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湯川はポケットからスマホを取り出し、目の前のそれの写真を撮った。
「凶器は、このマイクで間違いないね」
湯川はポツリと言う。
「なるほど。確かに外ならバレないね。雪も降っている訳だからなおさら」と、嶋が言う。
「でも、犯人はどのようにしてこのマイクを処理したんだ?」と、中森が訊く。
「犯行後に、外へ出て雪の中に埋めたんじゃないかな」と、嶋は言う。
「なるほど」と、中森は頷く。
「でも、それだとすぐ誰かに見つかってしまうんじゃない?」と、加賀谷が言った。
「確かに……」と、中森は頷く。
「他に何か方法は……?」
加賀谷がそう言って考える。
「あ!」
それから、桜庭が声を上げる。皆が彼女を見た。「もしかしたら、犯人は部屋の窓からそれを落としたんじゃない?」
「え?」と、中森が驚く。
「ああ、そうか!」と、嶋は感心する。
「きっとそうに違いない」と、湯川が言う。「犯人は相方が寝ている間か部屋にいないタイミングを見計らって、部屋の窓から落として凶器を処理した……。ちょうどその時、雪が降っていたからそのマイクは見事に隠れるようになったんだ……」
そう言って、湯川はにやりと笑う。
「なるほど」と、中森が頷く。
「犯人はあの三人の中の誰かだろう。後は、二人を殺したときのアリバイだな。三人に話を聞いてみよう」
それから、湯川がそう言った。
皆が頷く。寒いので皆すぐにペンションへ戻った。
それから、嶋たち五人は伴ら三人のいるリビングへ行く。湯川が嶋に目配せした。嶋がそれに気付くと、すぐに口を開いた。
「あの……皆さんに一つ報告があります」
伴、箕輪、鷲尾の三人が嶋を見る。
「何?」と、伴が訊いた。
「実は、凶器が見つかったんです!」
「凶器!?」と、伴は驚いて言う。
「はい。その凶器というのは……」
嶋が言おうとして、湯川が先ほど撮った写真を三人に見せた。三人はその写真を見る。
「このカラオケのマイクです」と、湯川が言った。
「え!?」と、鷲尾がビックリする。
「ウソ!?」と、箕輪も目を丸くした。
嶋は話を続ける。
「外の雪の中に、二本のマイクが埋まっていました。被害者二人の頭部が血まみれになっていて、このマイクも二つとも先端が血まみれになっていました。つまり、これが凶器で間違いないと思います」
「それじゃあ、犯人はそのマイクを使って大門と小山内を殺害したと……?」
伴が訊く。
「そういうことになります」と、嶋は言った。
「ふーん、そうか……。それで犯人はもう分かったのか?」
それから、伴がそう訊いた。
「いや、犯人はまだ分かっていません……」
嶋がそう言うと、「そう」と、伴が頷いた。
「ただ、皆さん三人の中にいるのではないかと思う訳です」
嶋がそう話すと、「え? 俺らん中に?」と、伴が訊き返す。
「少なくとも。ですから、皆さんのそれぞれのアリバイをお聞きしたいのです」と、嶋は言う。
「アリバイね……。いいけど」
伴は少し嫌な顔をしながら言った。
「それで皆さんに聞きたいのは二つです。一つは、大門さんが殺されたであろう二日前の十二月三十日の夜のこと。もう一つは、小山内さんが殺されたであろう昨日の十二月三十一日の夜のことです」
嶋はそう言って、一度黙る。
伴、箕輪、鷲尾の三人が顔を見合わせる。それから、「じゃあ、俺から話す」と、伴が口を開いた。
「まず二日前の夜ね。カラオケをした日だったよね。俺が一番に抜けたのは皆覚えてるよね?」
何人かが頷く。
「あの後、俺は翌日の映画撮影の準備をしなくちゃいけなかったんだ。ほら、台本のデータを皆に送らないといけなかった。だから、その作業をしていたんだよ。もちろん、それが終わった後はお風呂に入ってすぐに寝たよ」と、伴が話した。
「なるほど。その夜は誰かに会いましたか?」
それから、嶋が伴にそう訊いた。
「うん、そうだね。誰にも会わなかったよ」と、伴は答えた。
「それじゃあ、昨日は何していましたか?」と、嶋が訊く。
「昨日は……」と言って、伴は昨晩のことを思い返す。「皆でゲームしたんだったね」
「ええ、そうですね」
「その後はお風呂に入って……そのまま寝たよ」と、伴は話す。
「そうですか。昨夜は誰かに会いましたか?」
嶋がそう訊くと、「誰にも会ってないね……」と、伴は言う。
「分かりました」と、嶋は頷く。
「次、ウチ話していい?」と、箕輪が口を開く。
「ええ、どうぞ」と、嶋は箕輪を見て言った。
「一昨日ね。ウチはカラオケを最後までやっていたの。お開きが十一時くらいだったよね」
女子三人が頷く。
「その後、お風呂に入ろうと思っていたら亮くんから電話が掛かって来て、『少しだけ話さない?』って言われて、彼とカラオケ室で話していたの。十五分くらいだったと思う。いつもの雑談だよ。ウチが『そろそろお風呂入ろうかな』って言って亮くんと別れたよ。その後、お風呂に入って寝たよ」
「なるほど」と、嶋が頷く。それから、「昨日は?」と彼が訊いた。
「昨日はウチもみんなとゲームをしてたよ。ゲームが終わって、篤史くんの次にウチがお風呂に入って、その後……」
箕輪はふと昨夜のことを思い出したらしく一度黙ってしまう。皆が彼女を見る。
「その後?」と、嶋が先を促すように箕輪に訊いた。
彼女は再び口を開く。
「ええっと、その後、一人でカラオケ室に行ったの……」
「カラオケ室? どうして?」
嶋が不思議に思って箕輪に訊いた。
「亮くんのことを思い出しちゃって……」と、彼女は言う。
「なるほど」と、嶋は頷く。
「でも、見れなかった。亮くんの死んでる姿を見るのは勇気がいるみたいで……。結局、見るのは諦めて自分の部屋へ戻ったの……」
箕輪はゆっくりとそう話した。
「そうでしたか。昨夜は誰かに会いましたか?」
嶋がそう訊くと、「いいえ」と、彼女は言った。
「分かりました。それじゃあ、最後に鷲尾さん」と、嶋が鷲尾を見て言う。
「はい」と、鷲尾が返事をする。「一昨日からですね」と、鷲尾が話し始めた。
「一昨日は環奈ちゃんが言った通り、女子四人で夜十一時までカラオケで盛り上がっていました。その後、私たち四人は順番にお風呂に入って、寝ました」
「その夜、誰かに会いましたか?」
嶋がそう訊くと、「誰にも会ってないです」と、鷲尾は言った。
「そうですか」
鷲尾は話を続ける。
「それから昨夜、私はゲームをしないでずっと漫画ばっか読んでました。九時半頃にお風呂に入ってそのまま部屋でゆっくりしていました」
「昨夜、誰かに会いましたか?」と、嶋が訊いた。
「ええ。十時過ぎに充くんが私の部屋にやってきました。環奈はまだ下にいたので、部屋で二人、少し雑談をしました。十五分くらいだったと思います。その後、彼はお風呂へ行くと言って部屋を出て行きましたけど……」と、鷲尾は話した。
「なるほど。それじゃあ、伴さん以外のお二人が被害者に会っていた……ということですね」
それから、嶋はまとめるように言った。
「なるほど。となると、二人には大門さんと小山内さん、それぞれに接触する時間があった……とも言える」
湯川が口を挟んで言う。
「あー、確かに……」と、伴が頷く。「それじゃあ、二人が怪しいねえ……」と、彼は言ってにやりと笑う。
「そうとも言えるけど、別に私は充くんを殺したりなんてしてないわよ!」
それから、鷲尾が大声で弁明する。
「ウチだってそうだよ!」と、箕輪も反論した。
「あ、分かった!」と、伴が閃いたらしく口を開く。「犯人は、鷲尾と箕輪の二人だ!」




