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夢占い亭 霞の館  作者: ゆう
第三夢
20/37

~夢の中で鬼ごっこ9~

「んーと、ここ、どこ?」


美緒の夢の中に入った漠は辺りを見渡す。視界いっぱいに広がる木々は生い茂り、草花が風でなびいている。ここが森の中だという事は分かるが、それ以外の情報は何もない。


「分かりません…。とにかく美緒さんを探さないと話になりません。」


有村も辺りを見渡して漠にそう言うと、二人は舗装されていない道をとりあえず歩いた。

太陽は厚い雲に隠れていて薄暗く、どこをどう歩いているかも分からない。

その上、太陽が見えないせいで方角さえも分からず、歩いているというより、まるで迷子になっているような錯覚さえ覚える。


しばらくそんな不安を抱えたまま進んでいると、白いワンピースを着ている少女の後ろ姿が見えた。


「あー、美緒ちゃん見っけ。」


「美緒さん!ご無事で良かった…。」


漠達は急いで駆け寄ると、声が聞こえた美緒も振り返り、漠達を見た。


「お兄ちゃん、お姉ちゃん、誰ー?」


見知らぬ二人を見て人差し指を咥える美緒の姿は保育園児か、せいぜい小学一年生にしか見えない。

病室では分からなかったが、目はクリクリッと愛らしく、子供ながらの好奇心旺盛な瞳をしていた。

現実世界では痩せ細っていたが、夢の中の美緒は、子供らしく、ふっくらとした印象を持つ。


「んーとね、僕は漠っていうのー。よろしくねー。」


漠は美緒の目線に合うようにしゃがみ込むと、自己紹介をした。


「それで、こっちのお姉ちゃんは、ありむーって言うんだよー?」


しゃがみ込んだまま、漠は後ろにいる有村を紹介する。…が、有村は漠の紹介の仕方が自分の呼ばれたくない呼び方で紹介をする。


「…漠さ…うん、ありむー…だ、よー?


「漠ちゃんに、ありむーちゃんだね!」


幼い少女の前で怒るのもいかがなものか、と判断したのか、グッと堪えた。そんな有村に無邪気に笑う美緒を見て、もう何でもいいと有村は無理矢理ニコッと笑った。


「それでねー、お兄ちゃん達は、悪い人をやっつけに来たんだー。ねぇ、美緒ちゃん、悪い人、知らなーい?」


そのまま漠は美緒に尋ねると、美緒は不思議そうな顔をする。


「んーーと、悪い人なんて、いないよーー?今、美緒ね、パパとママと鬼ごっこしてるのー。」


そう言って美緒はまたニコッと笑う。そっかー、と言って漠も笑うが、漠は後ろを振り返り有村を見ると、有村も小さく頷いた。おそらく、この悪夢を根元である睡魔は美緒の父親と母親の姿をしていると判断したのだ。


すると、どこからともなく声が響き渡る。


『美緒ちゃん、その人は、私達を食べようとする、悪い人なのよ?』


この声は聞き覚えがある。先ほど病室にいた母親の声だ。


『そうだぞ、だから美緒、鬼ごっこの鬼は、そのお兄さん達だ。早く逃げないと美緒、食べられちゃうぞー。』


今度は男性の声がした。おそらくではあるが、口ぶりから考えて美緒の父親だろう。


「やだ…!美緒、逃げる…!!」


「あ、待って…。」


数歩後ずさった美緒は、漠の声に耳を貸さずに二人に背を向け一目散に駆け出すと、その姿は見る見るうちに森へと消えていった。


しばらく呆然とした後、漠は立ち上がると頭を掻いた。


「んー…と、参ったなぁ…。」


「漠さん…何を呑気に言ってるんですか。」


有村は呆れた顔をすると、漠は空を見て…呟く。


「こりゃあ…厄介な案件かもねー。」


そう言って漠達は、とりあえず美緒が走っていった方向に向かって走り出した。


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