第十八章:バッテリーの限界
融合した怪物が、p2hmに向かって走り出した。その速度は、凄まじい。
PASのブースターが作動し、一瞬でp2hmの間合いに入る。
「速い!」
桃源が叫んだ。p2hmが、防御姿勢を取る。
だが――
怪物の拳が、p2hmの胸部装甲に叩きつけられた。
ゴオォン!
凄まじい衝撃。
p2hmが、後退する。
「くそっ、パワーも上がってる!」
桃源が歯を食いしばった。
PASの機動力。
エイリアンの筋力。
それが合わさって、p2hmを上回るパワーを発揮している。
怪物が、再び攻撃を仕掛けてくる。連続して、拳を振るう。p2hmが、それを受け止める。
だが――
装甲が、軋む。ダメージが、蓄積していく。
「このままじゃ……」
桃源が焦った。
怪物の動きは、速すぎる。p2hmの反応速度では、捕らえられない。そして、パワーも装甲も、怪物が上だ。
「負ける……のか……?」
桃源の心に、恐怖が広がった。
怪物が、p2hmの首に飛びついた。鋭い爪が、装甲に食い込む。
「うあああああっ!」
桃源が、全力でコントロールスティックを操作する。p2hmが、怪物を振り払おうとする。だが、怪物は離れない。
そして――
怪物の牙が、p2hmの頭部に迫った。
コックピットを、破壊しようとしている。
「くそっ、このままじゃ――」
桃源が絶望しかけた、その時。
怪物の動きが、止まった。
いや、止まったわけではない。急激に、遅くなった。
「え……?」
桃源が、目を見開いた。
怪物の腕から、力が抜けていく。ブースターの光が、弱くなっている。
「まさか……」
桃源が、気づいた。
「バッテリーか!」
PASのバッテリーが、切れたのだ。高出力での戦闘で、電力を消耗しきった。
怪物は、まだ動いている。
だが、その動きは鈍い。
PASの機動力が、失われた。
「今だ!」
桃源が、チャンスを見た。
p2hmの腕が、怪物を掴んだ。
そして――
投げ飛ばした。怪物の体が、工場の壁に叩きつけられる。
ガシャン!
コンクリートが、砕ける。
怪物が、立ち上がろうとする。だが、その動きは遅い。
「逃がすか!」
桃源が、p2hmを前進させた。
だが――
怪物は、窓から飛び出した。外に、逃げた。
「待て!」
桃源が、p2hmを追わせようとした。
だが――
真秀の声が、無線で響いた。
「桃源、追うな!」
「真田?」
「今は、逃がすしかない。p2hmもダメージが蓄積してるはず。それよりこちらに来て。地下に何かある」
桃源は、一瞬迷った。
だが――
「……分かった」
桃源は、追跡を諦めた。怪物は、夜の闇に消えていった。
真秀たちは、地下に降りていた。階段を下り、地下施設に入る。
そこは――
最新の研究施設だった。
培養タンク。解析装置。手術台。
すべてが、整然と並んでいる。
「これは……」
花山が呟いた。
「芹沢の、研究施設か」
真秀が答えた。
だが――
誰もいない。芹沢は、すでに逃げた後だった。
真秀は、施設内を歩いた。
証拠を探す。
そして――
机の上に、一枚の写真を見つけた。
真秀が、それを手に取る。
古い写真。大学時代のものだろう。数人の若者が、笑顔で写っている。
その中に――
芹沢幸次郎がいた。
若い頃の、芹沢。
そして、その隣には――
女性が写っている。
優しい笑顔。
これが、芹沢の妻、ゆり子だろうか。
真秀は、写真をじっと見つめた。
他にも、何人か写っている。
男性たち。
芹沢の友人だろう。
真秀は、その顔を一人ずつ確認した。
真秀は、写真をポケットに入れた。
「証拠品として、持って帰るわ」
真秀が言った。
桃源が、地下に降りてきた。
「真田、大丈夫か?」
「ええ。でも、芹沢は逃げたわ」
真秀が答えた。
「あのエイリアンも、逃げた」
桃源が言った。
「次は、もっと強くなって戻ってくるかもしれない」
真秀は、頷いた。
「分かってる。でも、必ず捕まえる」
真秀の目に、決意が宿っていた。
だが――
今回の突入が、この事件の重要な鍵になることを、真秀はまだ知らなかった。
夜の闇が、深まっていく。
戦いは、まだ終わらない。
そして――
最後の、最も恐ろしい戦いが、近づいていた。




