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 五時半頃、加賀谷と桜庭は夕飯の支度を始めた。

 夕飯は冷蔵庫に残っている野菜とお肉と寄せ鍋のスープで寄せ鍋を作ることにした。

 ちょうど六時に夕飯が出来上がったので、二人は皆を呼ぶ。嶋ら三人はすぐに下へ降りて来た。しかし、伴ら三人は降りてこなかった。気になって、加賀谷と桜庭は二階へ上がった。

 加賀谷が鷲尾の部屋の扉をノックする。

「鷲尾さん、夕飯出来ましたよ」

 加賀谷がそう声を掛けると、扉越しに鷲尾が返事する。

「ゴメンナサイ。今は食欲がなくて……」

「分かりました……」と、加賀谷は言う。

 それから今度、加賀谷は箕輪の部屋をノックし、声を掛ける。

「後で食べるから、残しておいて!」と、箕輪は扉越しに言った。

「分かりました」と、加賀谷は返事する。

 その後、加賀谷たちは伴の部屋をノックした。

「伴さん、夕飯出来ましたよ」

 加賀谷がそう声を掛けると、鍵を開ける音がした。それから扉が開き、伴が出てきた。

 加賀谷たちはビックリした。

「今行くよ」と、伴は言って扉を閉める。

 加賀谷たち二人が先に降り、その後に伴が降りる。三人はダイニングへ入る。

 それから、ミステリー研の五人と伴の六人で寄せ鍋をつついた。

「鍋だと温まるね……」

 中森が嬉しそうに言う。

「ねー」と、桜庭が相槌を打つ。

「熱い」

 湯川は猫舌なようでお肉をフーフー冷ましながら食べる。

「うまい」と、嶋は肉と野菜を一緒に食べながら言った。

「良かった」と、加賀谷が微笑んで言う。

 伴は無言で食べていた。

「そう言えば、伴さん」

「伴さん、あのー……」

 嶋と加賀谷が口を揃えて言う。伴は二人を交互に見た。

「あ」

「ゴメン」

 と、二人は顔を見合わせて笑う。

「いいよ」と、嶋が加賀谷を先に促す。それから、「先いいよ」と、加賀谷が嶋に譲った。

「それじゃあ……」と、嶋は口を開く。「伴さん、()()()()()()()()()()()んです?」

 嶋がそう伴に訊いた。

「あ、私も同じことを聞きたかったんです!」と、加賀谷が口を挟む。

 伴は咀嚼(そしゃく)していたものを呑み込んでから口を開いた。

「……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだ」と、彼は言った。

「灯油?」と、嶋が訊き返す。

「ほら、あれ」と、伴はリビングにある石油ストーブを箸で指した。全員がストーブに目をやる。

「もうそろそろしたら、灯油が切れると思うよ。もしあれが切れたら、俺たち凍え死んでしまうよ……」

 伴はそう言って苦笑する。

 なるほど、と嶋は納得する。

「そうだったんですね。因みに、灯油はどこに置いたんです?」と、嶋は訊ねる。

「玄関に置いたよ。赤いポリタンクが二つね」と、伴は言った。

「分かりました」と、嶋は頷いた。「あと……」

「あと?」と、伴は嶋を見る。

「一つお願いがありまして……」

「何?」

「もう一度、三人のお部屋を見させてもらえないかと思いまして……」

 嶋がそう言うと、「え? どうして?」と、伴が訊いた。

「事件の捜査というか……。ちょっと探し物をしてて……」と、嶋は話す。

「探し物って?」

「これっていうモノではないんですよ。証拠となるようなものなんですけど。伴さん、箕輪さん、鷲尾さんの三人のお部屋を調べさせてもらいたいので、少しだけ協力して頂けませんか?」

 嶋がそう懇願すると、「分かった」と伴は言った。

「じゃあ、二人にメッセージを送っておくね」

 伴はそう言ってポケットからスマホを取り出し、メッセージアプリで箕輪と鷲尾にメッセージを送ってくれた。しばらくして、二人から了承のメッセージが届いたと伴は言った。

「ありがとうございます」と、嶋は伴にお礼を言う。「そしたら、とりあえず、ご飯を食べ終わってからで。伴さんの部屋から見させてもらいますね」

「うん」と、伴は頷く。

「二人の部屋はその後にします。女子の部屋を見るのは、加賀谷さんと桜庭さんにお願いしたいんだけど、いいかな?」

 それから、嶋が加賀谷ら二人を見て言う。二人ともビックリしたようだが、すぐに頷いてくれた。

「ゴメン、よろしく」と、嶋は二人に言う。「そしたら、二人に後で部屋へ行くことを伝えておいてください」

 それから、嶋は伴にそう言った。

「オーケー」と、伴は言った。彼は箕輪と鷲尾にメッセージを送る。すぐに二人から承諾のメッセージが届いた。


 夕飯を食べ終えた後、六人全員で二階へ上がった。

 まず、伴の部屋を調べることにした。伴が自分の部屋の扉を開けた。彼は中へは入らず、廊下で立ち尽くす。桜庭と加賀谷も彼の横で待つ。

 嶋、中森、湯川の三人が彼の部屋へ入った。嶋ら三人はその部屋をくまなく調べる。しかし、その部屋は特段変わったところやそのようなものはなかった。

「何か見つかったか?」

 伴が廊下から訊く。

「いえ、特には……」と、嶋は答える。

「ふーん。そう」と、伴は言う。

 嶋たちは諦めて伴の部屋を出た。それから今度、鷲尾の部屋の前まで歩いた。嶋が扉をノックする。

「嶋です。鷲尾さん、先程メッセージした通りで今からちょっとお部屋を拝見してもよろしいですか?」

 嶋がそう扉越しに言うと、すぐに扉の内鍵が開く音がした。扉が開いて鷲尾が顔を出した。

「はい……どうぞ……」と、鷲尾が言う。

「失礼します」と、加賀谷が言って中へ入る。その後、桜庭も彼女の後に続いた。

「ねえ、嶋くん。何を探せばいいの?」

 それから、加賀谷が嶋にそう訊く。

「ええっと、犯人が特定できそうなモノ……。例えば、返り血の付いた洋服とか、手袋とか、メガネとか、帽子。それから、犯行に使えそうな小道具。ライターとか……」と、嶋は説明する。

「うん、分かった」と、加賀谷が頷く。桜庭も首を縦に振る。

 それから、加賀谷と桜庭は部屋にあるものを片っ端から見て調べる。

「どうだい?」

 少しして、中森が二人にそう訊いた。

「ううん」と、加賀谷が首を振る。

「そんなようなものは見当たらないよ」と、桜庭も言った。

「そっか」と、嶋は言う。「そしたら、次を当たろう……」

 その後、嶋たちは箕輪の部屋へと向かう。加賀谷が扉をノックした。

「加賀谷です。箕輪さん、今少し中に入ってもいいですか?」

 加賀谷が扉越しにそう訊くと、鍵を開ける音がした。「どうぞ」と、箕輪のか細い声が聞こえた。

「失礼します」と、加賀谷は言ってその扉を開ける。桜庭もその後に続いて入る。

「ちょっと探し物をさせてもらいますね」

 加賀谷はそう言うと、その部屋を物色し始めた。桜庭も同様に探す。

「ないなあ……」と、加賀谷は呟く。その部屋にも嶋が言ったような証拠となるようなものはなかった。

「ないか……」

 廊下にいる嶋が呟くように言った。「分かった。もうおしまいにしよう」

「箕輪さん、後でご飯食べてね」

 それから、加賀谷は微笑んで箕輪に言う。

「うん、ありがとう」と、箕輪は言った。

 嶋たち五人は一階へ降り、リビングのソファに腰掛けた。伴はすでに部屋へ戻っていた。

「何も見つからないなんてな……」

 中森は残念そうに言う。

「これじゃあ、誰が犯人かもまだ特定できそうにないな……」

 湯川も落胆するように言った。

「もしかすると、今夜もまた犯人は動き出すんじゃないのか?」

 それから、中森は呟くように言った。中森の言葉に一同が彼を見る。

「怖いこと言わないでよ」と、加賀谷が嫌そうに言う。

「そうだよ!」と、桜庭も膨れ面で言った。

「多分ね」と、中森は言って苦笑する。

「いや」

 それから、嶋が口を開く。「確実に、犯人はもう一人。下手すると、()()()()()()()()()()()()()()()()()と考えていることだってあり得る……」

「嘘!?」と、加賀谷が驚いて言う。

「そんな……」と、桜庭もビックリする。

 嶋は頷く。「そうならないためにも、早く犯人を特定しなきゃならない!」

 嶋は黙って考える。

(必要がある……あるのだが、一体誰が犯人か……。犯人を特定するために何かいい方法はないか……。

()()()

そうか! その方法があった! 考えろ、考えろ……。うん。この方法ならいける!)

 すぐに嶋はポケットからスマホを取り出した。メッセージアプリを開いてグループチャットにその方法を文にして送る。

 ややあって、他の四人がスマホを見る。嶋から送られてきたそのメッセージを読む。四人はそのメッセージを読むと、ビックリした表情をした。それからすぐに四人は顔を上げ、嶋を見る。嶋も皆の顔を一人一人見た後、笑顔で頷いた。

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