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この結婚は王命ですから。初夜で拒絶された花嫁です、それでは自由にやらせていただきます!  作者: 夏目みや
第二章 北部の発展を目指して

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「イザーク様も心配なさることでしょう」

「あら、その点は大丈夫だと思うわ。彼は私がなにをしようと気にしないわ、好きにしていいと言われているの」

「だからと言って女性二人で街へ下りるだなんて危険です」


 ロゼールはまだ納得いかないようだ。


「じゃあ、あなたが案内してくれるかしら?」

「はい?」


 驚いて顔を突き出すロゼールに、にっこり微笑んだ。


「ちょうど良かったわ。あなたにお願いがあるのよ」


 ここでロゼールに出会ったことはある意味チャンスだ。私の思いついたことを、すぐさま行動に移しなさいと、神のお告げのような気がするわ。


「い、いったい、なにを……」

「大丈夫、お金はたくさんあるから! ねっ、ドリー!!」


 ドリーは静かにうなずくと、彼女に預けていた金貨の詰まった袋をチラリと見せた。ロゼールの喉がごくりと鳴る。


「でもあなた、私たちを見かけて心配して追いかけてきてくれたのでしょう? ありがとう」


 ふわっと微笑むとロゼールの顔が赤くなった。


「それでね、あなたにお願いというのが――」


 その場でドリーとロゼールに私の提案を話した。


 ***


 それから日が暮れるまで街にいた。


 ロゼールにそろそろ帰りましょうと急かされ、ようやっと屋敷に戻った。


 部屋で着替えを済ませ、夕食の時間だと告げられたのでダイニングに向かう。

 執事長が扉の側でたたずんでおり、私に気づくと扉を開けた。

 ダイニングの長いテーブルの一番奥には、イザークが座っていた。


「お待たせしてしまってごめんなさい」


 一言挨拶をするとそれを合図に食事が運ばれてきた。


 少量の野菜を使った前菜にポタージュのスープ。そしてまたしても固い肉が食事に出された。

 なかなか切れない肉を前に、ナイフとフォークを持って奮闘していると、視線を感じた。

 その先に顔を向けるとイザークがワイングラスを片手に私を見ていた。


「どうかしましたか?」


 なにか言いたげな様子を察したので、聞いてみた。


「今日、ウォルクの街へ行ったそうだな」


 やはり、すでに耳に入っていたか。ロゼールが報告したのだろう。


「ええ、とても楽しかったです。久しぶりにワクワクしましたわ」


 正確には、自分がこれからやろうとしていることを考えて、だけどね!


「街に下りるなら、なぜ一言声をかけて行かないんだ」


 その声には非難の色が含まれている。


「いけませんでしたか?」

「当然だろう」

「そんなに一緒に行きたかったのですね」

「違う」


 即答されたので首を傾げた。


「ですが、お好きに過ごしていいと仰ったのはイザーク様じゃないですか」


 私としては責めるつもりはなく、単に思ったことを口にしただけだ。


「確かに言った……な」


 だが、イザークはグッと言葉に詰まった。


「どこまでが自由でどこからがダメだとか、お互いの感覚の違いなのでしょうが、わかりませんよね。会話をしないと」

「この屋敷の中では好きに過ごせばいいと言ったつもりだった」

「あら、もっと広く解釈してしまってすみません。私はこの北部の領域全土でのお話かと思っていましたわ」

「いくらなんでも、それは広すぎるだろう」


 一生懸命にナイフを入れるが、肉はなかなか切れない。


「……かしてみろ」


 見かねたイザークは私に皿を寄こすように言ったので、従った。するとイザークは器用に肉を切り分けた。


「あら、お上手ですのね」


 褒めて軽く手を叩くが、イザークはチラッと視線を投げただけで、無表情だった。

 意外に面倒見がいいのかもしれない。


「では、お互いのすり合わせが必要だと思うのですけど、好きに過ごしていいのは、このお屋敷とウォルクの街ではどうでしょうか?」 

「それも広すぎる。この屋敷だけで」

「いえ、そこは譲れません。ぜひウォルクの街も入れてください」


 絶対に譲らないと断固たる思いで彼の目を見つめた。彼は唇を強く噛みしめたあと、プイッと視線を逸らした。


 あ、勝った。


 さきほど切っていただいた肉をパクッと口に入れた。


「今日の夕食、とても美味しいですわ」


 勝利の味がするわ。確信した私はニコニコと微笑んだ。

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