表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この結婚は王命ですから。初夜で拒絶された花嫁です、それでは自由にやらせていただきます!  作者: 夏目みや
第二章 北部の発展を目指して

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/64

14

「楽しみですね、シャルロット様」

「そうね」


 窓の外の景色は曇り空だが、私の心は晴れていた。

 やがて街の外れにある、馬車の停留所に到着した。


「わあ、すごい」


 買い物客で行き交う人々で街はにぎわっていた。


「結構栄えているみたいね」


 早速ドリーと共に街を歩いてみた。


 この様子では馬番の少年が言った通り、治安は悪くないのかもしれない。昼間に女性が出歩けるのですもの。


 少し歩いてわかったことがある。街の北通りは貴族御用達の、高級店が立ち並ぶ。西通りは庶民の店で一番にぎわいを見せている。


 あと一本裏通りは治安が良くないので、あまり近づく者はいないということだった。


「ここはどこかしら」


 気をつけていたが、街のメインストリートから外れてしまったようだ。あまり人気のない場所に来てしまった。


 その時、背後からドンッと衝撃を受け、転んでしまった。


 いったい、なにごと!?


 弾みで軍資金として持ってきていた小銭入れを落としてしまう。


 それをすかさず拾い上げたのは、十二歳ぐらいの少年だった。すごい早さで走り去ろうとした瞬間、ドリーによって、むんずと首根っこを掴まれていた。


「――この無礼者。お前は誰に手をかけたのか、わかっているのか」


 少年の首には背後から銀色に光るナイフが当てられている。少しでも動いたら切れそうだ。


 少年は目を見開き、必死になって弁明した。


「ご、ごめんなさい。許してください……」

「許すわけない。その命で償え」


 ドリーはドスの利いた低い声を出す。少年は今にも泣きそうだ。


「ドリーもういいわ。離してあげて」

「ですが納得できません。シャルロット様を転ばせるなど……」


 ドリーは少年を抑えつけながらギリギリと歯ぎしりを見せた。


「な、なにをしているんですか」


 その時、背後から声が聞こえ、姿を現した人物はドリーに近づいた。


「とりあえず、ナイフをしまってもらえますか」


 あの長髪は――。


 イザークの部下、ロゼールだった。


 ドリーは目を細め、ジロリとロゼールに鋭い視線を向けた。


「……つけられている気配で気づいていたけれど、邪魔しないでくれる?」

「ささ、そんな物騒な物をしまっていただけますか? あなたがケガをしては大変だ」

「私がケガ?」


 ロゼールの心配を鼻で笑ったドリーは、ゆっくりとナイフを下ろした。


「こいつは警備隊にしょっぴいてもらえますか?」


 ドリーがロゼールに少年を押し付けた。見れば少年はガリガリに痩せ、身なりも粗末だった。


「いえ、いいのよ。あなたにも事情があったのでしょう」


 私は必死で止める。グッと唇を噛みしめ、少年に近づいた。


「シャルロット様……」


 ドリーはため息をつき、目に涙をためた少年はうなずいた。


「ずっとご飯を食べてなくて……弟と妹もお腹がペコペコで……」


 少年は恥ずかしそうにうつむいた。


 薄手の身なりに靴もボロボロだ。

 これからもっと寒くなってくるはずだ。彼はこの冬を越せるのだろうか。それも心配になるほどだった。


「あなた、ご両親は?」

「あ、父ちゃんは俺が小さい頃、魔物に襲われてしまって……」

「そうなのね……」


 今は魔物による被害が少ないと聞く。それはイザーク・カロン侯爵が統治するようになってからだそうだ


 毎日の見回り、みずからも総指揮官として魔物に立ち向かう。

 それにより、北部は昔よりも魔物の被害が減り、平穏が保たれているらしい。


 だが、こういった被害にあった人もいることを忘れてはいけない。


 なんとかしなくては。

 そのために北部に嫁いできたのだから――。


「あなたに、これをあげるわ」


 さきほどドリーと一緒に、屋台で売っていた焼き菓子を買ったばかりだった。それを少年に手渡した。少年はすぐさま受け取ると、深々と頭を下げた。


「もう行って。今度は危ないことをしてはダメよ」


 少年は何度もお礼を言いながら、裏路地へと消えた。

 彼が立ち去ったあと、ロゼールと向き合う。


「それで、あなたがどうしてここにいるの? ロゼール」

「それはこちらの台詞です、シャルロット様。馬番から聞いて、慌てて飛んできましたよ! いったいどうしたのですか、護衛もつけないなんて!」


 話を聞くと、愛馬に餌をやろうと馬小屋に行く途中、馬車に乗り込む私たちを見かけたそうだ。不思議に思い、馬小屋の少年に聞いたところ、街に出かけたことを知ったようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ