26
壁の時計は午後八時を過ぎていた。
「それじゃあ、俺はもう寝ようかな」
中森が言って、ソファから立ち上がる。
「私もそうする」と、加賀谷も言った。
「おやすみ」
中森と加賀谷がそう言って、二階へ上がって行く。その時、中森は部屋で飲もうとお酒とお菓子と調味料を持って行く。
「おやすみ」と、嶋、湯川、桜庭が二人に言う。
「あたし、お風呂に入っていい?」
それから、桜庭が嶋たちに訊いた。
「どうぞ」と、湯川が勧める。「いいよ」と、嶋も言った。
桜庭が先にお風呂に入った。それから今度、湯川がお風呂へ入る。
嶋は一度、二階へ上がり着替えを取りに部屋へ行った。一階へ降り、湯川が出た後、嶋もお風呂に入った。
お風呂から出た後、嶋はリビングへ行く。そこにまだ桜庭と湯川がいた。
「そろそろ僕たちも寝ようか」
嶋が言うと、二人は頷いた。
「寝るときは必ず鍵を掛けること!」と、嶋は念押しする。二人は頷く。
「じゃあ、おやすみ」
桜庭が言って、二階へ上がる。
「おやすみ」と嶋と湯川が彼女に言って、二人も二階へ上がった。
桜庭は部屋に入ってすぐに鍵を掛けた。これで少しは安心できた。
「ねえ、志歩、起きてる?」
桜庭が加賀谷に声を掛け、彼女の方を見る。
見ると、彼女はベッドで横たわり血まみれになっていた。
「え……」
桜庭は一瞬、訳が分からなかった。
「キャーーーー!!!!」
それからすぐに彼女は悲鳴を上げた。
*
嶋と湯川が二階の廊下を歩いていると、どこかの部屋で悲鳴が聞こえた。すぐにそれが桜庭の声だと分かった。
嶋たちは急いで彼女の部屋の前まで行く。
「桜庭さん!?」
「どうした??」
嶋と湯川が扉越しに訊いた。ややあって、鍵が開く音がし、扉が開いた。
「志歩が……殺されてるの!?」
桜庭が目を丸くして言った。
「え!? ウソ……」
嶋も目を丸くする。
「マジか……」
湯川もビックリして言う。
「ねえ……どうしよう……」
それから、桜庭が泣きそうになりながら言った。
「あ」
嶋がハッとする。中森は大丈夫だろうか?
嶋は急いで中森のいる部屋へ向かう。湯川と桜庭もその後を追う。
「中森!!」
嶋が扉をドンドンと叩く。しかし、中から返事がない……。それから、嶋はドアノブを回してみる。すると、その扉が開いた。
嫌な予感がしながらも、嶋はゆっくりとその扉を開けた。それから、嶋は中へ入る。湯川や桜庭もその後入る。
「なっ!?」
部屋へ入るなり、三人はその光景に驚愕した。
中森は自分のベッドで血まみれになって倒れていた。
「キャーーーー!!!!」
中森のその姿を見て、再び桜庭が叫んだ。
「…………」
嶋と湯川はその状況に言葉を失ってしまう。
少しして、伴、鷲尾、箕輪の三人が部屋から出てきてこちらへやって来る。
「どうしたんだ?」
伴が部屋の前でそう訊いた。鷲尾、箕輪も部屋を覗く。
「中森と加賀谷が、殺されたみたいなんです……」
嶋がそう報告すると、「え?」と、伴は目を丸くした。
「ヤダ……」
「ウソでしょ……」
それから、箕輪と鷲尾も驚いて言う。
「もうやめてよ!!」
箕輪が大声を出して言う。皆が彼女を見た。
「犯人はもう名乗りなさいよ!!」
それから、彼女が怒るように言った。
「ちょっと……環奈!」
鷲尾が箕輪をなだめるように言う。
「もうこんなところヤダ!! 早くウチ帰りたい!!」と、箕輪は癇癪を起こして言う。
と思ったら、今度は「あ……次はウチの番だわ……。無理無理……」と言って箕輪は小走りで自室へ入った。それから、内側で鍵を掛ける音が聞こえた。
「私かも……」
その後、鷲尾も自分が殺されると思い、雄たけびを上げながら走って自分の部屋へ戻ってしまった。
*
Xは驚きを隠せなかった。Xの知らぬ間に新たな殺人が起きたからである。
大門亮太朗と小山内充を殺害した犯人は、Xであった。
しかし、加賀谷志歩と中森信太朗の二人をXは殺害していない!
これは一体どういうことなのか。Xは不思議に思った。
X以外の誰か(仮にここで犯人Yとしよう)が、二人を殺害したに違いないのだが……。一体誰が何のために二人を殺したのだろうか。
ふと、Xは気付く。もしかすると、YはXに「濡れ衣」を着させようとしているのではないか。だとすれば、最悪だ……。
一体誰の仕業なのか? 早くそいつを見つけなければならない!
いや、待てよ。
もういっそこのまま全員始末してしまおうではないか!!
Xはカラオケ室から持ち出したその(大門の)ライターをいじりながらにやりと笑った。




