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この結婚は王命ですから。初夜で拒絶された花嫁です、それでは自由にやらせていただきます!  作者: 夏目みや
第三章 近づく距離

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 あなたが屋敷に閉じ込めるから、こうやって散策しているのよ。


 イザークが一点を見ていることに気づいた団員たちが私に顔を向けると、深々と頭を下げた。


 大人しく観戦して、邪魔するつもりはなかったのに。仕方ないわね。


 スッと立ち上がると競技場に繋がる階段から下りた。


 地面に足をつけると走って来たイザークが、いつの間にか目の前にいた。それに続いて団員たちの姿も。

 

 イザークを前にして、彼らは後方に一列で並んでいる。


「大人しく観戦しているつもりだったのだけど、邪魔してごめんなさい」

「――いや」


 イザークは小さく首を振る。


「でも、すごい迫力ね。皆さん、必死に剣を扱っていらして、素晴らしいわ」


 南部では屋敷に競技場などは造られていなかった。それだけ平和だったということだろう。


「北部の平和は皆さんの手で守られているのね」


 にっこり微笑むと騎士たちの頬が少し上がった。


「あら、それは……」


 イザークが手にしていた剣が気になった。


「ああ、これは祖父の形見の剣だ」


 ミスリルで作られた剣は柄の部分に細かな装飾と、宝石がはめ込まれている。


「素晴らしい剣ね」


 重厚な造りの剣は見るからに立派だった。私が興味深く見ていると、イザークは剣をグイッと前に突き出した。


「持ってみるか?」

「私が?」


 イザークはよかれと思って言ってくれたのだろう。好意を無下にするわけにもいかず、おずおずと両手で受け取った。


「お、重っ……!!」


 案の定、剣の重さに耐えかねて、落としそうになる。見かねたイザークが手を貸してくれた。


「重すぎですわ。これを片手で扱うなんて、すごい力ですのね」


 両手で持ってもプルプルと震えたのに、片手でなんて絶対無理だ。


「いや、すまない。そこまで重いとは思わなかったんだ」


 イザークはあたふたと動揺している。


「イザーク様、さすがに女性にその剣を持たせるのは無理です」


 見かねた騎士たちから声がかかる。


「そ、そうか。興味深そうだからいけると思ったのだが……」


 イザークは自分と同じぐらい、私に力があると思ったのだろうか。苦笑してしまう。


「私には無理ですわ。それこそ大事な剣を落としてしまっては悪いですし」


 彼が大事にしているものなら、なおさらだ。


「――こうも力の差があるんだな」


 イザークはポツリとつぶやいた。わかってくれたようで嬉しい。グッと唇を噛みしめ、顔を上げる。


「ここからはどこへ?」


 イザークの質問にゆっくりとうなずく。


「屋敷の中を見て回ろうと思いまして」

「そうか。俺が案内しよう」


 イザークは振り返ると、一列に並んでいた騎士たちに指示を出す。


「各自、トレーニングをしていてくれ。俺は少し出てくる」


 イザークの指示により、騎士たちは稽古に戻った。


「少し待っててくれ」


 イザークは私にその場で待機しているように言う。上着を取りにいったのだろう。


「ドリー、あなたも一緒に行きましょう」


 するとドリーはゆっくりと首を横に振る。


「いいえ。私は部屋に戻っています。イザーク様と一緒ならば安心でしょうし。それに二人で過ごす時間も大事じゃないですか。夫婦なのですから」


 ドリーはイザークをあまり良く思っていないように感じていたので、その発言に驚いた。


「……先日の態度を見て、少し見直しただけですよ。不器用ながらもシャルロット様を労わる気持ちがあるようなので」


 私の顔を見たドリーは心を読んだみたいだ。彼女の発言にクスリと笑う。


 ドリーがこの場を去ると、入れ違いでイザークが戻ってきた。


「行くか」


 どうしてこの人は私を案内してくれる気になったのだろう。ぼんやりと思う。


 だが好意を無下にするわけにはいかないと思いつつ、彼の隣に並んだ。

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