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異世界大使館はじめます  作者: あかべこ
26:二人きり冬休み

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26-13

夏沢からの報告の電話が来たのは翌日、夕食の豚生姜焼きを作っていた時だった。


ポケットの電話をスピーカーに切り替えると『もしもしー?』とテンション低めの声がした。


「おう、聞こえてるぞ」


『昨日の件報告しようと思ったんですけど、何かしてます?』


「夕飯の生姜焼き作ってる」


『生姜焼きかー、そういやしばらく食ってないなー……というか料理中に電話取っていいんですか?』


「しょうがないだろ、完成1分前に電話来たんだから」


グダグダ言ってるうちに豚肉と玉ねぎもいい具合に火が通ったので、ご飯と千切りキャベツを入れたどんぶりにざっと乗せて隅っこにマヨネーズを添える。


これで洗い物を極限まで減らした生姜焼き丼の完成である。


『じゃあ食いながらでいいです、木栖さんいます?』


「食卓の方にいる、ちょっと待ってろ」


スマホをポケットに戻し、どんぶりと箸を手に食卓に戻る。


食卓をきれいに拭き上げてお茶の準備を整えていた木栖にどんぶりを渡した後、食卓に通話モードのスマホを置く。


『もしもーし、2人とも聞こえてます―?』


「夏沢か?」「聞こえてるぞー」


『じゃ、昨日の話の報告を。前提として言っときますけど、今日の報告は現時点で分かってることだけなんで、ちゃんとした報告書は冬休み明けまで待っててくださいね?』


「わかった」


夏沢の報告を聞きながら俺たちは生姜焼き丼に口をつける。


今回の調査には外務省・防衛省のみならず金羊国側への協力を要請したそうで、そのおかげでひとつ犯人はだいぶ絞り込めたらしい。


『犯人なんですけど東の国側の関係者の可能性が高いです』


「東の国?西じゃなくてか?」


『金羊国側の協力者に言わせれば手口が西のやり口じゃないんですって』


「手口の差か、確かにそこは重要だよな」


「そんなに重要なのか?」


『大事ですよー。窃盗系は空き巣なら家主不在の時間を、強盗なら警備の手薄な時間帯を狙う必要があって何かと時間勝負になりがちなんですよ。だからみんな自分が慣れてる方法でしかやらないんです。


窃盗専門の捜査官はそれである程度犯人絞り込めるらしいですよ?』


よく分からんがそういうものなんだろうか?


俺の疑問は置いといて、夏沢は話を続けていく。


『金羊国側の協力者曰く、西の国や教会の連中はもっとやり口が雑で魔術で解決できることは全部魔術で解決する能筋馬鹿集団だからわざわざカメラに塗料ぶっかけた後にコードを切って破壊なんてまだるっこしい事しない、こんな念入りな破壊を行うのは東の国の連中だろう。って』


その口ぶりで脳裏に白獅子の美女がよぎったが気のせい、という事にしておきたい。


「でも北や南にいる日本との交流反対派の可能性もあるだろ」


『どっちも日本から利益を得てる交流賛成派がいますからね、直接日本側へ危害を加えるのは難しいんじゃないかって』


日本にちょっかいをかけると内輪もめに発展するその2か国では反対派が大きく動くのは難しい、という予測はおおむね納得が行く。


もちろん可能性はゼロじゃないので、両国に釘を刺しておく必要もあるだろう。盗難未遂については伏せておくべきか? そこは要相談だな。


『それと武器庫なんですけど、鍵の盗難も発覚しました』


「ほんとか?!中身は無事か?」


『物理キーは開けられたっぽいんですけど、ダイヤルロックは突破できなかったみたいですね。明日カメラの再設置と同時に武器庫の鍵交換やります』


「今日の分は?」


『鎖で縛って南京錠ロックしてあります、応急処置ですけど今夜は入られないとも限りませんからね』


「OKよくやった、新しい鍵は?」


『本省預かりにしときますんで休暇後に取り来てください、暗証番号も変更しとくんでその時に』


「わかった、ありがとう」


木栖にとってはそこが一番重要だろう。


銃火器類は木栖にとって商売道具であるし、日本側の権益にも絡んでくる。そんなもん休みの間に盗まれたら切腹物だろう。


俺としても武器が盗まれなかったのは助かった、異世界産コピー銃とか洒落にならなさすぎる。


『あと、私らの代休申請と伊豆土産もよろしくお願いします。それじゃ、いい休暇を』


夏沢が最上級の皮肉をぶち込んで電話を打ち切る。


「……伊豆土産にいい酒でも持ってくか」

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