~夢の中で鬼ごっこ10~
美緒が駆けて行った道を漠達は辿って走る。森の道は草花で覆い茂っていて足が取られ、思うように走れない。
そんな中、有村は俯きながら漠に話しかけた。
「漠さん…睡魔は…おそらく美緒さんの…。」
「んー、そうだね、睡魔は、美緒ちゃんのパパとママの姿をしてるだろーねー。」
有村の言葉を引き継ぐように漠は答える。
睡魔が美緒の両親の姿をしている…と、いう事は、美緒に両親と対峙する姿を見せてしまうだろう。
それを気兼ねた有村の声は次第に小さくなり、そして萎んでいってしまった。
「まぁ、かと言って、睡魔を放ってはおけないからねー。」
「そう…ですね。」
漠の言う事はもっともである。有村は無理矢理に納得すると、頭を振って気持ちを切り替えた。
「そう言えば…漠さん。」
「んー?」
「美緒さんが逃げる前、何故すぐにでも捕まえなかったんですか?」
有村は素朴な疑問を漠にぶつけた。有村の疑問はもっともだ。
逃げる前に美緒を捕まえていたら、今こうやって追いかける必要なんてない。
「ん?んー。」
走りながら漠は、先ほどから変わらず顎に手を当てる。
「えっとねー、ほら、美緒ちゃんってまだ子供でしょー?んで、もし不安になったら誰に助けを求めると思うー?」
「…!そうか!」
漠の問いかけに有村も気づいたのか、ハッとした顔をして漠を見る。
漠はゆっくり頷くと、有村の答えを待った。
「不安になったら…美緒さんは両親…つまり睡魔のところへ向かいますね…!」
「ピンポーン。そー言う事ー。」
漠は有村の答えに満足そうに笑うと、美緒が向かったであろう僅かな足跡を見ながら追いかける。
(あんなに何も考えてなさそうな人なのに…この人は…。)
有村は、ここを曲がってー、と、独り言を呟く漠の横顔を見て感心した。
いつもは能天気な漠ではあるが、睡魔のあの言葉、美緒の反応、行動だけで瞬時に考え、そして最良の判断をしたのだ。のんびりしているようでいて、漠という男は、なかなかの切れ者の策士である。
しばらく走っていると、代わり映えしない景色に変化があった。
前方に何か建物らしきものが見えたのだ。
「あれは…?」
「コテージ…かなぁ?」
森の一角の木を切り、開放感のある空間が目の前に現れる。
切った木で建てたであろうコテージに、美緒が入っていく姿を確認すると漠達は止まる。
漠は額を拭い、深呼吸をすると有村を見た。有村も漠を見て無言で頷くと『夢装神』と呼ばれる拳銃に姿を変えると、漠はゆっくりとコテージに近づくと戦闘態勢を取ったのだった。




