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この結婚は王命ですから。初夜で拒絶された花嫁です、それでは自由にやらせていただきます!  作者: 夏目みや
第四章 ネザークロウの洞窟

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「前に王様は北部など、気にかけていないと言ったわよね?」


 イザークも自身の発言を思い出したのか、小さくうなずいた。


「その逆で、本当に気にかけているから、私のことを送り込んだのです」


 これは王から直々に言われたこと。本当はここまで言うつもりはなかったのだけど――。


「もしよ? 仮にね――」


 前置きしたあと、私はゴクリと息をのむ。


「私とイザークの間に子供が出来たら……」

「なっ……!」


 イザークは絶句した。ほんのりと耳が赤くなっている。突拍子もない話に動揺したのか、視線をさまよわせた。


「魔力持ちになる可能性があるでしょう?」


 魔力があればこそ、環境の厳しい北部で、その能力を生かせると王は考えておいでだった。


 子供、と言った時点でイザークが小さく息をのむ。手をソワソワさせて、落ち着きがない。


 でも、最初に彼から子供の件は拒否されているから、望めない。

 無理強いもできないのだから、やれやれと肩を落とす。


「だから、決して北部をないがしろにしているなんてことは、ありません」

「――わかった」


 イザークに伝わったようでホッと胸をなでおろす。


「では次に――左腕を見せてもらえるかしら?」


 イザークは驚愕に目を見開くと、サッと左腕を背中に隠した。


「なぜだ」

「痛めたでしょう?」


 イザークは隠しているつもりだったのだろうが、明らかに肘の部分を庇った動きをしている。

 きっと私を助けた時に、ぶつけてしまったのだろう。


「いいから見せてください。こっちに来て」


 そっちが行かないなら私が行くわと宣言すると、やっと観念したイザークが近づいてきた。

 手を伸ばすと届く距離に来たイザークに左腕を出してもらう。シャツをたくしあげた箇所は、腫れて熱を持っていた。


 これは相当痛いはずだわ。もしかして骨にヒビが入っているかもしれない。

 私は集中し、イザークの腕にそっと触れる。

 やがて温かな光が周囲を包み込んだ。


「はい、おしまい」


 シャツを戻すイザークにグッと唇を噛みしめた。


「あの、ごめんなさい、イザーク」

「なんのことだ」


 彼は理解できないと言った様子で私を見つめる。


「私を庇ったせいでケガをしたのでしょう」


 私を抱きかかえ、土砂崩れを避けた時、肘を強打したに違いない。それしか考えられなかった。


「ああ、たいしたことないさ」

「でも――」


 イザークは私が気にすると思って言わなかったのだろう。


「辛いときは正直に言って欲しいの」


 彼の目を見て、そっと腕をさする。


「我慢する必要なんてないわ。せっかく癒しの力があるのに」

「――これしきの傷、痛いなんて言ってはダメだと思っていた」

「あら、それは違うと思うわ!」


 私はイザークの目を見つめ、指を振った。


「痛いものは痛いと、素直になっていいのだから」

「そうか……。小さな傷ごとき、情けないかと思っていた」

「大丈夫。私がいるから」


 胸を張るとイザークも頬を緩ませた。


「さぁ、前に進みましょう」


 イザークに手を出すと、彼はギュッと私の手を握る。


 ***


 どのぐらい奥に進んだのだろうか。

 あれから魔物が出てはイザークが退治し、私が治療にあたった。


「ごめんなさい、私があまり役立たなくて」


 先ほど襲ってきた魔物の攻撃により、腕から血を流すイザークを治療する。


「いや、こうして治療できるのだから、助かる」


 イザークはそう言うが、治療できるとしても、痛みは伴う。


 洞窟の奥に進むにつれ、瘴気が濃くなってきているのを肌で感じる。


 長い時間、触れていると気力を奪われる。

 深淵の暗闇、魔物がいつ襲ってくるのかわからない恐怖。


 気持ちまでどんよりと暗くなる。

 不意に、自分がどこを歩いているのか、わからなくなる。


 いけない、瘴気にのまれてしまう――。


「早く、行こう」


 その時、イザークがグイッと手を引いてくれ、その手の温かさで我に返る。


「ええ、ありがとう」


 私もまた、彼の手をギュッと握りしめた。

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