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この結婚は王命ですから。初夜で拒絶された花嫁です、それでは自由にやらせていただきます!  作者: 夏目みや
第二章 北部の発展を目指して

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「美味しい!!」

「こんなに大きなお肉、初めてだ!!」

「俺も、俺も!!」


 トビーが触れ回ってくれたおかげか、食堂はあっという間に長蛇の列が出来た。主に子供の姿が多く、最初は半信半疑で並んでいた彼らもスープを受け取ると、満面の笑みを見せた。


「はい、並んで、前を押さないで」


 雇った人たちも初日ながらも、一生懸命に働いてくれた。

 私はこの食堂に笑顔が広がっていく様子を椅子に座り、ずっと眺めていた。


「シャルロット様」


 ロゼールがいそいそと近づいてきた。


「お疲れでありませんでしょうか?」


 私を気遣う言葉にクスリと笑う。


「それが全然大丈夫よ。ここにいる皆の笑顔が見られて、疲れなど吹き飛んだわ」


 皆が美味しいスープを食べて笑顔になっている。これで今日一日、幸せに過ごして欲しいな。


「それでね、ロゼール。今後のことなのだけど――」


 私はこの食堂の未来について話し合った。


「従業員に払う賃金、主に経理に詳しい人間を雇って欲しいの。あとはここのまとめ役となる人物を一人立てて欲しい」


 これから食堂はもっと忙しくなるだろう。今日は始まりの日に過ぎない。


「あとは市場に行き、一番大きな寸胴鍋を買ってきて。今日はあの鍋で間に合ったけれど、明日からは話が広まり、もっと忙しくなるはずよ」

「わかりました」

「人手が足りなければ、もっと雇ってもいいわ。賃金は私が出すし、食糧は定期的に屋敷に取りに来るようにして。減ってきたら補充しておくよう、南部の父にお願いするから」


 テキパキと指示を出す。


「私もなるべく顔を出すようにするけれど、私が指示しなくても、回るようにしてちょうだい」


 あくまでも出資はするが、運営は採用した人達で回すよう、お願いした。


「シャルロット様は――」


 ロゼールは真剣な表情を向ける。


「どうしてここまで、してくださるのですか?」


 ロゼールの問いかけに一瞬、きょとんとした。


「私は自分ができることをしただけよ」


 偽善者と思う人もいるかもしれない。それでも――。


「食材もあるし、お金もある。だったら必要としている人たちに与えた方がいいじゃない」


 どうせ私一人では使いきれないのだから、と付け加えた。


「ですが北部の貴族でさえ、ここまでのことをしてくださった方はいませんでした」

「そう? だったら南部の貴族の気まぐれとでも思って」


 私はくすりと笑うと椅子から立ち上がる。


「そろそろ、明日の仕込みもお願いしないとね。その前にメニューも決めないと。お皿も洗って明日の下準備もして、大忙しね」


 活気のあふれる職場を見て微笑んだ。


 ***


「皆さん、初日はお疲れさまでした」


 周囲をぐるりと見回す。疲れた様子もあるが、皆がいい顔をしていた。


「明日からもよろしくお願いしますわ」


 ドリーに視線を投げると、彼女は静かにうなずいた。


「では、本日の賃金を渡します。初日なので手渡しです」


 経営を任せられる人物を雇うまで、賃金は手渡しにすることにした。その方がやる気も出るだろう。


「えっ、こんなに!?」

「ええ、本当にこんなにたくさん貰っていいのですか!?」


 皆が賃金を受けとり、驚愕している。


「いいのよ。今日は記念すべき一日目ですもの。これからも頑張ってくれたら、それでいいわ」


 にっこりと微笑む。


「明日からもまた忙しくなるだろうけど、よろしくお願いするわ。私もなるべく顔を出せるようにするから」


 皆の顔を見て告げた。


「じゃあ、ドリー。帰りましょうか」

「はい」


 帰宅する私たちを皆が店の外まで見送りに来てくれた。


「ありがとうございました!」

「ありがとうございます!!」


 皆が口々にお礼を述べた。


「あなたは南部が遣わしてくれた女神様のようです」


 トビーがキラキラと輝く眼差しを向けてくるから、噴き出してしまう。


「そんなんじゃないわよ。私が女神だなんて罰があたるわ」

「いいえ、あなた様ほど慈悲にあふれた方はいままでいませんでした」


 トビーに笑って手をふる。


「ありがとう、これからも頑張るわ」


 見返りを求めたわけではないが、感謝されるとやはり嬉しいものだ。


 そして屋敷に到着した頃には日は沈み、あたりはすっかり暗くなっていた。

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