、する気力もありません」


芹沢が立ち上がった。


「すべて、終わったんです」


「終わった……?」


真秀が眉をひそめた。


「ええ」


芹沢が、墓石を撫でた。


「ゆり子、優太。二人の仇は、取りました」


真秀は、芹沢を見た。


この男は、本当に終わったと思っているのか。


「芹沢さん」


真秀が、銃を下ろした。


「あなたのしたことは、正しかったと思いますか?」


芹沢が、真秀を見た。


「正しい……?」


芹沢が首を振った。


「分かりません。でも――」


芹沢の目に、僅かに光が戻った。


「後悔は、していません」


真秀は、芹沢の目を見た。そこには、まだ消えない怒りがあった。


「北条たちは、あなたの家族を奪った」


真秀が言った。


「でも、あなたもまた、華田凛の命を奪った。榎本大輝の人生を壊した」


「彼らは……」


芹沢が、拳を握った。


「彼らは、罪を償わなかった。親の権力で、揉み消した」


芹沢の声が、震えた。


「私の妻と息子は、ただ横断歩道を渡っていただけなのに――」


芹沢の目から、涙が溢れた。


「死んだんです。理不尽に、殺されたんです」


真秀は、黙っていた。芹沢の言葉には、真実があった。


だが――


「あなたの気持ちは、分かります」


真秀が言った。


「でも、復讐は何も生まない。新たな憎しみを生むだけです」


芹沢が、真秀を見た。


「それでも……」


芹沢が呟いた。


「それでも、私は復讐するしかなかった」


芹沢が、膝をついた。


「もう、それしか……生きる理由が、なかったんです」


真秀は、芹沢に近づいた。


そして――


手錠をかけた。


「芹沢幸次郎、あなたを逮捕します」


芹沢は、抵抗しなかった。ただ、静かに手錠を受け入れた。


「ありがとう」


芹沢が、小さく呟いた。


「もう、休めます……」


真秀は、芹沢を見た。


その顔には、安堵の表情があった。


花山と夢見が、芹沢を車に連れて行く。


真秀は、墓石の前に立った。


『芹沢ゆり子之墓』


『芹沢優太之墓』


二つの名前が、刻まれている。真秀は、手を合わせた。


「安らかに、眠ってください」


海風が、真秀の言葉を運んでいった。桃源が、真秀の隣に立った。


「終わったな」


桃源が言った。


「ええ……」


真秀が頷いた。


だが――


真秀の胸には、まだ重いものがあった。


「でも、まだエイリアンが残ってる」


真秀が言った。


「PASと融合した、あの化け物」


桃源が、拳を握った。


「ああ。あれを倒さないと、本当には終わらない」


二人は、海を見た。


穏やかな波。


青い空。


だが、その平和は――


もうすぐ、破られる。


最後の戦いが、近づいていた。

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