第十七章:絶望の融合
p2hmの油圧シリンダーが、唸りを上げた。
桃源が、全力でコントロールスティックを引く。
「うおおおおっ!」
桃源の叫びが、コックピット内に響いた。
p2hmの腕が、エイリアンの腕を引っ張る。
メキメキメキ。
エイリアンの腕が、軋んだ。
そして――
ブチッ!
エイリアンの両腕が、肩から引きちぎられた。肉が裂け、血が飛び散る。
エイリアンが、叫び声を上げた。
「やった!」
夢見が歓声を上げた。
だが――
「まだだ!」
真秀が叫んだ。
エイリアンの肩から、再び腕が生えてきた。肉が盛り上がり、骨が形成され、皮膚が覆う。数秒で、両腕が完全に再生された。
「くそっ!」
桃源が悪態をついた。
エイリアンが、再びp2hmに飛びかかってきた。
だが――
今度は、速い。
明らかに、これまでのエイリアンより速い。
「速っ!」
桃源が驚いた。
エイリアンが、p2hmの脇をすり抜ける。そして、背後に回り込んだ。
エイリアンの腕が、p2hmの首に巻きつく。
「くそっ、捕まった!」
桃源が、p2hmを回転させようとする。だが、エイリアンは素早く離れた。そして、再び別の角度から攻撃してくる。
p2hmの動きでは、捕らえられない。
「速すぎる……」
桃源が歯を食いしばった。
エイリアンが、p2hmの脚部に攻撃を仕掛け、鋭い爪が、装甲を引っ掻く。
「このままじゃ、埒が明かない……」
桃源が焦り始めた。
その時――
轟音が響いた。
バリバリバリッ!
工場の屋根が、破壊された。破片が、降り注ぐ。
そして――
その穴から、何かが降りてきた。
人型のスーツ。
PAS。
ヘリから切り離され、地面に着地する。
ドスン!
衝撃で、工場の床が揺れた。
「何だ、あれは!」
真秀が叫んだ。PASのコックピットから、榎本の声が響いた。
「俺だ、榎本だ!」
榎本の声は、狂気に満ちていた。
「エイリアン、お前を殺す!」
PASが、動き出した。その動きは、p2hmとは全く違う。軽快で、素早い。
PASが、エイリアンに向かって走った。腕と脚のブースターが作動し、加速する。
エイリアンが、PASに飛びかかってきた。
だが――
PASは、エイリアンを捕らえた。機動力で、エイリアンの動きに対応したのだ。
「捕まえた!」
榎本が叫んだ。PASの左手が、エイリアンの胴体を掴む。
そして――
PASの左手首から、銃身が現れた。大口径ハンドガン。内蔵されていた武器だ。
「死ねえええええっ!」
榎本が引き金を引いた。
ドォン!ドォン!ドォン!
連続して、大口径弾がエイリアンに撃ち込まれる。
エイリアンの体が、破壊されていく。腹部に穴が開く。脚が吹き飛ぶ。
「いいぞ!そのまま!」
夢見が叫んだ。
PASが、エイリアンの首を掴んだ。
「今度こそ、終わりだ!」
榎本が、エイリアンの首を握りつぶそうとした。
あと一歩。
あと一歩で、エイリアンを倒せる。
その時――
PASが、止まった。動かなくなった。
「え……?」
榎本の声が、戸惑いに震えた。
「動け、動けよ!なんで動かないんだ!」
榎本が、コントロールスティックを操作する。だが、PASは反応しない。システムが、停止していた。
「まさか……」
榎本の背筋に、冷たいものが走った。
エイリアンが、動いた。
その顔が――
人間に戻っていた。
華田凛の、顔。
「大輝……」
華田の声が、聞こえた。
「愛してる……」
榎本は、叫んだ。
「やめろ!来るな!」
だが、PASは動かない。
華田の口が、裂けた。蛇のように、顎が外れ、口が大きく開いた。その中には、無数の鋭い牙が並んでいる。
「ああああああっ!」
榎本の絶叫が、工場に響いた。
華田の口が、PASのコックピットに食い込んだ。
装甲が、歪む。
割れる。
華田の牙が、中の榎本に届いた。
「ぎゃああああああああっ!」
榎本の叫びが、激しくなる。血が、飛び散る。華田の体が、PASの中に侵入していく。肉が絡み合い、融合していく。
PASの装甲と、エイリアンの皮膚が、一つになっていく。機械と生物が、混ざり合っていく。
「うああああああ、助けて、助けてくれええええっ!」
榎本の最後の叫びが、工場に響いた。
そして――
静寂。
そこに立っていたのは――
PASでも、エイリアンでもない。両方が融合した、何か。
PASの装甲を纏った、異形の生物。
機械の装甲が、生物の筋肉と融合している。
腕と脚のブースターは、そのまま残っている。頭部は、エイリアンの形状だが、PASのセンサーも組み込まれている。
最強の、怪物。
それが、誕生した。
桃源は、p2hmのコックピットで、呆然としていた。
「嘘だろ……」
桃源の声が、震えた。
あれは、何だ。機械と生物が、融合した。
機動力。
装甲。
再生能力。
すべてを兼ね備えた、化け物。
「あれを、俺が倒せるのか……?」
桃源の額に、冷や汗が滲んだ。
p2hmは、パワーでは勝てる。だが、速度で負ける。そして、あの装甲。
p2hmの攻撃を、防げるかもしれない。
「くそっ……」
桃源は、拳を握った。だが、その手は、震えていた。
勝てないかもしれない。
初めて、桃源はそう思った。
融合した怪物が、ゆっくりと動き出した。
その目が、p2hmを見た。
そして――
咆哮した。
「ギャアアアアアアアアアアッ!」
戦いは、まだ終わらない。
いや、これからが本当の地獄だった。




