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鷲尾の提案で、嶋以外のミステリー研の皆も買い出しへ行くことになったのだが。
「すみません、オレは本を読みたいので、遠慮します」
そう言ったのは、湯川だった。
ダイニングにいた鷲尾を含めた五人が彼の方を見た。
「おい、湯川。お前ひとりだけずるいじゃないか!」
中森がそう言った。
「いや、部長だって行かないんだろ?」
「部長は、伴さんたちと台本作りの協力をしなくちゃならないから関係ないだろう」
「外寒いんだろう。オレはしばらくここから出たくないね……」
湯川はそう言うと、席を立ち、廊下の方へ向かう。
「おい、どこ行くんだよ!」と、中森は大声を出す。
湯川は振り返り、「トイレだよ……」と言ってそのまま向こうへ行く。
「まあ、湯川くんはいいんじゃない?」
それから、桜庭が呆れるように言った。
「ああ、そうだな。アイツだけ飯抜きだな」
中森が苦笑する。
「ねえ、中森くん。それはいくらなんでも可哀想よ……」と、加賀谷が口を挟む。
「冗談だって……」と、中森は言った。
という訳で、嶋と湯川以外の三人も買い出しへ行くことになった。
「三人ともすまないね。よろしく」
嶋が申し訳なさそうに言った。
「いいのよ別に。私たち、暇だしね」
加賀谷が嶋に言う。
「鷲尾さん、何時ごろ行きます?」
それから、加賀谷が鷲尾に訊いた。
鷲尾は壁にある時計を見る。
「そしたら、十五分後に行きましょうか」と、鷲尾が言う。
加賀谷も時計を見た。壁の時計は三時十五分を指していた。
「三時半ですね。オーケーです」と、加賀谷は言った。
「俺たちも三時半からやろう」と、伴が嶋と箕輪を見て言った。二人は頷いた。
三時半になり、加賀谷、中森、桜庭、小山内、大門、そして、鷲尾の六人でスーパーへ買い出しへ向かった。伴、箕輪、嶋の三人は二階で作業をすることにした。
外を出ると、先ほどまで降っていた雪は止んでいた。
「はあ、寒い……」と、大門は大げさに振る舞う。
「スーパーまでは歩いて行くのかい?」
それから、小山内がそう訊いた。
「そうよ。だって、車なんてないじゃない?」と、鷲尾が言う。
「歩いてどのくらいだ?」と、大門が訊く。
鷲尾はスマホの地図を見て、スーパーまでの道のりを調べる。それから、「二十分くらいかな」と、彼女は言った。
「二十分!? まあまあ距離あるなあ……」と、大門がぶつくさ言う。
「それでも近い方じゃないかな? ほら、そんなこと言ってないで行きましょう」
鷲尾がそう言って、地図を見ながら道なりを歩いて行く。彼女の後ろに続くように大門や小山内は付いて行く。加賀谷、中森、桜庭の三人も彼らの後に続いた。
二十分という時間を歩いて、六人はようやく目的のスーパーへと辿り着いた。
中へ入ると、暖房が効いていて暖かかった。年末ということもあるからか、スーパーはやや多くの買い物客で賑わっていた。
「何食べる?」と、大門が陳列棚を見ながら言った。
「何か食べたい物があったら言って」と、鷲尾が言う。
「せっかく礼文に来たから、海鮮系とか?」
「ああ、それもいいね」
「焼肉とかどう?」と、小山内が提案する。
「いいけど、金足りるか?」と、大門が彼に訊き返す。
「ああ、そっか。じゃあ、焼肉はやめる?」と、小山内が皆に訊いた。
加賀谷と桜庭が頷いた。
「むしろ、皆で食べられるものがいいかもしれないね」と、鷲尾が言った。
「皆で食べられるもの?」と、小山内が訊く。
「そう。例えば、カレーとかシチューとか」と、鷲尾が言う。
「いいね。カレーとかシチューなら温まるし」と、加賀谷が言う。
「うん。後、焼きそばなんかどう?」
桜庭がそう提案する。
「あ、焼きそばもいいね」と、鷲尾は笑顔で言う。
「そういや、俺ら一月の四日の朝まであの箱で缶詰状態だったなあ。となると、少なくとも五日分の食材は確保しておかなきゃなぁ……」
ふと、中森が思い出して言った。
「そうですね」と、鷲尾が頷く。「それじゃあ、メニューはカレーとシチューと焼きそばは作るとして、あと何にしよう?」
「鍋は?」と、大門が言った。
「あー、鍋もいいね!」と、鷲尾が言う。「野菜とお肉とスープの素を買えば簡単に作れるね」
「あと、オムライスはどうですか?」と、桜庭が言った。
「あー、いいね」と、加賀谷が頷く。
「そうしようか! あとは、飲み物とかお酒も買っておきましょう」
鷲尾がそう言うと、皆が頷く。
六人は手分けしてそれぞれの料理の食材や調味料を探し、かごに入れた。それと、朝食や昼食用のフランスパンを二本と卵を三パック。パックのご飯も買った。それから、ビールやハイボール、ワインなどのお酒と、お茶やジュース、お菓子も買った。
会計は鷲尾と加賀谷の二人が支払った。
「ペンションに戻ったら、徴収しますね」と、鷲尾が言った。皆が頷く。
買い物を終え、六人は来た道を辿り、ペンションへ戻った。そこへ着いたのは、午後四時半を過ぎていた。
加賀谷、桜庭、鷲尾の女性陣三人で冷蔵庫に食材をしまう。男性陣は疲れたらしく、手を洗ってからリビングのソファに座ったり、寝転んだりしていた。
「お金、一人、二千円です」と、加賀谷が言った。
「そしたら、私と加賀谷さんに千円ずつちょうだいね」と、鷲尾が言って皆からお金を徴収する。
それぞれが二階から財布を持って来て、二人に千円ずつ支払った。
「夕飯は何時にする?」
大門が皆に聞こえる声で訊く。
「六時か七時頃でいいんじゃない?」と、鷲尾が言う。
「うん、そのくらいでいいよ」と、小山内が言った。
「分かった。五時になったら、私と加賀谷さんと桜庭さんの三人で作るね」と、鷲尾は笑顔で言った。
「オー、サンキュー」と、大門が鷲尾に言った。
「それまでちょっと私たちはお茶にでもしようね」
鷲尾がにこりと笑って、加賀谷と桜庭に言った。二人とも笑顔で頷いた。
「それじゃあ、オレらはその間、ゲームでもしないかい?」
それから、大門が小山内と中森に言った。
「ああ、いいね」と、小山内が頷く。
「俺もやりたいと思ってた」と、中森も言った。
「これって、ゲームキューブだよな?」
大門がそのゲーム機を見て二人に訊いた。
「そうだね。こっちはプレステみたいだよ!」
それから、小山内が別のゲーム機を指して言う。
「本当だ! どっちも懐かしい!」と、中森が感嘆する。
「どっちも『平成』のゲーム機だよね……」と、小山内が嬉しそうに言う。
「ああ、そうだな」
「だね」
大門と中森が思い出して言う。
「それで、何やる?」
大門がゲームソフトを漁りながら二人に訊く。
「これなんかどう?」
小山内がゲームソフトを一つ取り、それを二人に見せる。
「スマブラか!」
大門はその格闘技のゲームを見て嬉しくなる。中森もそのゲームを知っていた。
「いいねー! それにしよう!」
それから、三人はそのゲームで遊び始める。
「あ、そうだ!」
ふと、中森が思い出して言う。「このゲームって、確か四人まで出来たよね?」
「そうだね」と、大門は頷く。
「もう一人。湯川も誘っていい?」
中森が二人にそう訊くと、「あ、別に構わないよ」と、大門が言った。小山内も頷く。
「ありがとう。そしたら、ちょっと声掛けてくるね」
中森はそう言い、立ち上がる。
湯川はソファで寝ていた。中森たちが買い物へ行く前、彼はそこで本を読んでいたようだが、どうやらそのまま寝落ちしたらしい。起こすのはちょっと可哀想かなと思ったが、中森は一度、彼に声を掛けてみることにした。
「湯川、一緒にゲームしないかい?」
中森が声を掛けると、湯川は身体を動かした。しばらくして、彼は目を覚ました。
「ん? ……ゲーム?」
寝起きの声で湯川は言う。「……やろうかな」
それから、彼は欠伸をしてソファから上体を起こした。
湯川が起きた後、四人でそのゲームをやった。久々にやるそのゲームで大門たち四人は楽しんでいた。




