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婚約破棄されて前世の記憶を取り戻したので……美味しいお酒を造ります!  作者: しんこせい


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焼酎

あとがきに大切なお知らせがあります!

ぜひ最後までご覧になってください!


 コップに移し、三人は試飲を始めることにした。


「ではまずは香りから……うっ!?」


「かなりキツいですね……なるほど、度数が高いとこうなるのか……」


 香りを嗅いだバルボアはその刺激臭に鼻を押さえ、醸造でキツい香りに慣れているエッカは少し距離を離してから、ノージングをしてふむふむと頷いていた。

 アナスタジアも二人に続いて香りを嗅いでみると……


「んんっ!!」


 つんとするアルコールの香りに、蒸留されたもろみ由来の甘やかな香り、そしてその奥にある麦本来の香ばしさ。

 香りは彼女が前世で飲んでいた麦焼酎そのものだった。


「それじゃあ、焼酎の作成を祝して……」


「「乾杯!!」」


 恐れ知らずのバルボアが、普段ビールを飲むようにぐいっと一気に飲み干した。


「ごほっ!?」


 そしてその刺激に驚き、噎せはじめる。

 だが口の中にある焼酎を一滴でも残してなるものかと、口を引き結んでいた。


「強い……きついですね、こんなにキツいお酒を飲むのは初めてだ……だがたしかに奥の方に麦由来の香ばしさがあるような……」


「そうね、単式蒸留器を使ってるから、なるべく香味成分は残せるようになってるはず。サツマイモやライ麦なんかを使えば、同じ工程でも味は全然違う物になるはずよ」


 アナスタジアがゆっくりとグラスを傾けると、口の中に強い刺激がやってくる。

 度数としては二十度は超えているだろう、二十度以上二十五度未満といったところだろうか。


 久しぶりの刺激に思わずむせ返りそうになるのを、アナスタジアはグッとこらえた。

 口の中で揉めば、アルコールの刺激は徐々に穏やかになっていき、素材由来の甘さが顔を出してくる。


「ああ、美味しい……」


 懐かしい蒸留酒の香りと味。

 乳酸菌飲料のような甘やかな香り立ちと、素材由来の甘さと香ばしさ。

 苦みはほとんどなく、余韻には甘みが残る。


 アルコール好きというのは、度数が高ければ高いほど美味いと感じてしまう罪な生き物なのだ。


 二口三口と飲んでいくと、身体の温度が上がっていくのがわかる。

 焼酎が食道を通っていくのがわかり、その懐かしい刺激に思わず笑みがこぼれた。


「これであればわしらドワーフも、それほど量を飲まずとも酔えるかもしれないな」


「たしかにこれだけアルコールが高いのなら、一度で飲む量は少なくなる……瓶の大きさをいくつかに分けて販売するのがいいかもしれないですね」


 エッカの言葉は、アナスタジアは前世でも似たような物があったなと思い出す。

 たしかに彼が言っているように、焼酎はワインのように一度で一本を飲み干すようなお酒ではない。


 そのため前世では焼飲みきりサイズのカップ焼酎やハーフボトルで販売されていたり、あるいはしばらくの間楽しめるように大容量のサイズなどが販売されていた。


「そうね、これはどちらかといえばストレートよりも別の飲み方で飲んだ方が流行りやすいと思うわ」


「別の飲み方……ですか?」


「ええ、まずはロックね」


 ロックとはオンザロック……つまりはグラスの中に氷を入れる飲み方である。

 蒸留酒の一般的な楽しみ方の一つだ。


「徐々に氷が溶け出していくことで、違う顔が見えてくるようになる……その変化を楽しんでいく飲み方になるわ」


「なるほど、たしかに水が入ったことで味が変わりました。それに……冷やされることで、ビターさが増したような気がします」


 ロックは変化を楽しむ飲み方だ。

 蒸留酒は氷によって冷やされることでその味わいが大きく変わる。


 甘さが奥に引っ込み、奥にあった苦みや酸味などが前に出てくるようになるのだ。

 そして氷は徐々に溶けていき、その水が混じり合うことで飲みやすくなっていく。


 言ってしまえばロックは時間経過で水が足されていく水割りのようなものだ。


 実際に自分のいい配分を見つけることができたら、次はロックではなく水割りでその割合から飲み始めてもいい。


「これならするすると飲めてしまうな……ビールやワインともまた違う、不思議な味わいだ」


 一杯目を飲みきったバルボアがおかわりを注ぐ。

 次は氷を取って水割りで飲んでもらう。


「こちらの方が本来の味がわかりやすいので、わしは好きだな」


「水割りにロックですか……」


「ええ、蒸留酒はどうしても度数が高いからね。皆に親しんでもらうためには、割り物をして飲んだりする方が流行りやすいと思うわ。いっそのこと割り物自体を売りに出した方が市民権は得られるかも。まあこれはまだ先の話だけど」


 日本でも居酒屋に行って焼酎を頼む人はそれほど多くなかったが、緑茶ハイやウーロンハイなどは飲む人が多かった。


 せっかくならいろいろな形で飲んでみましょうと、アナスタジアは亜空間から紅茶を取り出して焼酎へと入れ、紅茶ハイを作ってみる。


「あまりクセがないから、好きな物で割れるのが良いところなのよね。二人は何か割りたいものはある?」


「わしはビールで割って度数の高いビールが飲みたい!」


「そうしたら自分は甘い物で割っていただいてもいいでしょうか。苦みや酸味以外で勝負できれば、既存の商品との差別化に繋がるかと」

新作の短編を書きました!

めちゃくちゃ気合い入れて書きましたので、↓のリンクからぜひ応援よろしくお願いします!

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