第四十六話
ジャンル別日間ランキング、41位ありがとうございます。
毎日更新はやめたと言いましたが、ランキング入ったならもうちょっと頑張ってみようかと思います。
色々あった、激動の緊急クエストを終えた翌日。
ギルド【ふかふかベッド】を解体し、新ギルド【七つの大罪】を設立するということで、ギルドハウスのお引越し作業を私たちは行っていた。
いや、訂正しよう。
私以外のさっきゅん、ユニ、リヴは引っ越し作業を行っていた。
私はふかふかのベッドの上でその様子を眺めているだけだ。
そんな怠惰な姿にもメンバーは何も言わない。
諦められているのか、私が手伝ったところで邪魔なだけと理解しているのか、どっちだろう。どっちもだろうか。
ちなみに新ギルドのギルドハウス設立に関しては《傲慢》……ルリたちに任せている。
【七つの大罪】のリーダーはルリに決まったからね。ギルドハウスの設立はリーダーしか行えないからこれは仕方ない。
役割分担というやつだ。私以外が働き、私が働かない。素晴らしい、これ以上効率的な役割分担は存在しないでしょう。
「マコー、あとはそのベッドだけよ。さっさとインベントリに仕舞って頂戴」
「んあ」
やっば、ちょっと寝てた。
いつの間にか撤収作業は概ね完了してたようだ。
名残惜しいが、少しばかりのお別れだ。
ベッドをインベントリに仕舞って、家具や諸々が無くなったギルドハウスを見渡す。
広く感じる。
懐かしいな。最初はこんな感じだった。
「じゃ、新ギルドハウスに向かうとしますか」
「ルリたちから連絡はあったわよ、もう完成したって」
「それは楽しみですね」
「七人で住むんだもの、このギルドハウスよりかは広いわよね?」
ギルドハウスから出て、ギルド関連のウィンドウを開き、【ふかふかベッド】ギルドの解散を選択する。
本当に解散していいかの確認メッセージにyesを押すと、ギルドハウスは音も無く消え去った。
「さて、行こうか」
ルリから送られてきた住所を頼りに、四人で歩き始める。
ギルドの解散と言っても、メンバーが減るわけじゃない。
どちらかといえば移籍が正しいと言えよう。
だから、感傷に浸る必要なんて無い。
「マコさん……」
「ん? 何、ユニ」
「……いえ、やっぱいいです」
何なんだ一体、と考える間も無く、さっきゅんに背中を叩かれた。
「まー、結構お世話になったギルドハウスだもんね! 後ろ髪を引かれる感じがするのは分かるわ!」
「別に、私は何とも……」
ずず、と鼻をすする。
「…………マコって案外涙もろいのね、何か意外」
「………………」
リヴの呟きは無視して、歩みを進める。
さて、そろそろ見えてくる頃か。
「来たわね《怠惰》! 《色欲》! 《嫉妬》! 《憤怒》!」
新ギルドハウス前で、わざわざ待ち構えていたのか、ルリが仁王立ちで立っていた。
「刮目しなさい! これが、【七つの大罪】のギルドハウスよ!」
そこには、控えめにいって魔王の城と呼べるような真っ黒で巨大な城が立っていた。
城門は分厚く、塀には鋭利な杭が所狭しと植えられ、城壁には大砲が隙間からその顔をのぞかせていた。
戦争でもするつもりか。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
四人揃って、あんぐりと口を開ける。
傍らに居た《強欲》ことアヤは、諦めたような顔で首を横に振った。
《暴食》こと虎子は、わりとどうでも良さそうだ。食べること以外に何も興味無いんかあいつ。
「貴方たちの言いたいこと、分かるわ」
アヤが、固まってしまった私たちに対して耳打ちしてきた。
「装飾が足りないわよね……もっと宝石を散りばめてキラキラさせた方が綺麗だと思うのだけど、ルリが暗黒のダークネスキャッスルにするって言って聞かなくて……」
あ、そういえばこのギルドに常識人は居ないんでしたね忘れてました。
「くっくっく、アタシたちは世界を壊すギルドよ? それってもう実質魔王じゃない。だったら魔王城に住まなきゃ嘘でしょ」
「溶岩地帯や極寒の環境に建っているなら兎も角、ふっつーの街並みに魔王城があると違和感しかないんですけど……」
「それはだってあなた達が他の街に引っ越すのは面倒くさいとか言うからでしょ」
他の街に引っ越すのは面倒くさいとごねた張本人である私としてはそこを突かれると痛いところだった。
……いや、痛いか? 冷静に考えてこんな街に魔王城を建てようとする方が頭おかしいのでは?
ま、いいか。
「住めば都って言うしね。ご近所さんにどう思われるかとかどうでもいいし」
「ていうかこんな凄いお城、ギルドハウスに出来たんですね」
「そこはクリエイト機能でちょちょいとね。マインでクラフトするゲームで鍛えた建築技術をフル活用させて貰ったわ」
ユニの疑問に、ルリはどや顔しながら答える。
ていうかルリはほぼ常にどや顔してるか。
「とりあえず、引っ越しを完了させちゃいましょ。中の間取りはどうなってるの?」
「寝室はちゃんと《ばきゅーん!》が出来るだけの広さがあるんでしょうね」
うわ、なんか久々にさっきゅんの発言が規制されたところ見た気がする。
文脈的に、多分7Pが出来るのかって言ったのかな? やるか馬鹿。
「全員分の個室は用意しているわ。とりあえず入って」
アヤに先導されて、城門を潜る。
外観から分かっていたことだが、前のギルドハウスと比べてかなり広い。
「中庭にある防護用の罠は今はオフにしてるわ」
「物騒だなぁ……」
中庭を抜けて、主塔に入るとやっと見慣れた居住空間が目に入ってきた。
おそらくここはリビングに当たる共有スペースなのだろう。ソファや机、テレビにパソコン、台所等、生活に必要な一式は揃っていそうだった。
「いいじゃない、いいじゃない、七福神シリーズはこの机に並べよっかな」
さっきゅんがウキウキでコレクションの人形を並べていく。
おーい、そういうのは探索が終わってからにしろって。
続いてシャワールーム、個室、トイレと一階にある施設を回っていく。
さっきゅんがガラス張りじゃないことに怒っていたが、生憎ここはラブホテルじゃないんだ。
「じゃあ次は二階だな! 階段はこっちだ!」
「二階? あー……」
私は、二階と聞いた瞬間、ソファに寝転んでテレビの電源を点けた。
「私はここで待ってるから皆で行ってきてくれ」
「何で!?」
階段上るのが死ぬほど嫌いだからかな……しかもこの城、何階もありそうだし。
「ちょ、ちょっとまて《怠惰》。最上階にはそれはもう、それはもうとんでもなく素晴らしい施設を用意してあるのだぞ?」
「最上階って何階?」
「え? ……六階」
「皆、何があったのか後で私に教えてくれな」
二階建てすら嫌いなのに、六階とかやってられませーん。
エレベーターが作られてから行くことにするわ。
「も、物凄く物凄いぞ!? 見なきゃ損だぞ!?」
「損をしてでも怠惰を取る、それが私の生き方だ」
「う、ううううううう……!」
あ、と気づく前に、ルリの両目からはボロボロと涙がこぼれ始めていた。
「やだー! やだやだやだー! 万事が万事全部アタシの思い通りにならないとやだー!」
「…………」
ぎゃーぎゃーと泣き始めるルリ。何度聞いてもひでえ台詞だ。
はあ、仕方ない。
「分かった分かった。その代わりさっきゅんおぶって」
「おーけー、おんぶしてる間死ぬほどお尻を揉みまくらせてくれるならいいわよ」
「自分で歩くわ」
私が階段を昇る意思を見せると、ルリは泣き止んでくれた。
「何だかんだ、仲間のためなら動くんですよね、マコさんは」
ユニが微笑ましいものを見る目でそんなことを言ってきた。
うるへー。
ちなみに最上階にあったのはだだっ広い空間に玉座のような椅子があるだけの部屋だった。
ルリ曰く、ここで魔王のように勇者と相対する場だそうだ。私はキレた。
新章開幕って感じですね。




