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婚約破棄されて前世の記憶を取り戻したので……美味しいお酒を造ります!  作者: しんこせい


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順応

あとがきに大切なお知らせがあります!

ぜひ最後までご覧になってください!


 アナスタジアがドスンとお酒を出すと、ドワーフ達は少し驚いてから破顔し、そのまま樽を持ち上げた。

 ドワーフの体躯はアナスタジアより一回りは低い。


 それでも樽を抱える彼らの足取りはたしかなもので、その筋肉が見せかけのものではないということはすぐにわかった。


「とりあえずついてくるといい」


「ああ、酒をもらったのなら皆で飲まなければ損だからな」


 酒をもらえて嬉しかったのか、ドワーフ達はアナスタジアの質問に上機嫌に答えてくれた。


 基本的にドワーフ達が暮らすのは、山にほど近いところの山間の集落や山の中に掘り進めて造った洞穴などらしい。

 彼らはこの鉱山の中に自分達で洞穴を掘り進めていき、その中で暮らしているのだとか。


 ドワーフは基本狩猟生活を行っており、彼らは山に出現する魔物などを狩って暮らしているらしい。


 縄文時代の狩猟採集は常に飢餓と共に在ったという話だが、少なくとも目の前のドワーフ達にそのような様子はない。


 魔物がいるおかげで、こちらの世界の住民達は食料には比較的困らずに済んでいるようだ。


 鉱山の中に張り巡らされている道を、ドワーフ達は迷う様子もなくすいすいと進んでいく。


 途中ではぐれたりしたら絶対に戻れない自信があったので、アナスタジアは必死になって彼らについていった。


 そのまま進んでいった先には広間があり、そこでは女性のドワーフ達が椅子に腰掛けながら楽しそうに会話に華を咲かせていた。


 ドワーフの女性は男達のように髭もじゃということはなく、くりくりっとした目に同じくらいの身長ということもあり、全体的にひどく幼い見た目をしている。


 こういうのたしか、合法ロリって言うのよね……などと思っていると、女性達に声をかけられて急いでやってきたらしい、上半身裸の一人のドワーフが飛び出してきた。


「バルボアよ、客人を連れてきたぞ。我らと酒の席を持ちたいそうだ」


「酒か! どんな豪傑が……っとおや、これは珍しい」


 その体躯はただでさえ筋肉質なドワーフ達の中でもとりわけてたくましく、そして胸の辺りまで立派なおひげを生やしている。


 どうやらバルボアと呼ばれている彼が、このドワーフ達を取り纏めるリーダーの男らしい。


 筋肉と髭がドワーフの男らしさの基準なのかしら……とアナスタジアは文化の違いに若干戸惑いながらも、毅然と胸を張って挨拶をする。


「どうもこんにちは、私の名前はアナスタジアよ」


「歓迎しようアナスタジア。共に酒を酌み交わせば。我らは同じ同胞だ。まあ……わしらはなまなかなものでは納得せんがな」


「安心して、失望はさせないから」


「ほぅ……?」


 挑戦的な物言いのアナスタジアに、バルボアがにやりと笑う。

 面白いとばかりの表情を浮かべる彼の横に、ドワーフ達が運んできた樽を置く。

 さすがに重かったからか汗を掻いているが、運んできた二人はなぜかいい笑顔で額の汗を拭っていた。


 なんだなんだと他のドワーフ達もやってきて、空間が一気に男臭くなる。

 女性陣も気になっているようだが、いきなり人間が来て警戒しているのか後ろの方から様子を窺っていた。


 樽の上に詰めているコルクを抜き取り、中身を救って水晶椀に入れる。

 前世の有名なガラスブランドが手がけるグラスのように光を反射しており、見ているだけで美しい。


 これがドワーフの細工技術……とアナスタジアが一人感心していると、バルボアはそのまま勢いよく水晶椀を傾けた。

 一口でビールを飲みきった彼はぐいっと髭についた泡を拭い取ると……。


「美味い! なんだこのビールは! こっちのも……美味いっ!」


 残っていた『ジーニーエール』の方も一息に飲み干し、グラスを勢いよく掲げた。


「皆も飲んでみるといい! このアナスタジアが提供してくれた絶品のビールをな!!」


「「「うおおおおおおおっっ!!」」」


 バルボアが絶賛したビールに皆が殺到し、樽から注いでいく。

 ビールを飲んだ者達は皆目を見開き、ものすごい勢いで飲み進めたかと思うとおかわりの列に並び始めた。


「なんだこの味は! フルーツでも搾ったのかと思ったぞ!」


「こんなもの一度も飲んだことがないぞ!」


 皆が極上の美酒だと絶賛している様を見ながら、一人亜空間から取り出した『ジーニーエール』を取り出したアナスタジアはご満悦であった。


 自分が造ったビールを美味しいと飲んでくれる人達の笑顔を見ていると、アナスタジアまで笑顔になってくる。


 ホッと安堵の息をこぼしていた彼女だったが、何度おかわりしても平気な顔をして再び行列に並び出すドワーフ達を見て、もしかして一樽じゃ足りなかったかも……と追加で出しておくことにした。


 一樽、二樽……ええいっ、好きなだけ飲んでもらいたいから五樽追加で!


「おかわりはいくらでもあるわ! じゃんじゃん飲んじゃって!」


「「「うおおおおおおおおおっっ」」」


『順応が早すぎるのである……』


『アナスタジア、いつの間にか彼らのリーダーになってない?』

好評につき短編の連載版をはじめました!

同じくお酒の楽しいお話ですので、↓のリンクからぜひ御覧になってください!

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