~届かない声~7
変わらず防戦一方の漠に対して、かまいたちは攻撃の手を緩めない。
「避けてばかりでは私には勝てませんよ?」
笑いながらステッキを振り、その攻撃は避けている漠の衣服を少しずつ切り裂いていく。
「…ば、漠さん…。」
心配する千奈美は祈るように漠を見つめる。
「あなたの武器はベレッタM93Rの自動装填タイプ、射撃反動の少ない銃だ。射程距離範囲はおよそ五十メートル…。」
「えらくっ!…詳しいっな!」
ひたすら避けながら漠は、かまいたちの説明に感心する。その言葉にかまいたちは、いえいえ…と恐縮しながら不気味な笑みを浮かべている。
「しかし、獏さん…あなたの武器に対して私の武器は近距離武器…あなたの銃を構える余裕さえ与えなければあなたに勝ち目はありませんよ?」
ふふふ、と笑いながらかまいたちの猛烈な攻撃が続く。一方の漠は何とか攻撃をしのいでいるという状況である。
「どうせ、あなたも私と同じ睡魔…どうです?私と一緒に人間世界を私達の住みやすい世界に変えませんか?」
嫌悪感を覚えるような笑みを浮かべ、かまいたちは提案すると、その言葉に漠の纏う空気が変わった。
「……ざけ…な。」
「…はい?何かおっしゃいましたか?」
漠の呟きに、かまいたちは聞き直す。すると、漠は顔を上げてかまいたちにニヤリと笑っていた。
「ふざけるな。お前らと一緒にしてくれるな。僕がどうして生まれたのか、人に何を託されたか、何も知らないくせにベラベラ喋るな。」
漠はそう言い終わると、べーっと舌を出してかまいたちを挑発した。
「…なら、私があなたを、この夢ごと取り込むまでです!!」
かまいたちは更に攻撃の手を早く、鋭く漠に迫る。
「…右斜め、左斜め…突き三回、振り下ろし、その後、突き二回…。」
「…何をぶつぶつ言っているんですか?」
漠の声に、かまいたちは眉をひそめた。様子がおかしい、そう思ったかまいたちはステッキを振るう手を更に加速させる。
「お前さ、『フェアリーロンド』って知ってるか?」
「…はい?何ですかそれ?」
漠の質問に意味が分からない様子のかまいたちは、ひたすらステッキを振りながら尋ねる。
「夢を喰らう事しか頭になかったやつには分からないか。」
「……あ!」
ニヤリとした漠がそう言うと今まで黙っていた園田は大きな声を出す。
「…ど、どうしたんですか祐介さん?」
園田の声にびっくりした千奈美は尋ねると、園田はポツリと呟いた。
「……ゲーム…。」
「…ゲーム?」
うん、と頷くと千奈美を見て説明をした。
「俺が曲作りに悩んだりした時、息抜きにしているネットゲームのタイトル…。」
「…あ、やっぱりそのっちもやってたんだ。」
園田の言葉に嬉しそうに漠は笑う。
「…そして、あのかまいたちの攻撃…疾風使いの化身ってモンスターの攻撃に似てる…そのモンスターはレイピアを使って攻撃してくるんだけど…。」
そう説明していると、漠はかまいたちの突きをしゃがんで避ける。
「移動速度、攻撃速度は凄いけど、攻撃している間は移動速度は通常モンスターと変わらなくなる…。」
園田の説明に続くように、漠はかまいたちの足を払うと、かまいたちの体制が崩れた。
「…くっ!!」
「…そして分かりにくいんだけど、接近攻撃にはパターンがあって…攻略方法は接近戦が得意なジョブが足払いをして攻撃を止める。」
園田が説明している中、戦闘はどんどん進んでいく。
「足払いをした後は、敵を空中に上げるスキル…俺の場合はモンクっていうジョブを選んだから『蹴り上げ』ってスキルを使うんだけど…。」
そう言っている間に漠はしゃがんだ体制のまま、かまいたちを蹴り上げると、かまいたちは宙に舞った。
「宙に浮いている間、敵は攻撃が出来ないんだ。その間に遠距離タイプのジョブ…魔法使いや弓使い、あとはガンマーって呼ばれる銃使いが一斉攻撃をするんだ。」
園田の説明に漠は頷くと、天井近くまで飛ばされたかまいたちを見上げた。
「この距離なら、半径五十メートル以内だよね?」
「…ま…まさか…私の攻撃パターンを見るために…?!」
余裕の笑みから一変、驚愕した表情を浮かべたかまいたちに対して漠はニヤリと笑うと銃の標準をかまいたちに合わせた。
「…く…くそーーーー!!!!」
(パンッ!)
かまいたちの叫ぶ声と共に、乾いた銃声が響くと、かまいたちはドサリッと鈍い音を立てて落下した。漠はぐたりとした姿のかまいたちを見下ろすと、いつものように緩く笑った。
「ゲーマーをなめんなよ?」
そう言い残し、かまいたちの眉間にもう一発、とどめの銃弾を撃ち込んだ。




