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この結婚は王命ですから。初夜で拒絶された花嫁です、それでは自由にやらせていただきます!  作者: 夏目みや
第二章 北部の発展を目指して

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「……俺には頼まないくせに」

「はい?」

「――いや、なんでもない」


 ボソッと吐き出された言葉を聞きそびれてしまった。聞き返してみたが、彼は再び口を開く気はないらしい。


 沈黙が落ちた空間。先にいたたまれなくなった私が口を開いた。


「彼が忙しいようでしたら、結構です」


 ロゼールだって騎士団の一員であることから、魔物の討伐で忙しい時もあるだろう。私に付き添うより、大事な任務があるかもしれない。


「彼がダメでしたら、またドリーと二人で――」

「好きにするといい」


 あきらめかけた時、言葉を遮るように言われた。


「本当ですか?」


 表情がパアッと輝いた。これからやろうとしていることはロゼールがいた方が、絶対話が早く進む。ロゼールでなくても、ウォルクの街に詳しい人材がいれば助かる。


「ありがとうございます。しばらくロゼールをお借りしますね」


 騎士団を束ねるイザークから許可をもらったのなら、連れまわしても大丈夫だろう。


「なんだか、私専属の騎士みたいですね」


 クスリと笑うと、なぜかイザークはムッとしたような表情を見せた。


「あっ、でも本当に忙しい時は無理に私に付き添わなくても結構ですので」


 あらかじめ、できる範囲でいいと言った。

 そこでふと思い出した。


 そうだわ、聞いておかないと。


「私の持参金のことなのですが」


 お金の話になるとイザークは身構えた。


「もし必要な物があれば使っていただいて――」

「いや、それはあんたのものだ。俺に気を遣わずとも好きにすればいい」

「わかりました」


 南部から持ってきた食料も保管したまま、持参金もどうこうしようとは思わなさそうだ。

 どうしてそこまで頑なな態度を取るのか不思議にも思うが、今は好都合だ。


 あとから文句を言っても、知らないんだから。

 私はにっこりと微笑んだ。


 ***


 そして翌日も、早い時間にドリーに起こされた。


「シャルロット様、起きてくださいませ。朝食の時間に遅刻してしまいますわ」


 そうだ、北部の朝食は早い。

 その前に起きて支度を終わらせなければならない。

 半分寝ぼけた頭でベッドから起き上がった。


 冷たい水で顔を洗うと、シャキッと目が覚めた。そのまま着替えを終えて、ダイニングに向かう。


 ダイニングの扉前にいた執事長が私の姿を視界に入れた。


「おはようございます、奥様」

「おはよう」


 奥様なんて呼び方、いまだに慣れない。

 だって今まで奥様らしいことを一つもしていないのだから。


「奥様、本日イザーク様はもうお出になられました」

「えっ、そうなの?」


 こんなに早い時間にどこへ出かけたのだろう。


「深夜、魔物の咆哮が聞こえたとかで、そのまま暗いうちに向かいました」


 確かに、魔物相手では時間が決められたものではないだろう。

 それでも不規則な時間に心配になる。


 北部の安全を守るため、毎日気の抜けない日々を送っているのではないかしら?


 眉間に深く刻まれた皺はそのせいなの?


 ……いえ、あれは性格だわね。


「イザーク様は不在ですが、奥様だけでも先に召しあがってください。メイドに準備させますので」

「ありがとう」


 広いテーブルの、昨日も腰かけた場所に座る。


 執事長はそのまま、どこかへ行った。


 しばらくすると現れたのは皿を手にしたミーシャだった。彼女の出現に、背後に控えていたドリーの放つ空気がピリッとしたのを感じた。


 ミーシャはズカズカと近づいてくると、私の前にドンッと皿を置いた。反動で食材が皿から飛び出てしまうのではないかと、心配になった。


「どうぞ」


 ニコリともせず、荒々しい態度を見せた。

 運ばれてきた皿を見て、目を疑った。そこには黒ずんで固そうなパンが一つ、ちょこんと乗っているだけだった。


 え、これが朝食なの?


 驚きすぎて目が点になる。


 これが前菜でこれから料理が運ばれてくるのかしら……?


 黒ずんだパンを前にして目をパチパチと瞬かせていると、クスクスと笑う声が聞こえた。

リアクションなどありがとうございます。

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