第44話 そして、龍王へ
花粉対策のど飴を舐めています。
もうすぐ春ですね。
3月末かぁ、契約終了。
職探さんと。
人間が、最強種族である龍族の長になる。
当初は、各里の長老たちから猛反発があると思っていた。
だが、蓋を開けてみれば、俺の元には山のような「支持」の書状が届いていた。
『底なしの魔力を持つ御仁なら安心じゃ』
『神様と直通パイプを持つ者を無下にはできん』
『あと、ウチの村にも光回線を頼む』
……最後のが本音だろうが、どうやら俺のデタラメな魔力(MP: GOD+)と、
神像を通じたコネクションが信任に値したらしい。
どこの国でも、力とインフラを握る者は認められるのだ。
そして、その時が来た。
◇
まさかのW出産である。
産院となった本店の奥座敷では、それぞれの祖父(ホエイパウダとハシガミ父・オワコン)が、
泣きながら孫を取り上げているらしい。
感動の瞬間だ。
だが、俺はその場に立ち会えない。
なぜなら俺は今、執務室で**【龍王承諾書】**に血判を押さねばならないからだ。
「……いいですか、義父上。2年だけですよ。
2年後に子供がある程度育ったら、王位は返しますからね」
俺は新型ノートPC**【XXX68k】**の画面越しに、
産院にいるホエイパウダに念を押した。
『わかった、わかった! おお、産まれた! 元気な玉のような……!』
「聞いてます!? これ録画してますからね! 言質とりましたよ!」
俺は画面上のRECボタンを確認し、震える手で承諾書に拇印を押した。
ジュワッ。
契約魔法が発動し、身体に重厚な力が流れ込んでくる。
……ああ、これで俺は「龍王」か。
目立たないように生きたいと言っていたのに、気付けば世界最強種族の王だ。
人生、どこでどうなるか分からない。
◇
コンコン。
ドアがノックされ、大きな花束を持った勇者たちが現れた。
「龍王就任、おめでとうございまーす!」
「……ありがとう。でもその花束、映画で見たことあるぞ。
中にマシンガンとか仕込んでないだろうな?」
俺が軽口を叩くと、リーダーの安納がツッコんだ。
「そんなわけあるかーい!」
「あ、それいいですね。花束に銃を仕込んで、ドローンで敵陣に飛ばせば……」
「……なんでもドローンかよ。
お前、そのうちドローン10個くらい体に紐付けて、空でも飛ぶんじゃないか?」
「!! それ、いいかも……!」
紅まさり(妹)の目が怪しく光った。
彼女は花束を押し付けると、「設計図引いてきます!」と言って部屋を飛び出していった。
……しまった。余計な知恵を与えてしまったかもしれない。
残された安納が、モジモジしながら切り出した。
「あの、ショウさん。ちょっと相談なんですが……フルトさんの紹介で、
ある女性と会うことになりまして」
「ほう」
「ネットで何回かチャットで話して、意気投合して……今晩、初デートなんですよ。
服とかどうすればいいですかね?」
……こいつら、出産祝いはどうでもいいようだ。
平和ボケもここに極まれり。
「ショウさん、とりあえず一杯飲んでくださいよ」
サブリーダーの綾紫が、酒瓶を持ってすり寄ってくる。
「……なんで?」
「いやぁ、ほら。龍王の第3夫人もいいかなって」
「……」
俺は無言で首を横に振った。
前回の「記憶なし妊娠事件」の二の舞は御免だ。
世界を救うつもりがあるのか、勇者どもよ。
ちなみに、紅はるか(姉)は来なかったが、祝儀袋に入った「お米券(1年分)」が届いていた。
一番実用的だ。
◇
勇者たちを追い出した後、俺は龍王としての「最初の仕事」に取り掛かった。
執務室の椅子に座り、ゴボテンが開発したばかりの新型端末**【Xmove】**を
取り出す。
まだ弁当箱くらい大きくて重いが、カメラ機能はついている。
「……えー、新龍王のショウです。就任しました。今後ともよろしく」
メッセージ動画を撮影し、完成したばかりのSNS**【ドラゴンブック】**にアップロードした。
送信ボタンをポチッ。
数分後。
世界中のPCと端末に通知が飛び、トレンド1位になった。
#龍王就任
#ショウ様
#Xmove
こうして、剣と魔法の世界に、デジタルな王が誕生した。
2位はフルトの黒田節舞ってみた。




