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異世界遁世  作者: 半防御 with G
文明開化の音がする
40/50

第40話 パーソナルなお悩み(後)

理想郷って大変だわと常々おもう。


白い空間。

そこには、杖を持った「いかにも」な風貌の老人が立っていた。


「……あー、私がこの世界の神です。来るの遅いよ」

「えっ、神様?」

「定期的に来いよ。お前、他人の分野(土木や農業)にはサクサク指示出すくせに、

自分の専門分野になると悲劇の主人公みたいに悩みやがって。アホか」

 開口一番、煽られた。


「……もう、俺が決める。この世界のコンピュータのアーキテクチャは、**『X68000』**だ」

「えっ!?」

「これでゲーム作ってただろ? アセンブラで」

神様が指を鳴らすと、見覚えのある黒いタワー型の筐体が現れた。

側面には、俺が高校時代に貼ったステッカーがそのまま残っている。俺の実機だ。


「それに、これが必要だろ。黒本、白本、懐かしいだろ?」

 渡されたのは、伝説の参考書たちだった。

 ・内部解析のバイブル『Inside X68000』(黒本)

 ・外部インターフェイス解説『Outside X68000』(白本)

 ・アセンブラの教科書『プログラムハンドブック』(青本)

さらに、開発環境のフロッピーディスクや内部資料の束まで。


「……個人的にな、最近のCPUの内部キャッシュとかパイプライン処理が気に食わんのだ。

アセンブラが書きづらくて仕方ない」

「はあ……」

「言語なんて、最高でもC++ぐらいでいいんだよ。

メモリ管理はGCガベージコレクションに頼らず自分でやれ。甘えるな」

急に原理主義的なマニアックなことを言い始めた。

完全に古参プログラマーの愚痴だ。


「……でも神様、それだと処理速度に限界が……」

「馬鹿野郎。実はな、処理速度なんて幾らでも上げられるんだ」

神様がニヤリと笑う。

「『龍のウロコ』を極限まで薄くスライスして、古いウロコと交互に重ねてみろ。超電子が生まれる」

「……はあ」

「さらにウロコを重ねると、演算速度が跳ね上がる」

「倍ですか?」

「**『べき乗』**だ。2枚で2乗、10枚重ねれば……分かるな? 

向こうの世界のスパコンなんてチョロイもんだぞ」

とんでもないチート理論だ。

物理法則を無視した、指数関数的な加速。


「あ、そこら辺の詳しい物理説明はゼネストにするから、すぐにここへ来いと伝えてくれ」

「丸投げですか」

「餅は餅屋だ。……いいか、そもそもお前はチートみたいな存在なんだ。

なんで自分で全部頑張っちゃうかなぁ」

神様が呆れたように肩をすくめる。

「そういう不器用なところ、日本人なんだろうなぁ。全てを頼られても、

それはそれで『はらたいらさんに全部』ってことで……じゃあな」

その去り際の笑顔に、俺はハッとした。

高校時代の、電子ゲーム部の顧問の先生にそっくりだったのだ。



ガバッ!

俺は石像に抱きつきながら目覚めた。

足が重い。ずっと正座していたみたいだ。


「……やるしかない」

俺は早速、ショウタウンに【転移】した。

互助会の建物に急遽3階を増築し、そこに黒曜石の像を鎮座させた。

そして、ゼネスト博士を呼び出し、事情を説明して像の前に行かせた。


その後は、大騒動だった。

 1.神が確実に実在し、定期的に技術指導(ダメ出し)をしてくれることが判明。

 2.元日本人(ハシガミ、ゴボテン、勇者たち)や主要人物(ファミマ、魔王など)が

   一通り挨拶を済ませ、感無量で号泣。

 3.ゼネストとゴボテンが「龍のウロコ積層プロセッサ」を開発。


そして翌年。

世界初の国産コンピュータ**『X68000互換機(改)』**が発売された。

見た目はレトロだが、中身はスーパーコンピュータ並みの化け物だ。

それぞれの研究機関や大学に配備され、その年のうちに世界中のネットワークが繋がった。

電話回線なんて飛び越えて、最初から「光ファイバー」だ。


「……発展のスピード違反じゃないかーい!!」

ショウの絶叫に、ファミマだけが「あはは」と笑ってくれた。

こうして、世界は情報化社会へ突入した。

やっと肩の荷が下りた。

次の章から、いろいろとスタートできるような地固めが終わった感がある。

こうなると、ローファンタジーみたいになるのかな。

ようやくみんながネットに触れて、最低限の情報が得られれば

幸せに、、、なってくれればいいなぁ。

その上で詐欺とかあるけど。

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