表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この結婚は王命ですから。初夜で拒絶された花嫁です、それでは自由にやらせていただきます!  作者: 夏目みや
第四章 ネザークロウの洞窟

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/73

40

「シャルロット様、重くないですか?」

「あら、平気よ。ドリーこそ辛くない?」


 ドリーは私の倍も運んでいるので疲れないか心配だ。

 バケツを両手で持ちながら、廊下を進む。


「ふう、ちょっと休憩しない?」


 手が痺れてきた私の発言に、それ見たことかとドリーは視線を投げる。


「ここにバケツを置いていきましょう。あとから私が取りにきます」

「でもそれじゃあ――」


 ドリーの手伝いにならないじゃない、と言いかけた時――。


「なにをやっているんだ」


 背後から声がかかり、振り返る。

 そこにいたのは険しい顔をしたイザークだった。


「なぜこんな、使用人みたいな真似事をしている!?」


 私に近寄ると手からバケツをひったくるように奪った。


「そんなに重くないから大丈夫――」

「そういう問題ではない」


 イザークは威厳ある声を出し、私の言葉を遮った。スッと息を吸い込む。


「メイド長と執事長を呼べ!!」


 廊下の端にまで響く声を出した。


 それからすぐに血相を変えた二人が走ってきた。イザークは腕を組み、威圧感を醸し出している。その横でドリーが事情を説明していた。


 まいったわ、なんだかおおごとになってしまったわね。


 やがてメイド長からあの場にいたミーシャを含め、三人が呼びつけられた。


「なぜ、ここに呼ばれたかわかっているか?」

「も、申し訳ありません」


 イザークがみずから詰問し、この場にいる皆が顔面蒼白になっている。震えて話にならないと思ったのだろう、イザークは大きなため息をつく。


「いつからだ?」


 ジロリと周囲をにらむ。


「これが初めてではないだろう。いつから彼女をないがしろにしていた」


 静かに激怒するイザークの迫力に弁解すらできないようだ。

 罰を避けられない状態だろう。自分のせいで誰かが罰せられるなんて、いたたまれない。

 すくみあがっている三人は青白い顔をして、今にも倒れそうだ。


 こんな時は――。


「イザーク」


 背を向けているイザークに声をかけ、近づいた。


「私が好きで運んでいたのです。少し力をつけた方がいいと思ったので」

「なぜ、そんなことをする必要がある?」


 そっとイザークの手を取ると、彼は驚いたのか体をビクリと揺らした。


「ネザークロウの洞窟へ行くためですわ!」

「まだ、そんなことを言っているのか!?」


 イザークは呆れを含んだ声色を出す。


 しめた、話題が逸れた。


 彼の手を両手でギュッと握りしめた。


「お願いです、私を連れて行ってくださいませ」

「だめだと言っているだろう! 危険すぎる」


 握った手に力を込め、上目遣いでイザークを見る。


「……どうしてもダメですの?」


 イザークはグッと言葉に詰まり、顔をプイッと背ける。


「じゃあ、私と賭けをしましょう。イザークを納得させるほどのことを見せたら、連れて行ってくれますね?」


 イザークは少し考えたあと、鼻で笑う。


「いいだろう。俺を納得させるなにかがあれば、連れて行こう」


 やったわ、これで言質は取れた。ここにいる皆が証人だわ。


 次に突っ立っている皆に顔を向けた。


「執事長、今すぐ薪を運んでいただけるかしら。消耗が激しくてね」


 執事長は肩を震わせた。


「かしこまりました。今後は切れることがないように致します」


 返事をするやいなや、さっそく誰かに指示するため、走って消えた。


「メイド長、喉が渇いたから、今すぐ部屋に紅茶を運んでくれる? 焼き菓子もあれば嬉しいわ」

「はい、わかりました」

「そこの三人も連れて行っていいわ。手伝いが必要でしょう」


 これでうまく場を収めることができるかもと思った時、


「待て。お前たちの処分は追って連絡する。荷物をまとめておけ」


 イザークの怒りは収まらないようだ。


 今にも泣きだしそうな三人をメイド長が引きつれ、立ち去った。


 残されたのはドリーとイザークと私。そこでイザークは、なにかを言いたげな視線を投げた。


「南部から来た私など、受け入れることは難しいのでしょうね」


 北部と南部の確執は根っこの部分にも蔓延っている。


「――すまなかった」


 イザークはポツリとつぶやく。


「こんなことは二度と起こさないと誓おう。――あんたは、こんな対応をされていいわけじゃない」


 イザークは気づかなかったのも自分の落ち度だと告げた。


 それは私に対して申し訳なく思っているようで、しょげて見えた。


 思わずクスッと笑みがこぼれた。それは、あの夜を思い出したから。


「私のことを一番先にないがしろにしたのは、イザークじゃないですか」


 責めるでもなく微笑みながら告げる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ