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この結婚は王命ですから。初夜で拒絶された花嫁です、それでは自由にやらせていただきます!  作者: 夏目みや
第四章 ネザークロウの洞窟

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 やがて、足元が明るくなった。

 ぽっかりと穴の開いた空からは光が入り込み、照らしている。


「中央に到着だ」


 イザークが安堵の声を出す。


 この場所だけ、気が満ちている。


 洞窟の中央から見える空。ここは光が差す空間であり、瘴気が及ばない。


 ここなら――。


 私はスッと息を吸い込む。


「どうしたんだ?」


 私の異変に気付いたイザークが声をかけてきたが、優しく微笑む。


「少し、見守っていてください」


 私は日差しの入り込む空間の、真下へと移動する。

 スッと息を吸い込み、全神経を集中させる。


「天に遣われし、魔力よ、この地に宿る瘴気をちりじりにさせ、大地は芽吹き、息を吹き返せよ」


 さすがに私も、これから行おうとすることに、詠唱なしでは不可能だ。


「偉大なる女神の名において、我ここに、闇と対峙する。我らが前の行く手阻む、闇よ滅び、消滅せよ」


 詠唱を始めると風が巻き起こる。それは私を中心とした竜巻となった。

 手の平に全神経を集中させ、両手を合わせる。


「瘴気よ、闇に返るがいい」


 グッと気合を入れ、左手首のブレスレットを外した。


 さあ、いきなさい――!!


 その瞬間、洞窟の奥に風が向かって流れていく。ごうごうとすさまじい音を立て、すべてを吹き飛ばしそうな勢いだ。


「シャルロット……!!」


 イザークが風に抗いながら、私に手を伸ばす。


 あたりを一掃する強風がやむと足がフラフラで、立っているのがやっとだった。


「よかった……」


 ぽつりとつぶやき、ブレスレットを再度、はめ直す。

 イザークが私に駆け寄り、腕をつかむ。


「大丈夫か?」

「ええ……」


 頭がクラクラし、まるで貧血を起こしたみたいだ。まずい、力を使いすぎたみたいだ。


「いったい、なにがどうなっているんだ?」


 目を丸くするイザークの胸に寄りかかる。


「この洞窟、もう大丈夫よ。魔物も出ないし、瘴気も消え去った。これで人が入っても危険じゃないわ」


 イザークはふっと顔を上げると、鼻をピクリと動かした。


「本当だ。さっきより、空気がグッと澄んでいる」


 よかった、どうやらイザークはわかる人だったみたいだ。


「シャルロット?」


 イザークの広い胸に体を預けているが、とても心地よくて安心する。 

 今までにない力を使った反動のせいか、強烈に眠い。今にも倒れそうだ。


 だが、これだけは伝えなくては――。


「もう、大丈夫。だから人を派遣して。ここから結晶を採掘できるわ」


 ああ、眠い。瞼が閉じてしまいそう。


「これで北部はもっと発展するわー―」

「おい!?」


 ダメだ、イザークの焦る声が聞こえるが、起きているのがやっとだと思ったその時――。


「シャルロット様~~~~!! ご無事でしたかぁぁ!!」


 この声はドリーだわ。


 気力を振り絞り顔を向けると、洞窟の真上からのぞき込むドリーがいた。その横にロゼールもいる。


「今、そちらに行きます!」


 ドリーはロープを投げると、スルスルッと滑り下りてきた。その一連の行動は、さすがの運動神経だ。


 その時、視線が反転する。

 気づけば私はイザークに横抱きにされていた。


「今にも倒れそうだ。寄りかかってくれ」

「あ、ありがとう」


 おずおずと彼の首に手をまわした。


「詳しい説明は、あとからでいい。今は安心して眠ってくれ」


 イザークの気遣いがとても嬉しい。私は遠慮することなく瞼を閉じると、意識を手放した。


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