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「あーあ。湯川、お前のせいだぞ……」
中森が湯川を見て言う。
「オレのせい? いやいや、オレはただ『面白くない』と言っただけだよ」
湯川は苦笑して言う。湯川は話を続ける。
「別に所々は面白かったよ。もう少し変えれば、面白くなるとオレは思ったんだ」
「そう」と、中森は頷く。「だったら、最初からそう言えば良かったじゃないか」
「そのつもりだったよ」と、湯川は言う。「でも、まさか演劇サークルのメンバーが乗り気じゃなかったみたいだからね……」
湯川はそう言って黙る。
先ほどの彼らの様子だと、映画の撮影を続行することはできないだろうなと嶋たちは思った。
「どうにかして説得しないと」
嶋がポツリと言う。
「一体どうやって説得するんだよ?」
中森が言った。
「ねえ、湯川くん」
切り出したのは、加賀谷である。「面白くなかったって言ってたけど、具体的にどこが面白くなかったの?」と、彼女は湯川に訊いた。
湯川はその映画の面白くなかった点を話した。
「なるほどねえ……」と、加賀谷が頷いた。
「そう言われてみれば、そうかも……」と、中森が納得して言う。
「もしオレだったら、こうするかな……」
そう言って、湯川は代案を話す。
「あー、それいいね!」
加賀谷は嬉しそうに言った。
「確かにその方が面白み増すね」と、中森も笑顔で言う。
桜庭と嶋も首を縦に振る。
「そしたらさ、今の話を伴さんに話してみたら?」
それから、加賀谷がそう提案した。
「大丈夫かな?」
桜庭が心配そうに言う。
「僕はそれでもいいけど」と、湯川が言う。
「まあ、話してみるだけなら、なんとでも」と、中森が言った。
「で、誰が話すの?」
それから、嶋が皆に訊くと、全員が彼を指さした。
「え、僕が?」
嶋は戸惑ったが、「部長」であるので仕方ないかと彼は思った。
「分かった。話はしてみるよ」
嶋がそう言うと、「よ! さすが部長!」と、中森が彼を囃し立てた。他の皆がくすくすと笑った。
*
伴はリビングのソファで一人考え事をしていた。
湯川というミステリー研のメンバーに「面白くない」と言われた挙句、サークルのメンバーからもこの作品を批判された彼は気持ちが落ち込んでいた。
まさかあんな風に言われると思ってもいなかった。いや、少しは考えていた節が伴にはあった。
普段、作品の脚本は箕輪が書いてくれている。彼女の各脚本はピカイチだと伴は思っていた。他のメンバーも彼女の脚本を褒めているのだった。特に、彼女の書く「恋愛モノ」は良い。
しかし、今回のミステリーの脚本は伴が書いたものだった。伴はミステリーが好きである。だから、今回の合宿でミステリーを演ろうと考えた。自分で脚本を書き、メンバーたちに読んでもらった。最初、皆がビックリしていた。実は、演劇サークルでミステリーをやるのは初めてだったからだ。皆、初めてのモノに少し抵抗はあったのだろう。
あんなに言われるのなら、最初からやめればよかったのかもしれない。けれど、伴はどうしてもこのメンバーでミステリーを演ってみたかった。だから、伴は自分の気持ちをメンバーに伝えた。正直、皆、伴の話に気圧されたに違いない。メンバーたちは首を縦に振ってくれた。
しかし今――――。
「伴さん、伴さん……あの……」
そう考えていると、誰かに声を掛けられていたことに伴は気付いた。声を掛けてきたのは、ミステリー研究会部長の嶋だった。
「あ、ゴメン」と、伴は返事をする。
「あのですね、ちょっとお話がありまして……」
嶋はそう言って口を開く。
「先ほどはうちのメンバーが失礼なことを言ってご迷惑をおかけしました……。それであのー」
「何?」
「さっき湯川が面白くないと言ったのは、『シナリオの部分』らしいのです。もう少し雰囲気を変えれば、もっと面白い作品になると彼は言いたかったそうです……」
「そう……。具体的には?」
伴にそう訊かれ、嶋は先ほど湯川が指摘した点をいくつか説明する。すると、伴は表情を変えた。
「なるほど! それは盲点だったな……」
伴は感心して言う。
「はい。だから、そこを変更してみたら良いと思うんです」
嶋がそう言うと、「うんうん」と、伴は頷いた。
「いや、さすがミステリー研だよ!」
それから、伴は笑顔でそう言った。
「よし! それで行こう!」と、伴は意気込んで言う。「……っていっても、今は無理だな」
それからすぐに伴は現状を思い出す。メンバーたちの何人かが撮影に協力してくれない状況にあったからだ。
「うーん、しばらくは無理かな……。嶋くん、提案してくれたところ申し訳ないんだけど」
そう言って、伴はソファに背中を凭れかけた。
「もしあれなら、一つ案が……」
嶋はそう言ってにやりと笑う。
「ん? 何だい?」
伴は目をぱちくりさせて訊く。
「うちのメンバーで良ければ、代役を引き受けますよ」と、嶋は言う。
「ホントに?」
伴がビックリして訊くと、嶋は頷いた。
「役者が増えても構わないのなら、こちらも手伝いますよ」
嶋がそう言うと、「それは助かる!」と、伴が笑顔で言った。
「正直、無理言ってここに滞在させてもらっている訳ですから……。僕たちミステリー研に出来ることってそのくらいしかないですから」
嶋が笑ってそう話すと、「いやいや」と、伴は手を振る。
「でも、撮影に協力してくれるならありがたいし、その方が『面白い』かも」
伴はそう言って笑う。
「それじゃあ、交渉成立ということで」
嶋がにっこり笑ってそう言うと、「よろしく」と、伴が笑顔で握手した。




