22
「え?」
鷲尾が困惑して言う。「どうしてそうだと思うの?」
それから、彼女が伴にそう訊いた。
「ほら、その方が辻褄が合う」と、伴は言った。
「辻褄って……。もし仮にそうだとして、私たち二人が殺す理由は?」
鷲尾がイラだって伴に訊き返す。
「本当は恨んでいたんじゃないのか? 箕輪は大門のことを。それと、鷲尾は小山内のことを」
伴がにやりと笑って言う。
「私たちがそれぞれを恨んでいたと……」
鷲尾がそう言った後、箕輪と顔を合わせた。それから、「そんな訳ないから」と、鷲尾は言った。
「私は充くんのこと嫌いになってないよ」と、鷲尾は言う。
「ウチだって、亮くんのこと大好きだった……」と、箕輪も打ち明ける。
「そう言う伴くんはどうなの?」
それから、鷲尾が伴にそう訊いた。
「俺? 俺はさっき話した通り、アリバイだってある。小山内や大門と接触することすらなかった。それに別にあいつらを憎むようなこともないよ」
伴はそう話した後、そのまま黙った。
「そう……」
鷲尾はそう呟いて黙る。箕輪も口を閉じた。
「もう結構です。三人のアリバイは分かりました。後は僕たちで考えますから……」
それから、嶋がそう言った。
伴が電子タバコを吸い始めた。箕輪もタバコを吸おうと、玄関の外へ出て行く。
「はあ、なんだかお腹空いたな……」
それから、鷲尾がそう呟いた。時刻は十二時を回っていた。
「あ、お昼にします?」
加賀谷が思い出して言う。
「うん、そうしよう」と、鷲尾は笑顔で言った。
加賀谷と桜庭と鷲尾の三人はお昼ご飯に焼きそばを作った。
ソースの匂いがダイニングやリビングに広がる。
嶋、中森、湯川、伴の男子四人はダイニングで食べることにした。箕輪と鷲尾、加賀谷、桜庭の女子四人はリビングで食べる。
いただきますと皆が手を合わせて、焼きそばを食べる。特に会話もなく、全員が終始無言で食べていた。
「ねえ、由姫」
ふと、箕輪が鷲尾を呼ぶ。
「何?」と、鷲尾は箕輪の方を見る。
「今夜、ウチら別々で寝ない?」
唐突に、箕輪がそう提案した。
「え? どうして?」
鷲尾は箸を止めて箕輪に訊き返す。
「だってほら、ウチらの中に犯人がいるみたいじゃない? だから……」
「え? 私を疑ってる?」
「いや、別に疑ってる訳じゃないよ。でも、心配だからさ……。それにもしウチが犯人だったとしたら、由姫も怖いと思わない?」
「うん……そうだね」と、鷲尾は頷く。「あ、でも、そうしたら一人はどこで寝るの?」
それから、鷲尾はそう訊いた。
「ほら、亮くんたちが寝てた部屋が空いてたでしょ? ちょっと血まみれだけど……」と、箕輪は言った。
「ああ、そっか」と、鷲尾は納得する。「それじゃあ……」
「ウチは今夜からそこで寝るよ」と、箕輪は言った。
「いいけど、そこで寝ても平気なのかな?」と、鷲尾は心配そうに皆を見る。
「ダメなの?」と、箕輪が瞬きして言う。
少しして、湯川が口を開く。
「まあ、本来は殺人現場であるから、そこはそのままにしてもらいたい……というのは本音だけど」
「あー、そっか」と、箕輪は思い出して言う。
「どうする? 部長?」
それから、湯川は嶋に確認して訊く。
嶋は考える。少しして、彼は口を開いた。
「現場をあまりいじらないという前提でなら、あの部屋を使用するのは構わないよ」
嶋がそう言うと、「だそうだ」と、湯川は箕輪を見て言った。
「分かった」と、箕輪は頷く。
「それと、伴さん」と、嶋が伴を呼ぶ。「僕も同じことを望みます」
「心外だな……。俺が犯人だと思われているなんて……」と、伴は嫌な顔をして言う。
「いえ。あくまで自分の身を守るためです」と、嶋は言った。
「まあ、いいさ。そんで、嶋くんはどこで寝るんだい?」
伴にそう訊かれ、嶋は答える。
「中森たちの部屋です」
「え?」
中森が驚いた。「俺らの所に来るの?」
「さすがに女子の部屋には入れないよ……」と、嶋は苦笑する。
「そうだな」と、中森も笑う。
「三人じゃ狭くなるな……」と、湯川が文句を垂らす。
「そこを頼むよ」
嶋が手を合わせて懇願すると、「まあ、しょうがないね」と、湯川が了承した。
「ありがとう」と、嶋はお礼を言う。
「ただ、オレたちのどっちかが犯人だとしても知らねえぞ!」
そう言って、湯川はフフフと笑う。嶋と中森も笑い合った。




