表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/15

TV局がまた来たよ。

 一週間後の月曜日の朝、ホームルーム前に霧子ちゃんが私の席に来て、その後の様子を話したよ。


「祥子ちゃんありがとう。

昨日で祥子ちゃんにお願いしたグッズ全部売り切れたよ。

なんかネットでも『最上(もがみ)仏具店のラッキーアイテムは本物』って話が流れてるみたい。

感謝のお手紙も何通か来たよ。

やっぱり分かる人には分かるんだね。」

と興奮気味に話す霧子ちゃん。


 霧子ちゃんっておっとりしてると思ってたけど、そっち系の話になると鋭い喋り方になるね。

やっぱり仏具屋の娘だからかな。


「お手紙、学校に持ってきても良いけど、また今度うちに来てくれないかな。」


「うん、そのうちね。」


 最近はまたえっちゃんと三人で以前みたいにお昼を一緒に食べて、その時は普通なんだけど、えっちゃん、この話題はやっぱりNGみたい。


「そう言えば、この前のジャンボ、ついに5等当たりましたよ。」


「え、本当?」


「えー、あれだけやってもまだ5等なの?

ラクシュミー様、祥子ちゃんの待遇をもっと上げてください。」


「だから今日放課後、二人にカフェでケーキセットおごります。」


「えー、そんな事良いよ。あれ冗談だから。」


「うち来たら、お父さんがご馳走してくれるよ。」


「霧子ちゃん、それは遠慮しとくわ。」


 それにしても、霧子ちゃんちにはもう一度行って、その手紙を貰ってこなきゃ。

それでサラスさんが今度なんか言ってきたら、手紙見せて『日本人だってちゃんと感謝してます』って言ってやる。


 放課後3人で駅前のカフェに行く事になったよ。

校門まで3人で行ったら、ラフなかっこうした怪しい男に声かけられたよ。

この人、この前のサラスさんの時、レポーターの横に居た気がする。

不味い。


「ちょっとお話出来ないかな。」


「不審者だよ。誰か先生呼んで来て。」


「違う、違う。俺こういうもの。」

と名刺を出してくるけど、そんなのには乗れない。


スマホ出して、

「警察呼びますよ。」

と言うと


「だからKテレビの者だって。」


「名刺なんか簡単に作れるから。何の証明にもなってない。」


「ほら写真入り社員証。」


「へー。」


 えっちゃん、駄目だよ。


「取材拒否します。」


「そんな事言わずに。」


「取材される理由なんてないです。」


「君、この前サラスヴァティーさんに親友だって言われてた子でしょ。」


「サラスヴァティーさんとはあの日初めて会ったんです。親友なんて。」


「悲しいこと言わないで。シュリー。」


 え、サラスさん何時の間に来たの?


「TV取材にも礼儀と言うものがあるでしょ。

シュリーに無礼をはたらくと(ばち)が当たりますよ。」


 サラスさん止めてよ。

それにしてもラクシュミーって罰当てたりするのかな。


「そうだ、サラスヴァティーさんにも取材出来ませんか?」


「だから取材するには、ちゃんと事前に申し込みなさい。

お宅の取材は金輪際うけません。

撮影したら肖像権侵害で訴えますよ。」

そう言うと、サラスさんは車に乗って行った。


 そうか、肖像権。

「この前の取材は無許可だから、私の肖像権も侵害してます。

一般人だからと言って無許可で流しても良いって事はないでしょう。

画像の破棄を要求します。」


「やっぱり、君じゃないか。」

墓穴掘っちゃったよ。


「でも、画像はもう無いんだよ。」


「え、どう言う事なんですか?」


「放送の翌日確認したら、取材したデータも、番組のマスターですら消去されてた。」

それってサラスヴァティーさんの仕業?

それともまさか……。


「私の肖像権の問題でもあるので、詳しく聞かせて貰えます?」


「取材に応じてくれるなら。」


「分かりましたよ。」


 近くのファミレスで話をする事になったけど、駅前のカフェのケーキセットの方が美味しいのに。

ちなみにえっちゃんと霧子ちゃんも一緒。

えっちゃん、TV局のスタッフに興味津々みたい。

二人とも余計な事言わないでね。


「えーっと、君達全員T高校の生徒さんだよね。何年生?」


「全員1年生。同級生です。」とえっちゃん。


「名前教えてくれるかな。」


(めぐみ) 悦子(えつこ)です。」


最上もがみ) 霧子(きりこ)です。」


(よし) 祥子(しょうこ)。」


「サラスヴァティーさんとも同級生?」


「そうです。」

えっちゃん積極的。


「そんな事より、まず聞きたいんですけど、画像消去されてたってどう言う事なんです?」


「まだ質問が済んでない。」


「先に答えないとこちらも答えませんよ。」


「どう言う事も何も、原因不明だよ。

取材の翌日キー局が午後のワイドショーで使いたいって言うから確認したら全部消えてた。」


「放送局内の誰かが消したって事ですか?

それともサラスヴァティーさんから肖像権侵害だって言われたから局として消したとか。」


「肖像権侵害だって言われたからって、勝手に消したりしない。

放映しちゃったんだから、画像消したって肖像権侵害がなくなるわけじゃない。

先に消したら証拠隠滅って見られてかえって不味い。

少なくとも相手方の弁護士同席の下でなきゃ。

関係者全員に事情聴取があったけど、消したって言う人間はいない。

番組マスター消したとなると大事だし。」


「分かってる事はそれだけだよ。

じゃあ、そちらの事を聞かせてくれ。」


「話しても良いんですけど、サラスヴァティーさんの絵が使えないのに私たちに取材しても意味無いのでは?」


「肖像権の使用許諾はまだ交渉の余地はあるし、君の話を聞くのが今日の俺の仕事。

自分の判断で仕事放り出すとか雇われてる身じゃ出来ないの。」


「じゃあ、まずサラスヴァティーさんて学校じゃどんな感じ?」


「結構人気ありますよ。

音楽の時間にギター弾いて歌ったんですよ。

それで音楽取ってって、ファンになっちゃった子が一杯居るみたいですね。

私と祥子ちゃんは美術だけど、霧子ちゃんは音楽取ってるから……。

サラスさんの歌聞いたんだよね、霧子ちゃん。」


「うん、私、サラスさんのファンだよ。」

霧子ちゃんの裏切り者。


「君らサラスヴァティーさんの事、サラスさんって呼んでるの?」


「サラスさんが最初の自己紹介の時、自分で『サラスって呼んで下さい。』って言ったんだよ。」

とえっちゃん。


「サラスヴァティーってインドの神さんの名前だって知ってた?日本で言うと弁天さん。」


「知ってますよ。私仏具屋の娘だし。」

霧子ちゃん、ラクシュミーの事はグーグル先生に聞いたって言ってたじゃん。


「インドじゃ向こうの神さんの名前を付けるのはわりとあるらしい。

けど、彼女、本国じゃあ『女神の化身』とさえ言われてるらしい。

モトワニって姓も上位カーストのものだし、ひょっとすると女神が先祖って言う家伝があるのかも。」

マジですか。


「で、そのサラスヴァティーさんが君の事、『彼女に会うために日本に来ました。』『私たち親友です。』って言ってるんだけど、どう言う事?」


「そんな事言われても、私があの日初めてサラスさんと会ったのは事実ですよ。」


「彼女君の事シュリーって呼ぶけど、あれはどう言う意味?」


「知りません。彼女に聞いてください。」


「シュリーは吉祥天の吉祥の事なのね。

だから……」


 霧子ちゃん、駄目


「祥子ちゃんはよししょうこ、姓と名前続けて音読みしたらキッショウコでしょ。

だからシュリー、吉祥って呼んでるんじゃないかと仏具屋の娘としては思います。」


「そうなのか。」


 助かった、霧子ちゃんありがとう。


「で、この前の取材の時、君光ったよね。あれどう言う事?」


 えーっと。

「何かが光ったのは分かったんですが、私が光ったんですか?

初めて知りました。」

誤魔化した。


「君が光ったところはビデオにちゃんと撮られて……消されちゃったか。」


「私、祥子ちゃんが光ったの見たよ。」

とえっちゃん。


 だからえっちゃん、この前から変だったのか。

そりゃあれ見たら引いちゃうよね。

人間フラッシュだから。


「えっちゃんは見たって言うけど、自分が光ってるかどうかなんか分からないよ。

でしょ。」


「そりゃ鏡でもなきゃ分からないよね。」

霧子ちゃんナイスフォロー。


「今の今まで光ったのが自分だって知らなかったんだから答えようが無いです。」


「……」


「まあ、仕方ないな。ビデオ残ってりゃ本人に見せて検証できたのに、ないものは仕方ない。」


「今日はご協力どうもありがとうございました。

上の方がなんか言った時連絡できるように連絡先教えてくれないか?」


結局メアド交換して、その日は終了になったよ。

カフェに行くのは後日と言う事になった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ