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「湯川、もうその辺にしておけ……」
それから、中森がそう彼に言った。湯川は中森を見る。
「ああ、悪い……」
湯川はそこで我に返ったようだった。
「気持ちは分かる。俺らはミステリー研だからね。ミステリーの話になると、つい熱が入ってしまうんだな……」
中森は頭を掻きながら言う。
「うんうん」と、嶋も頷く。それから、「後は警察に任せるのが一番さ」と、彼は言う。
「警察? 一体いつ来るっていうんだよ?」
それから、湯川は嶋を見て訊いた。
「あと、一日~二日すれば来ると思うけど」と、嶋は言う。
「数時間ならまだしも、一日~二日は長いよ……。その間にまた殺人でも起きたらどうするんだ?」
湯川は嶋を見て訊く。
「起きないという確証はない」と、嶋は言う。「ただ、もし次また殺人が起きたとしてもそれは仕方ないと思う」
「仕方ないって……」
「僕たちはどちらかというと、犠牲者みたいなものだ。それは、このペンションにのこのこやって来てしまったからさ」
「何が言いたいんだ?」と、湯川が訊く。
嶋が話を続ける。
「つまり、この後も殺人が起きようが起きまいが、僕たちは警察が来るまではここに留まらなきゃいけない。ということは、同じく犯人もここにいなきゃならないという訳さ」
「なるほど……」
湯川は感心して言う。
「でもなあ……。犯人と一緒に過ごすなんて気味が悪いな……」
それから、中森が呟くように言った。
「ホントそうよね……」と、加賀谷が同調する。桜庭も頷く。
「けど、そこに関して言えば、小説のキャラクターも気分は一緒だろ」と、湯川は言う。
「そうだね。皆、犯人と一緒に居たくないという心理のはず」と、嶋が言う。
「うん。……で、ここで突然発狂する者が出てきて、部屋に一人で閉じこもる。すると――その人物はまんまと犯人の手で転がされるように殺される――と」
湯川はそう言って、にやりと笑う。
「そうだね。だから、全員が同じところに一緒に居るのが安全ということだよ」
嶋はそう言ってにこりと笑う。
「それじゃあ、ずっとリビングやダイニングに居ろってこと?」
それから、中森が嶋に訊く。
「いや。別にこのペンションから出なければ、どの部屋にいたって構わないよ。もちろん、カラオケルーム以外ね」と、嶋は話す。
「ああ、分かった」と、中森が言う。
他の皆も頷いた。
「さあ、それよりこれからどう暇潰すかな……」
しばらくして、伴が口を開いた。
「そういや、伴さん。あれ、面白かったです」
ふと、湯川が伴にそう言った。
「あれって?」と、伴が訊く。
「台本ですよ」と、湯川は言ってポケットからスマホを出して見せる。昨日、皆のスマホに伴から台本のコピーが送られていた。
「ああ、読んでくれたんだ!」
伴は嬉しそうに言う。
「ええ。とても面白かったです。もし、大門さんがあんなことになってなければ、今頃、本読みや撮影が出来ていたんでしょうけど……」
湯川はそう言って、残念な顔をする。
「そうか……そうだよな……」
伴はそう呟いて、少し考える。それから、彼は口を開く。
「警察が来るまでは、皆、暇だよな?」
何人かが頷く。
「よし! そしたら、皆で映画を撮ろう!」
伴は皆を見回して言った。
「え? マジすか!?」
突然の彼の提案に、湯川はビックリする。他の皆も目を丸くした。
「マジ」と、伴は言う。
「ところで、大門さんの代役はどうします?」
それから、湯川が伴に訊いた。
「一人いるだろ? なあ、カメラマン!」
伴に呼ばれて、小山内がびくりとする。
「え? 僕が?」
「うん、代役はお前しかいない。お願いだ」と、伴は小山内に言う。
「え……ああ、分かった」と、小山内は渋々承諾した。
「ありがとう」と、伴はお礼を言う。
「あ、でも、撮影の時、カメラはどうするんだ?」
それから、小山内が伴に訊く。
「大丈夫だろ。こんだけ人数いるんだから。撮影は手が空いた人たちが撮ればいいよ」と、伴は言った。
「なるほど。OK!」
小山内は言って笑う。




