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この結婚は王命ですから。初夜で拒絶された花嫁です、それでは自由にやらせていただきます!  作者: 夏目みや
第六章 再会

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「シャルロット、抱きしめてもいいか?」


 ウッと言葉に詰まったと思ったら、そっとそっぽを向く。


「そ、そんなことぐらい、許可はいらないわ。ど、どうぞ」


 手を伸ばし、彼女を抱き寄せる。

 温かくてやわらかくて、優しい香りがする。


 心臓の鼓動が聞こえるが、自分のか、シャルロットなのか。区別がつかない。

 ギュッと抱きしめると、シャルロットが小さく息をのんだのがわかった。

 ああ、俺は彼女のために、人生を捧げようと思えた。


「――口づけをしてもいいか?」


 そっと問いかけると、腕の中のシャルロットが身を固くしたのを感じた。

 早急すぎだのかもしれない。

 シャルロットが腕の中でおずおずと顔を上げた。


「そ、そんなことも、いちいち聞かないで」


 ムッと頬を膨らませてはいるが、きっと照れ隠しだ。その証拠に耳まで赤くなっている。

 そんな姿もたまらなくかわいくて、思わず笑顔がこぼれる。


 ゆっくりとシャルロットの頬に手を添える。潤んだ目で見上げる姿が愛しくて、気づけば唇を重ねていた。

 温もりを求め、体を包むとお互いの熱が伝わり、全身が痺れてくる。


 もっと、もっと深く触れたい――。


 無意識のうちに唇の隙間から、シャルロットを求めて侵入していた。

 シャルロットをそれにこたえるかのように、受け止めてくれた。


 全身がとろけるような刺激に息も絶え絶えになる。

 薄目を開けて確認した瞬間、ハッと目を見開く


「シ、シャルロット!?」


 唇をパッと離し、彼女の両肩を抱き、ガクガクと揺さぶる。

 シャルロットは真っ赤な顔で目の焦点がおかしい。


「い、息ができなくて……!」


 その様子を見て、我にかえる。やわらかな唇の誘惑に耐えられず、思わず貪ってしまった自分を恥じた。


「す、すまない」


 彼女の肩をそっと抱き寄せ、胸に寄りかからせる。

 シャルロットが腕の中で荒い呼吸を整えている。大人しく落ち着くのを待った。


 早急すぎたか。

 内心オロオロと動揺するが、必死にそれを隠す。


「ふふっ……」


 腕の中の彼女は小さく笑った。


「私と一緒のベッドも使いたくないぐらい、嫌われていると思っていたわ。初夜の時と、なんにも変わっていないんだなって」

「そ、それは……」


 あの日の自分を今でも殴ってやりたい。


「だからね、さっきも断られた時は、正直ショックだったの。私と同じベッドで眠るのも嫌なのかと思って」


 断じてそんなことはない。


 だが、話あうことが第一の目的だったのに、それもしないまま隣で横になれば、俺の自制心が保てる自信がない。


 理性が崩壊する。

 現に今だって腕の中のシャルロットに触れたくてたまらない。

 クッと唇を噛んで耐える。


「だから、イザークの本心を聞いて嬉しかった、ありがとう」


 腕の中で微笑むシャルロットにたまらなく愛しい感情が芽生える。


「俺の方こそ、意地を張って君を傷つけてしまった、どうしようもない俺を許してくれて、感謝しても足りないぐらいだ」


 過去を思い返すと自己嫌悪に陥る。


「だから、どうか、これから挽回させてくれないか。ずっと側にいてくれ」


 気持ちを伝える前は勇気が必要だったが、一度言葉にしてしまえば、すらすらと口にできた。

 シャルロットは胸に体を預けながら、ふわりと微笑む。

 その笑顔を見れただけで十分だった。願わくば、この笑顔をずっと見ていたいと思ったが、それは俺のわがままだ。


 しばらくこの温もりを味わいたいと思ったが、感情を押し殺す。

 シャルロットを抱きかかえ、立ち上がる。


「えっ……」


 驚いているシャルロットの顔を見つめる。


「もう遅い。今日は疲れただろう。休むといい」


 シャルロットは目をパチクリとさせ、かわいらしく微笑む。


「じゃあ、イザークも一緒にベッドで眠りましょう」


 止めてくれ。どんな殺し文句だ。

 無言でベッドに近づき、そっとシャルロットを下ろす。


 ベッドの端に腰をかけ、彼女の頬をそっとなでた。


「おやすみ」


 まだなにか言いだけだった彼女だが、次第に瞼を閉じた。


 やはり、出産という一大事に付き添い、疲れたのだろう。


 やがて静かな寝息が部屋に響く。


 こんなにも満ち足りた気分になったことなど、あっただろうか。


 彼女の寝顔を見ていると、幸福感で胸がいっぱいになる。


 やがてベッドから立ち上がり、ソファに移動する。


 だが、目が冴え切ってしまい、今夜は眠れそうになかった。

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