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ラスボスと空想好きのユア 3 More Adventures  作者: ReseraN


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第8話「誤解」

 インベクル王国の森の近く。

 ここは、ゲームの序盤に出て来る場所。

 ユアも参戦前の特訓で来たことがあり、モンスターもそれほど強くないので怖くはなかった。


 森の中は、静まり返っていた。

 ディンフルが倒したようで、モンスターが出て来る気配はなかった。


「俺がついて行く必要、なかったかもな」


 取り越し苦労だったようで、フィトラグスは苦笑いをした。


「まぁ、いいんじゃない? 美味しいもの食べた後だし、運動と思えば!」


 ユアがそう言ったところで、遠くの方でマントなしのディンフルを見つけた。

 モンスターの攻撃をかわしているのか、バク転をしていた。


「やっぱり、カッコいいな……」


 ディンフルの勇姿に、思わず胸が高鳴った。

 急いで、彼の元へ向かった。



 森の突き当たりまで来ると、ディンフルはもうモンスターを倒してしまっていた。

 大剣をしまい、一息ついていた。


「ディンさ……!」


「ディンフルー!!」


 割り込む知らない女性の声にユアは足を止め、思わず近くの茂みに身を隠した。

 フィトラグスもつられて、そこへ入った。


 ディンフルの元に、ウェーブ掛かった金色の長い髪の女性がやって来た。

 先日、彼の家に来たリサキだ。


「あ、あれ、誰……?!」


「知らねぇ。初めて見る」


 ユアとフィトラグスは、ささやき合った。

 フィトラグスはもちろん、イマスト(ファイブ)を熟知しているユアでさえ初めて見る。



 次の瞬間、リサキは突然、ディンフルへ接吻(せっぷん)した。

 ユアとフィトラグスの空気が止まった。


 ディンフルはあわてて、リサキの両肩をつかんで押し退()けた。


「な、何をする……?!」


「何って、挨拶代わりだよ!」


 リサキはイタズラっぽく笑いながら言った。


 その時、茂みからユアが飛び出し、来た道を引き返していった。


「ユア?!」


 立ち上がったフィトラグスと、ディンフルが同時に叫ぶ。


「お前も、いたのか……?」


 ディンフルに聞かれると、フィトラグスはゆっくりと振り返り、相手を睨みつけた。

 まるで、「ユアがいるのに……」と言いたげに。


「ご、誤解だ! 彼女とは、そういう仲ではない!」


 ディンフルはリサキを指しながら言うが、フィトラグスから一蹴されてしまった。


「俺より、ユアに言った方がいいんじゃないか?」


 ディンフルは返事もせずに、ユアを追い始めた。

 その場に、フィトラグスとリサキだけが取り残された。


「そんなに、まずかったか……?」


 きょとんとするリサキへ、フィトラグスは大きくため息をついた。



 ユアとフィトラグスがいなくなった後、アジトの前では、ティミレッジとオプダットが二人で肉を焼いていた。


「オープン、あまり食べない方がいいよ。あとで、ディンフルさんも食べるんだから」


「そうだな! うま過ぎて、すっかり忘れてたぜ!」


 肉の美味しさにテンションが上がる彼へ、ティミレッジが注意をした。


「さっきだって、ディファートのこと、ユアちゃんに言おうとして……」


「ユアがディファートだってことは、事実だろ?」


「今は言っちゃダメなんだよ! ディンフルさんからも言われたでしょ!」


 ユアは、リアリティアで育った人間と思われて来た。

 実は隠れディファートで、前の戦いが終わってから、ディンフルからフィトラグスら三人へ初めて告げられた。


 だが、ユア本人は知らない上に、来春には大学受験を控えている。

 メンタルを守るため、今はばらさないようにディンフルが彼らへ釘を刺していた。


「じゃあ言うのは、そのジュケンってのが終わった後だな?」


「そうした方がいいよ」


 二人が話しているところへ、突然ユアが駆けて来た。


「わっ!」


「ユアちゃん?! ど、どうしたの、あわてて?!」


 大事な話をしているところへ急に来たので、二人は飛び上がりそうになった。


「ごめん、帰る! 道具は適当に片付けてて!」


 ユアは怒るでも泣くでもなく、ただあわてた様子で自身の荷物を持ち、生来の力でリアリティアへ消えて行ってしまった。


「どうしたんだ……?」


「急用を思い出したんじゃない? ジュケンって、準備もあって忙しいらしいし」


 取り残されたオプダットとティミレッジは、唖然とするしかなかった。

 まもなくして、今度はディンフルが駆けて来た。


「ユアは来たか?!」


 二人は彼の魔物退治をねぎらう前に、ユアとディンフルのあわてた様子から察した。

 何かあったのだろうと。


「来たけど、帰りました」


「何があったんだ?」


 ティミレッジが答え、オプダットが冷静に尋ねた。

 ディンフルは返事をせずに、再び駆け出して行った。


「どこ行くんだよ?! ユアはリアリティアへ帰ったぞ~!」


「イポンダートのところだ! あちらでは、マントが必要だからだ!!」


 ディンフルは走りながらオプダットへ答えると、そのまま去って行った。



 しばらくすると、今度はフィトラグスがリサキを連れて帰って来た。


「おかえり、フィット! ……その人は?」


 呆然とするティミレッジとオプダットの前に、次の疑問が浮かんだ。


「あたしはリサキ! あんたらはティミーとオープンだろ? フィットから聞いてるよ!」


 リサキは明るく笑いながら、ティミレッジとオプダットへ挨拶をした。

 帰りながらフィトラグスが教えてくれたらしく、自己紹介をする手間が(はぶ)けた。



 リサキが、他の三人と会っていることもつゆ知らず、ディンフルはイポンダートがいる場所へ向かっていた。


(まさか、リサキがあのようなことをするとは思わなかった。それを、ユアに見られるとは……)


 ディンフルは、ユアがどれほど自身を好いているのか知っていた。

 だからこそ、今回の誤解は解きたかった。


 しかし、考えるうちに走りは歩みへ変わり、やがて足を止めた。


「……待てよ。何故、誤解を解きたいのだ? ユアと俺は、恋仲ではないはずだ……?」



 その時、彼の背後に突然、気配を感じた。


 振り返ると、黒い人影があった。

 ディンフルより背が高く、向こう側が透けて見えた。


「何者だ?!」


 人影は、こちらへ手を伸ばした。

 手の先から黒い光が現れ、ディンフルを襲った。


「ムダだ!」


 ディンフルはすぐさま大剣を出し、光を斬った。

 衝撃波も出たので、人影の技を打ち消すものと思われた。


 しかし、黒い光はディンフルの剣も衝撃波も貫通し、彼へ直撃した。


「うわあああーーー!!」


 ディンフルに攻撃が当たったことを確認した黒い人影は、その場から消え去って行った。

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