エピローグ
【☆★おしらせ★☆】
あとがきにとても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
公爵領へ続く街道を塞いでいたというサイクロプス達の群れの問題は、無事解決することができた。
クロノスが戦うところを見たのは初めてだったが、彼が本当に強いんだなぁということを改めて再確認できた一幕だった。
やっていたことは正直高次元すぎてさっぱりだったが、あれだけたくさんいた魔物を味方を巻き込むことなく一撃で倒していたので、さすがは大精霊と感心してしまった。
そしてヴェンギル伯爵に報酬として定期的なコーンの輸入をお願いしてから、アナスタジアは足止めを受けることなく公爵領へと再び進み出した。
「ふんふん、ふふっふーん」
『ご機嫌だね、アナスタジア』
「ええ、このながーーーーーーーーーーーーーーーーい馬車旅がようやく終わるんだもの!」
『めちゃくちゃ情感が籠もっているのである……』
およそ二十日ほどの時間をかけて行った馬車の旅。
もう何度もスザクに乗って直接領地に向かいたいと思ったことか。
だが彼女はそれをするのは我慢した。
なぜなら……
(聖女とか呼ばれるの嫌すぎるからね!)
あの伯爵領でのサイクロプスの一件以降、ものすごい速さでこの世界に聖女が降臨したという話が広まり始めているからだ。
実際に農地にいってトウモロコシの粒の大きさや味などを確認していた時間はさほど長くなかったはずなのだが、それから行く先々全てで聖女の話を聞いたので、噂の伝達速度があまりにも速すぎる。
某有名な竜のクエストとは違い、この世界には勇者という者は存在しない。
勇者の代わりに世界を救うのが、聖女と呼ばれる存在だ。
そして『プリンセス・アラモード』において聖女と呼ばれていたのは、当然ながらカーシャである。
本来であれば彼女は在学中にその圧倒的な光魔法の才能で人を助けて聖女として認められていく存在になっていくはずなのだが……
(逆ハールートのせいか、カーシャの名前が全然有名になってないのよね……)
一応あれから軽く調べてはみたのだが、カーシャは新進気鋭の魔道具造り職人として認められてはいるものの、その魔法の才能を特別視されて有力者達から目をかけられたりはしていなかった。
自分の婚約破棄騒ぎのせいでサハラの恋人として結構有名にはなっているものの、結局未だに婚約もしていないようだし……謎は深まるばかりである。
ただ自分が聖女扱いをされることだけは勘弁願いたい。
聖女として認められてしまうとそれに伴っていろいろとイベントが発生したり、教会との関係を持たなければいけなくなったりと、とにかく手間が増える。
一刻も早くお酒造りに取り組みたいアナスタジアからしたら、そんなことをしている暇はないのだ。
だから、名乗ることもなく逃げた。
もし何かあったら、全部カーシャに功績を譲り渡してそっと消えたいというのが正直なところだった。
まあ被害が出ないように一刻も早くとスザクに乗っていった時点で、そんなことは無理なことはわかっているのだが。
これ以上何もせず公爵領に引きこもっていれば、何も問題はないかもしれない。
だが何もせずにいることなど自分にはできないということも、アナスタジアにはわかっていた。
――きっと北部での紛争が始まれば、痛いことも悲しいことも嫌な自分は皆に手を貸してしまうだろう。
なのでなんとかして、聖女にならずにめっちゃ強い精霊と霊獣を飼っている公爵令嬢としてやっていける方策がないか、父に聞いてみるつもりだった。
(それでもお父様ならなんとかできるはず……っ!!)
困った時の父頼み。
きっと帰って事情を聞いたニブルヘイム公爵は、頭を抱えるに違いない。
「アナスタジア様、そろそろ領境を抜けますぜ」
御者の男の言葉を聞き、馬車の外へと顔を出す。
領の境目を示す看板を抜けたところで、アナスタジアはゆっくりと息を吸った。
「ようやく帰って来れたわ……ニブルヘイム公爵領に!」
長い長い王都生活だった。
だが彼女はこうして帰ってきたのだ……故郷である、ニブルヘイム公爵領に。
♢♢♢
東西に長いニブルヘイム領をなおも北進していった先に、領都であるヘルダイムは存在している。
王都と比べるといささか冷える寒冷地帯だが、この寒さまでがアナスタジアには妙に心地よく感じられた。
ヘルダイムの屋敷へと戻ると、既に帰還の報せを受け取っていた両親の姿がそこにはあった。
母のサリーはこちらを見ると、目に涙を溜めながら駆け寄ってくる。
「アナスタジア、お帰りなさい!」
「お母様!」
「よく……よく頑張ったわね! 大丈夫、この街にはあなたの敵は一人もいないから……」
王都であった婚約騒ぎ、それに伴う風評被害。
おそらく母はいろいろな話を聞かされたのだろう。
だがアナスタジアはそんなサリーを抱きしめ返しながら、伏し目がちに笑う。
「大丈夫ですわ、お母様。王都は、そう悪いところではありませんでした。しっかりお金も稼げましたし、お酒も造れましたので」
「そう……強くなったのね、アナスタジア」
「だから言っただろうサリー、アナスタジアはそんなに弱い子ではないと」
ゆっくりと二人の下へ歩いてくるのは、父であるスタチウム・フォン・ニブルヘイム。
既に何度か王都で会っているため、彼はうむと頷いてからアナスタジアの方を見た。
アナスタジアも彼の方を見つめ返しながら、こくりと頷く。
「今日は旅の汚れを落として……明日からさっそく動き出そうと思います。まだこの世界にない新しいお酒……蒸留酒を作るために」
「明日からとは……早いな。もうちょっとゆっくりしてもいいんだぞ?」
「いいんです、早く美味しいお酒が飲みたいですから」
「もうこの子はまったく、誰に似たんだか……」
「そりゃあもちろん、私だろう」
三人は笑いながら、帰還を喜び合った。
――そう、アナスタジアがこの地で作ろうとしているのは蒸留酒。
焼酎、ウイスキー、ジンにウォッカ。
作って飲みたいお酒が、まだまだ沢山ある。
寒冷地帯で材料に事欠かないこの場所であれば、材料は一通り揃う。
そのための交渉もここに来るまでにきちんと終えてきた。
これらの商品が軌道に乗ったら次は更に手を伸ばして、今度は日本酒やラム造りだ。
だが先ばかり見ていては足下を救われる。
まずは一歩一歩、着実に進めよう。
アナスタジアのお酒造りの道は、まだ始まったばかりなのだから――。
読んでくださりありがとうございます!
これにて第一部が終了となります。
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