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それから、しばらく全員がカラオケ室で呆然と立ち尽くしていた。
「これからどうしましょうか……」
ややあって、鷲尾が口を開いた。
「そうですね……」と、嶋は言う。「とりあえず、警察が来るまでは全員このペンションで待機しなくてはなりませんね」
「待機……」
小山内がポツリと言う。嶋は頷く。
「それなら、本読みや映画撮影はどうなるんだ?」
それから、中森が嶋に訊く。
「そりゃあ……中止するしかないんじゃないかな」と、嶋は答える。
「だよなあ……」と、中森は言う。
「まあ、でも、伴さん次第だよ」と、嶋は言う。
「え?」中森は驚く。
「もし、彼が続けると言ったら、おそらくだけど、大門さん抜きでやるとかもあり得るだろうし……」
嶋がそう話すと、中森は頭を掻いた。
「そうなのか……」
「まあ、それもありますよね」と、鷲尾が言う。
「とりあえず、カラオケ室はこのままにして、一旦リビングに戻りましょう」
それから、嶋はそこにいるメンバー全員にそう言った。皆がそれぞれ頷く。すぐに嶋たちはリビングに戻った。
「さて、これからどうしたものか……」
リビングで嶋は独り言つ。
「なあ、嶋。そんな呑気なこと言ってていいのか?」
ふと、湯川が横から口を出す。
「ん? どういうこと?」と、嶋は湯川の顔を見て訊いた。
「忘れたか? 今、この中に殺人犯がいるってことだよ! このまま泳がしといていいのか?」
湯川は真顔で言う。
確かにと嶋は思った。だが、嶋はまだそこまでの確証を持てなかった。
「まだ分からないよ……」と、嶋は正直に答える。
「分からない? じゃあ、教えてやるよ。大門さんはカラオケ室で何者かに殺害されているんだ!」
「それは知っているさ」
湯川は話を続ける。
「このペンションには、オレらミステリー研五名と演劇サークルの五名(一名死亡)しかいない。そして、このペンションは密室。その上、このペンションの外は雪が吹き荒れている。つまり、外部からの犯行などあり得ない。となると、犯人は内部の人間に限られる……という訳だ!」
湯川は話し終わると、にこりと笑った。
湯川以外の全員が、彼の話に目をぱちくりさせる。
「フフフ」
笑ったのは、伴である。「湯川くん、面白いね」と、彼は言う。
「面白い?」と、湯川は伴を睨み付けながら訊く。
「いや、だってそうじゃないか! まるで本当にミステリーの世界に入り込んでしまったみたいで……」
そう言って、伴はにやりと笑う。
「小説なら面白いですけど、実際は恐怖でしかありませんよ」と、湯川は話す。
「確かにそうだね」と、伴は頷く。「ところで、この中に犯人がいるって本当かい?」
それから、伴は湯川にそう訊いた。
「おそらく。この中にいるのは間違いないかと」と、湯川は言った。
「なるほど。一体誰が犯人だというんだい?」伴は湯川に訊く。
「さあ? まだオレも分かりませんけど、一つ言えるとするなら、オレ達ミステリー研の中というよりかは、あなたたち、演劇サークルの誰かだと思うのです」
湯川はそう言って、伴達、演劇サークル全員を見回す。
「え? 俺ら? どうしてだい?」
咄嗟に伴は訊く。
「だって、オレたちミステリー研はあなたたちとは初対面ですから」と、湯川は言う。
「そうだな……」
伴は呟く。「つまり、大門を殺したのは、俺ら仲間内での犯行ということかい?」
「まだ分かりませんが、その可能性が高いでしょう」
湯川はそう話す。
「そうか。俺ら四人の中にね……」
そう言って、伴は黙る。
「一番怪しいのは、小山内だな」
ふいに、伴がそう言った。皆が小山内を見る。
「え? 僕!?」
急に伴に名指しされて、小山内はビックリする。
「だってほら、お前、大門と一緒の部屋だろう? お前なら誰にも見つからずにいくらでも大門を殺せる」と、伴は話す。
「そうだけど、僕じゃないよ!!」
小山内は必死に否定する。
「本当か?」伴はにやりと笑って訊く。
「本当だって!!」と、小山内は必死に言う。
「まあまあ」
それから、湯川が二人を制すように言う。
「そうか。……あ、もう一人いたな」
伴は思い出して言う。
「もう一人?」と、湯川が伴に訊き返す。
「環奈」と、伴は言う。
「ウチ?」と、彼女は名前を呼ばれて顔を上げた。
「ウチじゃないって」
それから、彼女は首を振り、静かに答えた。
「どうして、箕輪さんなんですか?」
湯川は伴を見て訊いた。
「それは……。大門と彼女が付き合ってるから……」
伴はそう言って黙った。
「ほう」と、湯川は頷く。「二人は付き合っているけど、関係は良好じゃなかったと?」それから、湯川がそう言った。
「そう。そう言いたかった」と、伴は言い直す。
「それで箕輪さんが彼を殺害したと?」と、湯川は訊き返す。
「ああ、そうじゃないかと思ってね」
伴はそう言って、にやりと笑う。
「やめて! ウチら喧嘩はすることはあっても、別に仲は悪くなかったから……」
箕輪は膨れ面でそう言った。
「そうかいそうかい」と、伴は頷く。
「まあ、動機は十分に考えられますが……」
それから、湯川が言った。
「そう言う伴くんはどうなの?」
その後、箕輪が伴を見て訊いた。
「俺が? いやいや」と、伴は手を振る。
「だって、亮くんとよく衝突してたでしょ?」と、箕輪が言った。
「ああ。まあ、確かに大門とはバチってたけど、どっちかっていうと、俺ら馬が合わなかったんだ」
伴が正直に話す。
「そうでしょ?」
「というより、方向性の違いみたいな……」
伴がそう言うと、「何その解散したバンドマンみたいなの。ウケる」と言って、箕輪は笑った。
「そうだね。まさにそんなようなところさ。俺と大門の関係って。だから、俺がアイツを憎もうが、別に関係ないよ」
伴はそう言って笑う。
「へー。そう。それじゃあ、案外、由姫ちゃんってことも考えれるのね」
それから、箕輪が今度、鷲尾の名前を出した。
「え? ちょっと待ってよ! なんで?」
急に名前を呼ばれて、鷲尾は慌てて言った。
「そういや、噂で訊いたけど、鷲尾、大門に言い寄られたんだって?」
それから、伴が思い出したように言った。
「え? 何で知ってるの?」と、鷲尾はビックリして言う。それから、「そうだけど……」と、彼女は照れ臭そうに言った。
「え? そうなの?」
小山内が驚いて彼女に訊く。鷲尾は頷いた。
「そうなんだ……」
小山内は呟くように言った。
「やっぱりか……」
伴はにやりと笑う。
「あの……それはどういうことでしょうか?」
それから、湯川が口を挟んで訊いた。伴は湯川を見て口を開く。
「鷲尾は小山内と付き合ってるんですよ。でも、いつだか、大門が彼女に言い寄ったらしいんだ。彼女は断ったらしいけど、大門がしつこかったみたいで……」
伴はそう話した。
「それじゃあ、鷲尾さんも大門さんを憎んでいた……ということですね」
それから、湯川がそうまとめるように言った。
「そうとも言えますけど……」と、鷲尾は小さな声で言う。「でも、私じゃないです!」
「なるほど。四人とも彼を殺す動機はあるみたいですね」
湯川は四人の顔を見て言った。




