26-12
こうして俺たちの部屋がネットで晒された事件のことは知人の弁護士に丸投げされ、俺たちは韮山での放蕩冬休みに戻った矢先。
「ちょっと大丈夫か?」
今日も今日とて書斎で読書(と言っても今日読んでいたのは漫画なのだが)に勤しんでいた俺のところに、木栖がふらりと現れた。
「別にいいけど、どうした?」
「夏沢がお前にも聞いて欲しい話があるらしい」
休暇中にわざわざ電話が来たという事は重要な案件なのだろうと察して持っていた本を閉じ、木栖の方を向く。
木栖が通話中の携帯電話を書斎の机に置くと電話をスピーカーモードに切り替えて、電話の向こうの夏沢の名前を呼んだ。
「真柴にも聞いて欲しい報告ってなんだ?」
『大使館に侵入者が出ました』
「どういうことだ」
『私らが休みの間、大使館はオーロフさんとアントリさんが様子見に行ってくれてるのは知ってますよね?それで今朝オーロフさんが様子を見に行った際に、大使館の監視カメラの破壊が確認されました。
すぐにオーロフさんが日本側に連絡してくれて、ちょうど都内にいた私と深大寺くん、あと石薙さんが確認に駆り出されたんですよ』
全員冬の長期休暇の帰省中だから都合よく都内にいるのは深大寺ぐらいしかいない、というのは分かる。夏沢は極寒の青森に帰るのが面倒だったと考えれば納得もいく。しかし石薙さんはなんで呼んだのかよく分からん。
「普通に俺ら呼んでくれても良かったんだがな」
『今2人ともそれどころじゃなくないですか?炎上騒動が落ち着くまで大人しくしてた方が良いでしょ』
実は俺たちの暴露騒動はまだ落ち着いていない。
丸投げした弁護士によると、実はネットのいわゆる〝特定班〟により俺たちの熱海での行動の様子が調べ上げられていたのだ。
その中で熱海海上花火大会を見に行った際に木栖が女性にナンパされてたのを俺が追い払った姿を見ていた人が、その時の様子を詳細にネットに書き込んでおり、時期と外見的特徴から俺達であると特定された。
これにより俺たちが本当に付き合ってるのか?という話は、一応収束に向かっているものの、まだまだ完全鎮火とまではいかないのが実情らしい。
「俺の仕事に支障が出るようなら上も黙ってないだろ」
『それはそうなんですけどね。で、さっき被害内容確認して日本に戻ったんですけど大使館の監視カメラが丸々1台・大使館の備品が大小さまざま合わせて1000ちょっと、あとは壊された監視カメラだとか備品もあるんでその辺は買い直しですね』
「書類とかはどうなんだ?」
『1つ2つは触れられた形跡がありましたけど、大使館に置いてあるのがほぼ日本語資料だったおかげで狙われた形跡はないですね。だから物取りって判断されたんですけどね』
「そうか」
大使館に置きっぱなしになってる資料の中には重要なものもいくつかあり、鍵付き収納に仕舞ってはあるが盗まれたり紛失したりしたら困るものも多い。
それらが無傷な事に心から安堵した。
『ただ一つ問題がありまして』
「何だ?」
『一番大きく荒らされてたのが銃火器類のある倉庫で、どうも銃火器狙いだったみたいなんですよね』
大使館には自衛を目的として多種多様な銃火器類が配備されており、盗難防止のため鍵付きのロッカーで厳重に保管されている。
それがどこぞから狙われたとなると落ち着かないものがある。
ちなみに地球からの支援を受けている金羊国も同様に銃火器類を保有しているが、金羊国で銃火器類は西の国からの侵攻を退けた虎の子的な位置づけであるのでその警備は大使館よりも厳重である。
「銃火器類の盗難未遂か……銃火器類を欲しがってそうなところとなると、西の国と教会か?」
『そこが一番有力でしょうけどあらゆる可能性を視野に入れて捜査させて貰いますよ』
「ホントにすまない」
『すまないって思うんなら私らのお土産は奮発してくださいよ?あとは休暇後にキリキリ頑張っていただければ』
「わかった、お土産は奮発しておく。ところで嘉神や他の奴らに連絡は?」
『そこは真柴さんにお願いしようかと。あと壊されたカメラの予算申請はお願いしますね?』
「いやそれは良いんだが、飯島に連絡したらいいのか?」
『外務省の方にも話はしてあるんでたぶんそうですね。じゃ、お土産期待してますんでよろしくー』
夏沢は言いたいことを全部言って電話を切る。
「今年の冬、休めなさすぎないか……?」
そんなぼやきに木栖がポンと俺の肩を叩いた。




