表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この結婚は王命ですから。初夜で拒絶された花嫁です、それでは自由にやらせていただきます!  作者: 夏目みや
第三章 近づく距離

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/73

29

 クスッと声が漏れてしまうと、イザークが顔を上げた。


「そんなこと、気になさらないでください」


 私は思わず手を伸ばし、彼の頭に触れる。


「私はただ、こうやって様子を見に来てくださっただけで、じゅうぶんですわ」


 そっと彼の頭を撫でたところでハッとする。


 これでは小さい子にするみたいではないか。


 今さら引っ込みがつかなくなってしまったので、そのまま彼の頭を撫で続けた。


 お、怒っているわけではないわよね……?


 ドキドキしながらも彼の頭に触れたあと、そっと手を離した。


「……今後はもっと気を配ると誓う」


 彼がぽつりとつぶやいたので、私は笑顔になる。


「ありがたいですわ」


 どうやらイザークは私と歩み寄ると決めたようだ。うふふと笑った。


「今日はゆっくりしているといい」

「あ、でも、私、街へ……」


 始めたばかりの食堂がどうしても気になる。


「ダメだ。昨夜倒れたのだから、部屋で様子を見たほうがいい」


 イザークは頑として譲らなかった。


「街でなにか必要なら、ロゼールに言えばいい。あとであいつを寄こす」


 まあ、ロゼールを寄こしてくれるのなら……。渋々だがイザークの案を受け入れることにした。


「朝食も部屋で摂るといい。あとで届けさせる」


 イザークは椅子から立ち上がる。


「じゃあな」

「待って」


 そのまま部屋から出て行こうとしたので、呼び止めた。


「ありがとうございます、いろいろと」


 私が改めてお礼を言うと小さく、「ああ」と聞こえた。そのままイザークは振り返らず、退室した。


 だが去り際に見えた横顔は真っ赤だった。


 なんだ、照れ屋なのね、イザークって。


 クスクスと笑っていると入れ違いでドリーが顔を出した。


「おはようございます、シャルロット様」

「おはよう、ドリー」


 ちょうど良かった、昨日のことを彼女にも謝らなければ。


「昨日はあなたに迷惑かけたわね」

「いえ、とんでもございません!」


 ドリーは大げさに両手を振った。


「もとはと言えば、果実水を取りに、あの場を離れた私が悪かったのです。戻ってきたら、イザーク様とお話をされていたので、声をかけそびれてしまいました」

「私、あのまま湯あたりしたみたいなんだけど……」

「はい、イザーク様の慌てる様子が外にまで聞こえましたので、助けに向かいました。赤い顔でぐったりとしていらして。まずは場所を移動し冷やしました」


 それは二人に迷惑をかけてしまって、大変だったはずだ。


「着替えは私がさせましたので、ご安心ください。ですが、このお部屋まで運んでくださったのはイザーク様です」


 そうだ、この部屋に寝ていたということは、運んでくれたということだ。


「その後も、深夜に何度か様子を見に来られていましたよ」


 全然気づいていなかったし、イザークもそんなことを言っていなかった。寝顔を見られていたのだとしたら、恥ずかしい。


「湯あたりしたシャルロット様を見て『いつもこうなのか?』と質問してきましたし。南部にいた時から、たまに湯あたりされていましたよね」


 考え事に集中できる入浴が大好きなので、つい長湯してしまう時があった。


「そこでちゃんとお伝えしました。南部の秘宝と呼ばれるシャルロット様なので、くれぐれも大事に! 宝石だと思って扱って欲しいと!」

「それはおおげさだわ」


 ドリーは時折過保護なので、苦笑する。


「それに、倒れたシャルロット様を見て、いたく反省している様子でしたよ」

「そんな……彼のせいじゃないのに」

「ふと思ったのですが、イザーク様って常に男に囲まれていませんか?」


 ここに来てからのイザークを思い浮かべる。


「確かにそうかも」


 騎士団の仲間や部下たち、いつも行動を共にしているのは男性だ。


「だから、女性の扱いをあまり知らないのではないですか? 湯あたりしたシャルロット様を見て、自分たちとは体つきも体力も違うと、思うところがあったのではないでしょうか」

「そうなのかしら?」

「姉妹もいらっしゃいませんし。シャルロット様にどうやって対応したらいいのかわからず、混乱していたんじゃないでしょうか」


 言われてみれば、それも一理あるかもしれない。

 日頃から体を鍛えている騎士たちといつも接しているし。

 彼らは丈夫な体だし、湯あたりなどしないのかもしれない。


「でも、自分たちとの違いを実感して、ちょっと対応が変わるかもしれないですね。優しくなるんじゃないですか」

「そうだったら嬉しいのだけど」


 冷たく突き放されるような言葉も、私の扱いに困っていただけ、だったらいいな。徐々に慣れていけば、彼の本心が見えるかな。


「まあ、でも、だからと言って最初の失礼な態度の免罪符にはなりませんが!」


 ドリーは腰に手を当て、口を尖らせた。


「ドリーったら。厳しいわね」

「これからどんな態度を取るか、じっくり見させてもらいましょう」


 ドリーから監視されているのなら、下手なことはできないわねと、クスリと笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ