17
目が覚めて、嶋は枕元のスマホを見る。画面には2026年1月1日 8:56と表示されていた。そこで嶋は年を越して、今日が正月であることを思い出した。
嶋は欠伸をし、上体を起こす。それから、隣で眠っている伴の方を見た。彼はまだ眠っていた。
彼を起こさないように嶋はゆっくりとベットから出て、スリッパを履いて一階へ降りた。
「あ、おはよう」
リビングへ行くと、中森がソファに座りながらテレビを観ていた。
「おはよう」と、嶋も言う。
「じゃなくて、あけましておめでとう、だな」と、中森は言い直した。
「あけましておめ……」
そう言いかけて、嶋はすぐにあることを思い出す。つい昨日、ここにいた演劇サークルのメンバーの一人、大門さんが亡くなっていた。今ここでその言葉を言うのは不謹慎なのではと嶋は思い直した。
「中森、あのさあ……」と、嶋は口を開く。
「何?」と、中森が訊く。
「人が死んでいるんだ。だから、その挨拶はやめよう」
嶋がそう言うと、「……ああ、そっか」と、そこで中森は思い出したようだった。
それから、「悪い悪い」と、中森は言う。
「中森、今年もよろしく」
嶋はそう言って微笑む。
「ああ、ことよろ!」と、中森も言った。
ダイニングの方で女性陣の声がした。嶋はコーヒーでも貰おうと思い、ダイニングへ行く。
「おはようございます」
嶋はリビングに入って言う。
「あ、嶋さん、おはようございます」
鷲尾が笑顔で挨拶する。
「嶋くん、おはよう」と、加賀谷が言う。
「あけおめー!」と、桜庭が言った。
「今年もよろしく」と、嶋は返事する。
「コーヒー飲みます?」
それから、鷲尾が気にかけて嶋にそう訊いた。
「お願いします」と、嶋は答える。鷲尾はすぐにコーヒーを淹れてくれた。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます。いただきます」
お礼を言って嶋はそのコーヒーを少しフーフーと冷まし、一口啜った。
「はあ、おいしい」
朝に飲むコーヒーは美味いなあと嶋はしみじみと思った。今いる場所が寒冷地ということも余計に美味しく感じさせるのだろうなとも思った。
「嶋さん、そう言えば、充くん見てませんか?」
ふと、鷲尾がそう嶋に訊いた。
「小山内さんですか?」と、嶋は彼女に訊き返す。
「そうです」と、鷲尾は頷く。
「いや、見てないです」と、嶋は答える。
「そう……」
彼女は小さな声で言う。
「まだ寝てるんじゃないですか?」
嶋がそう言うと、「そうかもしれないです」と、鷲尾は言った。それから、「もう起きてきてもいい頃なんだけどな……」と、彼女は心配そうに言う。
「ちょっと部屋を見てきましょうか?」
嶋がそう言うと、「あ、いいです。私、見てくるんで……」と、鷲尾は言ってダイニングを出て行った。
嶋も小山内のことが少し気になり、席を立ちそこを出る。
鷲尾は二階に上がっていくので、嶋も彼女の後について行く。
鷲尾は小山内の部屋の扉をノックする。嶋は彼女の横にいた。
「充くん! ねえ、充くん起きてる? もう朝だよ!」
鷲尾は大きな声でそう言った。しかし、扉の向こうから彼の返事はなかった。
「充くん、開けるよ?」
それから、鷲尾はそう言ってドアノブを回す。すると、その扉が開いた。すぐに鷲尾と嶋はその部屋を覗いた。
「え!?」
「ウソ!?」
二人は驚いた。そこに小山内の姿がなかった。それからすぐに嶋はあるものに気付いた。
「血……血だ!!」
扉を開けて入ったところの床や壁に血のようなものが飛散していた。
「キャアーーーー!!!!」
鷲尾が悲鳴を上げた。
その悲鳴で、奥の部屋から伴が出てきた。それから、湯川と箕輪も出てくる。
「どうしたんだ!?」
伴がゆっくりとこちらの部屋へやって来た。
「血……血が……」
鷲尾は小さな声で言った。
「それと、この部屋に小山内さんがいないんです!!」
それから、嶋がそう付け加えた。
「え!? うそ!!」
伴は部屋の中を見るなり、目を丸くして言う。「ホントだ!?」
「何かあったの??」
ややあって、一階にいた加賀谷たち三人もやって来た。すぐに皆がその異変に気付いた。
「この血って、もしかして……小山内さんのじゃ……」
嶋がそう言うと、伴は残念な顔をした。
「それより、小山内さんはどこへ消えたんでしょう?」
それから、湯川がそう口にした。
皆が首を傾げる。
「ここはまず彼を捜すべきでしょう」
それから、湯川がそう言った。
「そうだね」と、嶋は言う。その後、中森、加賀谷、桜庭の三人が頷く。
伴と鷲尾、それから、箕輪の三人は顔を見合わせた後、頷いた。




