第7話「異世界でバーベキュー」
数日後のフィーヴェ。
ビルダー機能で作ったアジトの前で、ディンフルを除くメンバーでバーベキューをしていた。
ディンフルは魔物退治に出ており、後から合流する。
ユアが、リアリティアで一式の道具をそろえ、バーベキューのやり方を皆へ教えていた。
「外で作って食べるのはフィーヴェにもあるけど、この炭で焼くやり方は初めてだな」
炭火の香りを楽しみながら、ティミレッジが感心した。
「うわ! この肉、うめぇ! ほっぺも舌も、落ちるぜ!」
「落ちるのは、ほっぺだけにしてくれ! 舌まで落ちたら、しゃべれなくなるだろ!」
肉に感動するあまり、変な言い方になるオプダットへ、フィトラグスがツッコんだ。
「ソールネムやチェリーも、来れたら良かったのに……」
「しょうがないよ。ソールネムさんは、今日は別件で忙しいから」
「チェリーも、帰って来たクロウズと鍛錬だってさ」
ユアが残念そうに言うと、ティミレッジとオプダットがそれぞれの仲間について答えた。
「今日は初めてのバーベキューだし、俺たちだけでも良いとしよう。後でディンフルも来るしな」
「そうだね!」
フィトラグスに言われ、ユアは元気よく返した。
彼女にとっては、ディンフルを含んだ五人でのメンバーが一番よかった。
「それにしても、まさか、泥棒と再会するとはな」
フィトラグスは肉を焼きながら、ユアの同窓会を振り返った。
「ゲームも戻って、謝ってくれたんでしょ? もういいんじゃない? ユアちゃんが許したなら」
「そうそう! でも、フィットは正義の国の王子様だからな。こういう悪いことには心が広いんだろう」
「逆だ! こういう時は“心が狭い”だ!」
ティミレッジもオプダットも、ゲームを返し、何度も謝ったソウの誠意には感心していた。
ただ、オプダットはいつものように言い間違え、フィトラグスからまたツッコまれてしまった。
「で? その子から、連絡来てるの?」
「ううん」
ティミレッジから聞かれ、ユアはきっぱりと答えた。
フィトラグスら三人が、ガクッとなった。
「連絡ないのか……? あれだけ知りたがってたのに?」
「たぶん、忙しいからじゃないかな? 向こうも受験に失敗した浪人生で、予備校に行ってるみたいだし」
信じられない様子のフィトラグスへ、ユアはソウをフォローするように言った。
「ローニンセー? ヨビコー?」
一方でオプダットは、初めて聞くリアリティア用語に頭を悩ませた。
ここでティミレッジが話題を変えた。
「それより、ユアちゃんのその力って、誰も信じてくれなかったんだよね? 僕、思ったんだけど、お友達と一緒に異世界へ来ることって出来ないの?」
フィトラグスとオプダットが息をのんで、彼を見た。
「その手があったか……」と言わんばかりの表情だった。
「出来ないよ。一回、小学生の時に試してみたけど、私しか飛べなかったんだ」
ユアが否定すると、三人は残念そうにうなった。
「しかも不思議なことに、友達の目の前で消えたのにみんな、私が“トイレに行った”だの、“どこかに出かけた”って言ってるの」
「……どういうことだ?」
三人で顔を見合わせた後、フィトラグスが代表して尋ねた。
「よくわからない……。異世界から帰ってから、みんなに会いに行ったら“長いトイレだったね”って言われるんだ。何か、私が“トイレ行って来る”ってみんなに言ったことになってるの」
「記憶が書き換えられたってこと?」
「そんな感じ。一日掛かりで行ってたら大騒ぎになってて、帰ったら先生たちにすごく怒られたよ」
「一日は怒られるって……」
ティミレッジは呆れた目でユアを見た。
「でもさ、その力のおかげで俺らと会えたじゃねぇか! ユアはいいもの持って生まれて来たよな!」
オプダットが、ユアの力を讃えるように明るく言った。
「うん。この力のおかげで救われて来たし、感謝だよ。でも、何で私だけなんだろ?」
ユアが自身の力に疑問を持つと、フィトラグスとティミレッジの顔がこわばった。
「何か、イマストのディファートみたい!」
「そうそう! ユアって実は……!」
彼女が冗談ぽく言うと、オプダットが口を開いた。
それをすかさず、フィトラグスが塞いだ。
「な、何……?」
ユアが驚いて、オプダットを止めるフィトラグスを見た。
「い、いや! “ユアがディファートだったら面白いな”って言おうとしたんだろ!」
「そ、そうそう! オープンって、すぐ楽しいこと考えるからさ!」
続いて、ティミレッジもあわててフォローした。
「そ、そう……」
よくわからないまま、返事をするユア。
すると、急に立ち上がった。
「よし! 待ち切れないから、ディン様を迎えに行ってくるよ!」
「やめた方がいいよ! 今日は特にモンスターが出てるらしいし、ユアちゃんもチアーズ・ワンドを没収されてるんでしょ?」
「大丈夫! トウソウの力があるから!」
「トウソウ……あぁ、イポンダートじいさんからもらった逃避能力か」
「あの、“闘争”と“逃走”を掛けているやつだね」
フィトラグスとティミレッジが、ユアにあるトウソウモードを振り返った。
次はオプダットが尋ねた。
「確か、色んな攻撃から守ってくれるんだよな?」
「そうだよ! エグからの攻撃も防いでくれたし、この付近のモンスターも大丈夫だよ。私、走って逃げるから!」
「ユア、長く走れたか……? やっぱり心配だ。俺もついて行く」
疑い深く聞いた後で、フィトラグスは一緒に行くことにした。
ユアは少し口を尖らせた。
(私だって、もう一人前なのにな……)
だが、よく考えたら「守られているうちが華」でもあった。
特に、イマストⅤは、彼女が今一番好きなゲームだった。
そのキャラに守られるのは、ユアにとって嬉しいことだった。
(守られるのもいいけど、やっぱり、助けにもなりたいな……)
ユアの心は二つの思いで揺れ動いていた。




