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筋肉は魔法世界を制す  作者: 清正
筋肉の夜明け
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第五話 筋肉、街へ出る

朝、清々しい空気の中で無限プッシュアップを嗜んでいると声をかけられた。

「マハト君、街に行ってみない?」

 今日はマハトが入学してから初の休日である。

「多分マハトくんはサンドラに来たばっかりだからあんまり街のこと知らないと思って……売店では買えないものもあるしさ」

 確かにここへ来てから授業とトレーニングしかしていない。息抜きもいいだろう。

「あぁ、行こう」


「あ、あの、私も一緒にいいかな……?」

 彼女はアンナ。マハトの隣の席の女の子だ。怖がっているのかあまり話したことはない。

「え、うん、別にいいよねマハト君」

「あぁ」

「!じ、じゃあ着替えてくるね!」

 アンナはそう言うと女子寮へとダッシュしていった。



 王都サンドラ。世界を形成する5大国の中で最も大きい国だ。

「アンナ、はぐれたらマハト君を目印に集まろう」

「う、うん。大っきいもんね」

「……」

 確かに街中でもマハトは飛び抜けて大きい。そのせいだろうか、人々にじろじろ見られている。

「それよりアンナ、なんでそんなお姫様みたいな恰好なの?」

「マハ……じゃない、えと、久々に街に出るからおしゃれしてきちゃった」

 顔を赤らめながら答える。

「そっかー。休日じゃなきゃ来れないもんね。あ、ここだよ!」

 テオが指さした先に『テイトス魔法具店』と書かれた看板が見えた。

「テイトス……」

 どこかで聞いた事があるような名前だった。

「? マハト君、入ろう」

 店に入ると所狭しと様々な魔法具が置かれていた。

「す、すごい!賢者アウルの金時計のレプリカだ!こっちは大魔導師エリンザーム仕様のローブ!こっちは……」

 テオが興奮した様子で説明している。まるで得意分野の話題を振られたときのオタクだ。

 アンナはというと薬の瓶や書籍を見ている。

「いらっしゃい。坊っちゃん詳しいね~」

「あ、もしかして店主のテイトスさんですか?"月魔ジャ"の特集を見てきました!」

 魔法使いのバイブル"月刊魔法ジャーナル"略して"月魔ジャ"。

 

「いかにも。ワシが8代目テイトスじゃ。今日は何を探しに来たんじゃ?」

「あの、杖を買おうかなと」

「魔法使いにとって杖は大事じゃ。選んであげよう」

 やり取りの最中マハトは店主と目が合った。

「! おぬしは……」

「彼はマハト君。最近学園に入ったんです」

「マハト!?」

「ど、どうしました?」

「まさか……いや、そんなはずはない……。すまんな、杖はこっちじゃ」

 店主は動揺を抑え、テオに合う杖の選定を始めた。

「マ、マハト君。これとこれどっちが良いと思う?」

 アンナが2つの小瓶を差し出して質問をした。

「こっちだな。大は小を兼ねる。万事に共通することわざだ」

「じゃあ、そうする!」

 アンナは大きい方の瓶を手に取り、レジへと向かった。今の会話を聞いていた店主が何かを確信した顔で近づいてくる。

「おぬし、これに見憶えはないか?」

 渡されたのは古びたガントレットだった。

「いや、わからない」

「そうか……。それは持っていけ」

「しかし……」

「いいんじゃ。いつか役に立つ時が来る。……500ギルじゃ」

「……」

 無理やり買わされたガントレットを手に店を出る。テオとアンナは良い買い物ができたようだ。

「暗くなってきちゃったね。そろそろ帰ろうか」

「う、うん……」

「? どうしたの?アンナ」

「お腹すいちゃって……」

「あ、じゃあ有名なミートパイ屋さんでも行こっか。マハト君もミートパイ好きだし」

「! あぁ行こう」

 マハトがここ最近で一番テンションが上った瞬間だった。

 


 その頃、サラ理事長は世界の中心に位置するザナドゥ特区にいた。

「遅かったなサンドラの理事長。すでに皆集まっておるぞ」

「えぇ、申し訳ありません。色々と忙しかったもので」

「まぁよい、では皆の者、始めるとするか"マナフ議会"を」



 体長5mにも及ぶ巨大な魔物ビアバイソンの肉を上質なバターと小麦粉で作ったパイで優しく包み上げて星型に焼いた、サンドラ名物スターミートパイ。たっぷりの砂糖と甘みを抑えたレモネードで作るシュガーサイダー。頬張る三人の顔は今にも溶けそうである。

「こんなミートパイがあるなんて知らなかった~」

「月魔ジャのおいしい店特集に載ってたからきてみたかったんだ~」

「……」ガツガツ

 マハトは一心不乱に食べている。

 

ガッシャアァァン

 

「おい、F組のくせにお姫様を連れてパーティごっこか?」

 テーブルを蹴り上げられ、ミートパイが店内に散らばる。

「表へ出ろ」

 3人組の男たちはそういうと誰もいない広場へと連れ出した。


「あわわ……3年生の、しかもB組だ……」

 テオが絶望的な表情で呟く。アンナは恐怖で声も出ない様子だ。

「そこのシュガーサイダー飲んでるお前が2年の転校生だな。リアムをアフロにしてくれたそうだなー?」

「……」ガリガリ

「! あれはリアム君が……」

言いかけたテオをマハトは制止する。

「それで……どうする」

「そうだな、ちょうど3対3だ。模擬バトルといこうじゃねぇか」

 そういうと彼は地面に何かを描き、結界を張った。一辺10m程の正方形だ。

「この結界は俺を倒さない限り消えない。つまりお前らにギブアップはないってことだ!」

「俺らのギブはもっとないけどな!アッハッハアァー!」

 テオとアンナは今にも死にそうな顔をしている。

 一通り笑い終えるとリーダー格の男が言う。

「あ~……それじゃあ始めるか。いくぞっ!」

「「"イグニス"!」」

 3人分の中級炎魔法がマハトたちに向かって飛んでくる。


バチバチバチ!

 すかさず指を鳴らして炎を相殺する。

「コ、コイツ……次だ!」

「「"コルドス"!」」

 氷の刃が襲いかかる。マハトは口に含んだ氷を吐き出す。が、マハトは口に入った飴や氷はガリガリと噛み砕いてしまうクセがあったのだ。氷魔法がマハトの身体を切り刻む。

「ぐっ……」

「ハッハアァーー!言わんこっちゃねぇ!やっぱり噂はインチキだったんだよ!いくぞトドメd!」


バッガアァァァーン!

 言い終わるか否か、リーダー格の顔のすぐ横にマハトの拳が食い込み結界に穴が空いた。

「え?   あ、え!?結界が……うそだろ……?」

 彼らは戦意喪失したのだろう、結界が消えた。

「おい、お前ら!何やってる!」

 誰かが通報したのだろうか、警官が走って向かってくる。

「や、やばい、……次で俺ら退学だぞ……!」

「クソ、逃げようにも腰が抜けて……」


「いや、喧嘩ではない。魔法の訓練を行っていた」

 マハトの言葉に全員キョトンとする。

「そ、そうです!先輩、ご指導ありがとうございました!」

 テオとアンナも機転を利かせて合わせる。

「……まぁ、今回は見逃すとしよう。しかし次は無いからな!」

「はい!」

 そういうと警官は去っていった。

「お前、何で……」

「……敵はアンタらじゃないからな」

 そういうとマハトたちは寮へと帰っていった。

 

「マ、マハト君待って」

 歩いているとアンナが呼び止める。

「あの、さっきはありがとう。ケガ、治してあげるね。セルシア先生ほどじゃないけど……」

「"メディ"!」

 そう唱えると痛みが抑えられ、切傷が塞がった。

「おぉ~。そういえばアンナは治癒魔法が得意だったね!」

「ありがとう、アンナ」

「えへへ……」

 アンナは顔を赤く染め、照れ笑いをした。


 

「あの結界を破るとは、すごいじゃないか」

「行きましょう、会長」

 あの男が呟いた。

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