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この結婚は王命ですから。初夜で拒絶された花嫁です、それでは自由にやらせていただきます!  作者: 夏目みや
第二章 北部の発展を目指して

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「俺は料理人だったんだ」

「まあ、そうなのね」


 じゃあ、なおさら都合がいいじゃない。私は興奮して声を出した。


「経営不振で勤めていた店がなくなって職を失ってしまい、途方に暮れていたんだ。だが、また料理を皆に振る舞えるのなら、俺はやりたい。俺の料理で皆が笑顔になるところを見たいんだ」


 拳をギュッと握り、男性はグッと唇をひきしめた。


「だからお願いします、俺を雇ってください」


 男性は深々と頭を下げた。


「ええ、もちろんよ! ここで美味しい料理を作って、皆に食べさせてあげてちょうだい」


 すると次々と声が上がる。


「私も! 料理が得意です!」

「俺、料理は苦手だけど、大工仕事が得意なんだ! ここの剥がれた床を直すことができます!」


 皆の士気が高まったようで、私はにっこりと微笑む。


「では、皆さん、各自できる仕事を、よろしくお願いしますわ」


 ロゼールは人を引きつれ、屋敷に食糧を取りに行った。護衛としてきているので、最初は私の側を離れるのを渋った。


「もし問題があったら、困ります。今回雇った中には男性もいますし」

「ドリーがいるから大丈夫よ」

「ですが……」

「私では不満だとでも?」


 ロゼールが渋っているとドリーがズイッと顔を前に出した。


「人のことより自分のことを心配した方がいいんじゃない?」


 ドリーはロゼールに向かって、ポイッとなにかを投げつけた。


「わ、俺の小銭入れ。いつの間に!?」

「ついさっき。どのぐらい気配に敏感か試させてもらったけど、全然だめね。私が近づいたことにも気づかないなんて。それで護衛なんてできるの? 愚鈍」

「……愚鈍」


 辛辣な言葉を投げられたロゼールは唖然とした。

 ドリーは両手を組み、ロゼールの前に立つ。


「ここは大丈夫。シャルロット様には誰も危害を加えさせることはできない。私がいるから」


 ドリーは堂々と胸を張る。


「それよりも早く食糧を持ってきて! 屋敷の人間に話を通す人がいないと困るわ」


 しばらくするとロゼールはようやく納得したようだ。


「わかりました、行ってまいります」

「お願いね」


 そして私は腕まくりをする。


「では、私も手伝いますか。ピカピカに磨き上げるわよ。さあ皆さん、準備をよろしくお願いしますわ」


 張り切って手を叩くと、皆が準備に取りかかった。


 ***


 掃除に夢中になっているとロゼールが人を連れて戻ってきた。


「シャルロット様、馬車に詰めるだけ食糧を持ってきました」

「そう、ありがとう」


 皆で食料を運びだし、テーブルに並べた。


「すごい、こんなに豪華な食材を使ってもいいのでしょうか?」

「もちろんよ。全部使って!」


 テーブルに並べられたのは塩漬けの肉の塊や南部特産の野菜たち。

 私にはなじみある食材だけど、北部では珍しいみたいだ。


「メニューはどうしましょうか? この食材では良いのがあるかしら?」

「そうですね……」


 料理人だと名乗った男性、名前はドルクと言った。


「具だくさんのスープはいかがでしょうか。凝った料理じゃなくても、じっくり煮込めばすごく美味いと思うのです。これだけの食材を使えば」

「そうね。具だくさんなら、お腹いっぱいになりそうだしね」


 野菜がゴロゴロに入ったお肉のスープ。うん、美味しそうじゃない!


「それでいきましょう! 具だくさんスープで」


 皆が張り切って賛同してくれた。


「じゃあ、野菜を洗う人、切る人、手分けしましょう。あとは食器を出す人も。もし、なにか足りないものがあれば遠慮なく言ってちょうだい。購入するから!」


 そして各自得意だと思える持ち場につき、作業を始めた。早い時間から作業を始めたので、午後にはスープが出来上がった。


 大きな鍋二つに煮込まれたスープはとても美味しそうだ。


「まずは皆で味見をしてみましょう」


 ドルクが皿に取り分け、皆でいただいた。


「美味しい!」

「本当だ、こんなに美味しいスープ、初めて食べたわ!」


 皆からも好評の声を聞き、ドルクもとっても満足そうだ。


「皆さん、味見は終わったかしら?」


 食堂をぐるりと見回すと、皆の満足そうな顔が見て取れた。


「じゃあ、今から炊き出しを開始するわ。トビー」


 名を呼ばれた少年はびくりと肩を揺らした。


「炊き出しをしていることを皆にお知らせしてきて。まずは子供が優先よ」


 トビーはコクコクとうなずくと、走って食堂を飛び出した。


 その後ろ姿を見て、にっこりと微笑んだ。


「さあ、忙しくなるわよ。みんなで配膳なども手伝いましょう」


 その場にいた皆が一致団結してうなずいた。

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