第4話「同窓会 前編」
リアリティアの、とあるファミレス。
今日はここで、中学時代の同窓会が開かれる。
ユアが入るなり、奥から「こっち、こっち!」と声が掛かった。
「久しぶりー!」
席には、すでに八人ほどの男女が座っていた。
皆、「久しぶり」と快く彼女を迎え入れた。
その中で青いショートボブのキヨと、茶髪を一つに結んだメドウが、こちらへ会釈した。
この二人は、ユアと同じ養護施設・グロウス学園の出身だった。
「さて、ユアも来たことだし、始めようか!」
「あぁ、ちょっと待ってくれ!」
今回、主催したタワという女性が声を上げると、隣に座っていた今回の幹事・ノブという男性が止めた。
「悪い! もう少しだけ待ってくれないか……?」
「何で? 全員そろったじゃん」
他の者が言うと、タワが口を挟んだ。
「ごめん、忘れてた。実は今日、私ら以外にも来ることになってるんだ。ノブが勝手に呼んだんだけど」
アヨとリマネスがいなくて安堵する中、他にも来ると聞いた瞬間、ユアは身震いがした。
もしや、ノブが呼んだのは……。
胸騒ぎを感じていると、店内に客が入って来た。
気づいたノブが立ち上がり、「こっちだ!」と、その人物を手招きした。
すると、甲高い男性の声がした。
「すみません、遅れました!」
一人の男性が来るなり、頭を下げた。
席に着いた者が全員、彼に注目していた。
「遅いぞ、ソウ!」
ノブが相手の名前を言うと、皆で顔を見合わせた。
「ソウって……誰?」
男性が顔を上げると……。
「あーーーーー!!」
突然、ユアが相手を指さし叫んだ。
「あなた……?!」
「き、君?!」
遅れて来た男性もユアを見て、ぎくりとした。
「何、もう知り合いか?!」
「この人、私がこの前、イマストの限定版買った時に盗んで行ったんだよ!」
ユアが怒りを混じえて言うと、他の者が男性を睨み始めた。
「あ、あの時は、本当にごめん! でも、“盗んだ”とは人聞きが悪いな! ちゃんと、お金渡したじゃないか! ゲーム代がしっかり払えるほどの額を!」
「そういう問題じゃないでしょ……」
タワが思わずツッコんだ。
他の者もすっかり、ソウという男性に呆れていた。
「ソウ、問題起こすなよ……。お前がやってること、立派な犯罪だぞ」
ノブも注意したところで、再びタワが尋ねた。
「それよりあなた、うちの学校だった?」
ソウの代わりに、ノブが庇うように答えた。
「いや、違うよ。こいつはソウって言って、高校の同級生なんだ。今日、“同窓会に行く”って連絡したら、“行きたい”って言い出したから呼んだんだ」
「いや、何で……?」
普通、他校の同窓会に行きたがる者はいない。
ユアを含め他の者は同窓会に来たがるソウと、参加させたノブの神経が理解出来なかった。
「実は、“空想の世界に行ける奴も来る”って言ったら、こいつが行きたがってな……」
ノブは周囲の疑問の圧に押され、渋々と答えた。
「空想の世界に行ける奴」に、ユアは心当たりしかなかった。
「“初めまして”なのに、急に押しかけてすみません。それで、どなたなんですか? 空想の世界に行ける方は?」
ソウが聞くと、同窓生が一斉にユアを見た。
今度は彼女へ、圧が押し寄せた。
「私です……」
「き、君が?!」
ユアが恥ずかしながら手を上げると、ソウは驚きと喜びが交じったような表情で聞き返した。
フロア中に響き渡るほどの声量だったので、同窓生以外の客も思わず振り返った。
「ソウ! 声がでかい!」
ノブが注意すると、「わ、悪い……!」とソウは謝った。
「そろそろ始めたいから、座りましょう! せっかくだから、ユアの隣にでも!」
主催のタワが提案するとユアの周囲は気を遣い、ソウのための席を空けてくれた。
ユアとしては、あまり嬉しくなかった。
(ゲーム泥棒と隣同士だなんて……)
ようやく、同窓会が始まった。
初めはそれぞれの近況報告をし、途中から古今東西ゲームで盛り上がった。
それらが済むと、フリートークの時間になった。
同窓会の流れもあったので、ソウはやっとユアと話が出来るようになった。
ユアもゲームなどで盛り上がり、ソウがゲームを盗んだことはすっかり良くなっていた。
なので、トークも良い空気のまま弾んだ。
「先日はすみませんでした。まさか、君が空想世界へ行けるなんて思わなかったよ」
「ゲームも戻って来たし、もういいよ。でも、お金払えばいいってもんじゃないよ。もう二度としないでね」
相手が素直に謝ったことと気分が良いのもあり、ユアはソウを許した。
「私はユア。よろしくね、ソウくん」
「ユア……ちゃん。こちらこそっ!」
自己紹介する二人を見ながら、ノブがソウの情報を付け加えた。
「ソウも、ユアと一緒で空想モノが好きだし、イマストも大好きなんだぜ」
その情報で、ユアのテンションは一気に上がった。
よく考えると、ユアの手から限定版を盗んだぐらいだ。
イマスト好きでなければ、しないはず。
「私は、Ⅴのディンフルを推してるんだ。ソウくんは?」
「お、俺は、断然ミビ様っ!」
「ミビ様……?」
「Ⅳのミビスティ様だよ!」
ソウの顔が次第に赤くなって来た。
彼はそのまま、ミビスティというキャラについて、大声かつ早口で語り始めた。
他の者がドン引きする中、ユアだけは同調し、自身も早口で話し始めた。
「わかるっ! 好きなキャラに様付けしたくなるよね~! 私も、“ディン様”って呼んでるもん!」
「ディン様?! いいじゃん、それ!」
たった二人だけで盛り上がる同窓会。
リアリティアで、ここまで熱く空想の話で盛り上がれたのは久しぶりだった。




